英霊召喚 ~ハズレと呼ばれた召喚魔法で、過去の大賢者を召喚して史上最強~

向原 行人
向原 行人

第112話 反省

公開日時: 2020年11月12日(木) 08:08
文字数:2,029

「あ、あれ……私?」

「大丈夫か、シャロン。すまない。俺が無理をさせ過ぎてしまった」


 ユーリヤと共にシャロンを介抱したおかげか、割と早くシャロンが目覚めた。

 ……ちなみに、ユーリヤも居るのでシャロンに変な事はしていない。

 あくまで紳士的に、そう紳士的に介抱したんだ。


『その言葉、前にもどこかで聞いた事がある気がするんですが』

(気のせいだ)

『ヘンリーさんの紳士的な介抱では、必ず胸を触るんですね』

(おいおい、ユーリヤの前で俺がそんな事をする訳がないじゃないか)

『えぇ。ユーリヤちゃんが何かに気を取られてる間だけ、触ってましたもんね』

(濡れ衣だ。俺はあくまでも、シャロンの汗を拭いてあげただけだからな)


 脳内でアオイと水掛け論をしていても埒が明かないので、意識をシャロンに向けると、


「あの、ヘンリーさん。私、獣人の村へ行けるようになるんでしょうか……」

「……大丈夫だ。俺が必ず連れて行ってやる。焦る必要はないさ」


 そう、焦る必要はない。

 この様子だと、シャロンが剣を扱えるようになるまで暫く時間が掛かる。

 何としてもシャロンを獣人の村へ連れて行き、家族に会わせてあげるんだ。


「ふぅ……さて、ヘンリーさん。訓練の続きをお願いします」

「いや、今日はここまでにしておこう。初日から飛ばし過ぎると、翌日に響くからな」

「……そうですか。では、またお願いしますね」

「あぁ。明日は、ニーナが教えてくれるけど、あまり無理し過ぎないようにな」


 ユーリヤを抱っこし、いつものフードを被ったシャロンを資料庫まで送り届け、王宮を出る。

 流石におっぱいおっぱいと調子に乗り過ぎた事を反省しつつ、商店街へ近くへ瞬間移動すると、ある物を探して露店を物色して行く。

 既に夕方に近づきつつあるので、時間的に露店ではもう扱っていないのか? と不安を覚えながら歩いていると、


「あった! すみません。そこに残っている商品、全部ください!」


 目当ての物を売っている露店を発見した。


「これを、全部!? 私はありがたいけど……兄ちゃんと、そのお嬢ちゃんで食べるのかい?」

「いえ、これから大勢でいただくので、量はどれだけあっても困らないんです」

「そうかい。どこかで魚パーティでもするのかい?」

「まぁそんな所です」


 露店で魚を売っていたオバちゃんに代金を払い、大小様々な魚を三十匹程購入した。

 魚を買うなら朝だと思うけど、残ってくれていて助かった。


「にーに。おさかなたべるのー?」

「んー、これはちょっと違うんだ。ユーリヤには、後でちゃんと晩御飯があるからね」

「はーい!」


 露店から離れた所で空間収納魔法に魚を仕舞うと、今度は閑静な住宅街へ。

 キョロキョロとあるものを探しながら周囲をうろつき、しかもユーリヤを連れているからか、人とすれ違う度に視線を感じる。

 言っとくけど、幼女連れ去りとかじゃないからね?

 俺はちゃんとユーリヤの保護者……って、この状況で通報でもされたら、自警団に説明出来ないな。

 ユーリヤは身分証明書なんて持って居ないし、俺は明らかに六歳くらいの娘が居る年齢では無いし、妹というには髪の色などが合っていないし。

 これは、ちょっとマズイかもと思い、テレポートで場所を変えようと路地へ入った所で、


「居たっ!」


 ようやくターゲットを見つけた。

 探し求めていたターゲット――路地を歩いていた黒猫に向かって意志疎通の魔法を放つ。


「コミュニケ……って、逃げるなっ!」


 俺と目が合った途端に、痩せた猫が走りだす。

 だが、これを想定して、俺は対猫用の秘密兵器を用意しているんだ。


「ほれほれー、とぉっ!」


 少し小さめの魚を猫に向かって投げると、一度は大きく飛び退くものの、飛んで来たそれが何なのかを理解した猫が戻ってくる。

 猫が小魚を咥えようとした所で、


「コミュニケート」


 今度は俺の魔法が成功し、淡い光が猫を包み込む。


『ひゃっほーい! 魚だ魚だー!』

(待て。俺はもっと沢山魚を持って居るんだが、ちょっと話を聞いてくれないか)

『うっひょー! 久しぶりの御馳走だーっ! うめぇぇぇっ!』


 ……まぁこの猫は一目見て分かるくらい、ガリガリだしな。

 ちょっと待ってやるか。

 いや、食べ終わった瞬間逃げられる気がするから、予め魚を出しておくか。

 依然として距離を保ったまま、ガツガツと魚を食べる猫を見守り、そろそろ頃合いかという所で、再び猫に話しかける。


(腹は満たされたか? 小さい魚だし、足りなければもう一匹あるんだが)

『マジで!? くれくれ! 魚ー!』

(くれてやってもいい。だが、聞きたい事がある。獣人の村という場所を知らないか?)

『獣人って?』

(見た目は人間だが、頭から猫の耳が生えていて、猫の尻尾が生えている種族だ)

『あー、聞いた事はあるぞ』

(本当か!?)

『あぁ。だけど、先に魚をくれ』


 まさかいきなり獣人を知っている猫に当たるとは。

 長期戦を覚悟していたのだが、まさかの幸運に喜び、少し大きめの魚を猫に与える。

 ……しかし、後でちゃんとご飯があるから、物欲しそうな顔で見ないでくれよ。ユーリヤ……。

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