「今日で2週間ずっと晴れですな」
「いいんじゃねーの? 「雨都」の汚名返上で良い事なんじゃねーの?」
今日で半月ほど晴天が続くソル王国の首都。実に30年近く無かった快晴続きに国民は大いに喜んでいた。
「おお、セレーノ様だ」
「セレーノ様、この快晴はセレーノ様がもたらしてくれたと聞いていますが本当なんですか?」
「セレーノ様ー! こっちむいてー!」
城下町の視察に出れば、国民たちは来た彼を暖かく出迎える。その表情は誰もが笑顔だった。
およそ30年ぶりの快晴をもたらしたというセレーノの偉業は既に国民の間にも広く浸透していた。低迷しつつあった支持も晴れをもたらしたことで急回復。
一気に国民の信頼を得て、早くも「ソル王国の明主」ともてはやされていた。
「なるほどそういう事か」
穀倉地帯から治水工事、具体的に言えばため池の整備に関する声がいくつも上がっており、セレーノはその修理に関する報告書を見ていた。
「ふーむ、ため池の修理か。そういえば水には困っていなかったから放置しっぱなしだったな。良いだろう、全ての治水施設への修理を許可しよう。予算は出すと伝えてくれ」
セレーノは国王として適切な指示を出す。今までは年中雨が降ってたので貯水施設が壊れていても持っていたので後回しにされていたのだ。
ピオッジャを追い出してこれから晴れることが予測されるのなら、今のうちに修理しておくというのは正解と言える選択肢だ。
「しかし今日で2週間も晴れですか。作物にとっても日の光は重要ですからピオッジャ殿には悪いですが、いなくなってくれたのは好都合ですな」
「だろ? アイツが雨男だったせいで作物の収穫はガタ落ち状態だったんだ。今年の収穫は期待してもいいんじゃねえのかと俺は思うがな」
「さすがはセレーノ様、先見の明がありますな。この調子だとソル王国の歴史に名を刻むことになるのも時間の問題でしょうな」
「オイオイ、おだてたって何も出ないぜ?」
和やかに会話をする2人。ピオッジャにはいなくなってもらった方がよかった、という考えは共通していた。
雨が降らなくなったソル王国は一見、順風満帆と言ってもいい位に順調な歩みをしているように見えた。
だがこの時の彼らは知らない……この時期は元々雨が多く、その雨が大地を潤していることに。30年ほど雨の日ばかり続いていたことで、その伝承は途絶えてしまっていたことに、誰も気づいていない。
この時のセレーノは「自分が晴れ男だ」というのを分かっていなかった。ピオッジャがあまりにも強力な雨男だったのでその能力を活かせる機会が無かったのだ。
ピオッジャという雨男がいなくなったことでセレーノの晴れ男としての能力はフルに発揮されることになった……そう。晴れ男というよりは「ひでりを呼ぶ男」と言われるくらいには太陽を呼ぶ男であった。
ソル王国第6代国王セレーノ。後に彼は「ひでり王セレーノ」と呼ばれソル王国史上最低最悪の暗君として王国史にその名が刻まれることになるのだが、それまであと半年。
【次回予告】
雨男ピオッジャは砂漠の国デラッザの研究所職員として配属された。実際には実験材料と言う立場だったが彼の能力を見て職員たちは大騒ぎだ。
第5話 「研究所を騒がせる雨男」
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