「すみません。誰か居ませんかー?」
冒険者ギルドの支部へやってきたものの、冒険者らしき人物はおろか、ギルド職員らしき者すら居なかった。
「だれかいないのー?」
ユーリヤが俺の真似をして尋ねた声がむなしく響く。
この村には冒険者が来ないとは聞いていたが、職員くらいは居ると思っていたのだが。
「主様。そこに、『御用の方は押してください』と書かれたボタンがありますが」
ジェーンに言われて見てみると、テーブルの上に小さなボタンが置かれていた。
「にーに! おしていい?」
「あぁ、良いよ」
ユーリヤがボタンを押して少し待っていると、奥の方からパタパタと駆けて来る音が聞こえ、
「すみません、すみません。お待たせしちゃいましたー。冒険者ギルド、マックート村支部のナタリーと申しますー」
ナタリーと名乗る、可愛らしくて胸の大きな少女が現れた。
だが、その姿を見て俺は驚き、そして肩を落とす。
「……マジかよ」
「え? どうされました? あ、もしかして私、臭ったりします!? 申し訳ないです。ギルドに誰も来ないので、暇すぎて村の人から教わって、酪農を始めたんですよー。これが意外に楽しくて……って、どうされました?」
「違う、違うんだ。その頭……」
「え? もしかしてお兄さんは、獣人を差別しちゃう人ですか? それは、ちょっと悲しいです」
「いや、そんな事は無い。むしろ、獣人族はウェルカムなんだが……ただ、獣人って姿を隠しているんじゃないのか? 以前に、事情があって獣人の村を探した事があるんだが、こんな普通に冒険者ギルドの受付をしていたりするのか?」
現れた少女ナタリーには、ピンクがかった薄紫色の髪から長い兎耳が生えていた。
俺がシャロンの為に、一生懸命獣人の村を探していたのは、何だったのか。
「あー、それは個人の性格によるんじゃないかと。私たち獣人の兎耳族は、臆病で人間の前にはあまり姿を現しませんが、私はそういうのって気にしないので」
「そ、そうか。ちなみに、今も牛耳族の村を探しているんだが、聞いた事はないか?」
「うーん。牛耳族は知らないですねー。同じ獣人でも、種族によって文化や生活圏が全然違いますからね」
ナタリーが言った事は、以前にリス耳族の村へ行った時にも似たような事を言われたので、その通りなのだろう。
一先ず気持ちを切り替え、本題へ話を戻す。
「あー、ちょっと聞きたいんだけど、このギルドって、いつもこんな感じで人が居ないのか?」
「そうですねー。この村はのどかで、村人さんたちも温厚ですし、家と家との距離が離れているので、争い事なんかも殆ど起きないみたいですし。なので、ギルドへ依頼が来ないんですよ」
「よくある、薬草集めとかは?」
「薬草なんて、そこら辺に生えてますからね。村人が自分で摘みに行ってますよ」
魔物は騎士団が定期的に倒しているし、森の奥にさえ行かなければ魔物と遭遇する事もないし、定番の薬草集めすら依頼が発生しない。
うん、これは冒険者は来ないな。
「なるほど。それで、酪農を始めたと」
「あはは。ギルドの本部も、ここがのどかな村だって知っているので、他の支部と違ってノルマが課せられて居ませんし。その分、歩合給が無くて固定給だけですが、私一人で暮らす分には十分ですし」
だったら、この村に冒険者ギルドを設置する意味があるのか? とも思ったが、魔術師ギルドの代わりにメッセージ魔法を送ったり、何かあった時に王都の冒険者ギルドへ連絡したりと、緊急時の連絡要員として、ナタリーが常駐しているらしい。
「噂では、王都では魔族が出たって話も聞きますし、平和に暮らせて良いですね……って、そういえば、お見かけした事が無い顔ですので村の方では無さそうですが、御家族で来られて居ますし、冒険者って訳ではないですよね? 何かご依頼ですか?」
「いや、そういう訳でも無いんだが」
「そうなんですか?」
ナタリーが不思議そうに小首を傾げる。
長い兎耳の片方が、それに合わせてペタンと折れたのが可愛らしい。
冒険者ギルドで得られる話は特に無かったが、ナタリーと知り合えたのは良かったな。
何より華奢な身体なのに、胸が大きいのは素晴らしい。フローレンス様と同じくらいの大きさではないだろうか。
今、話に出てきた王都の魔族を倒したのが俺だって言ったら、触らせてくれないかな?
『ヘンリーさん。そういう所、本当に気を付けた方が良いと思いますよ』
(ん? というと?)
『いえ、一応領主という責任ある立場になったのですから、もう少し自重された方がよろしいかと』
(まぁそれはそれ、これはこれだよ。大きなおっぱいと可愛い女の子を前にして、見ない方が失礼だよ)
『そう思っているのは男性だけ……というか、ヘンリーさんだけですけどね。まぁでも、屋敷で会った二人に対して、何もしなかった理由はよく分かりましたけど』
(あぁ、ノーマとメリッサの見習いコンビか。二人とも幼く見えるし、胸も小さかったからな)
庭師のワンダはアタランテくらいの胸なんだけど、何と言うかちょっと近寄り難い雰囲気があるんだよな。
何故かは自分でも分からないけど。
そんな事を考えていると、
「じゃあ、行きましょうか」
突然、ナタリーが奥の部屋へ案内しようとする。
「な、何だ?」
「え? その……何度も言わせないでくださいよー。ち、乳搾りです」
「そ、そんな事して良いの?」
「えぇ。他の人は来ないでしょうし、何よりやりたそうなので……特別ですよっ」
何だってー!
目は口ほどに物を言うとは、よく聞くけれど、本当だったのか。
ナタリーのおっぱいを触りたいと願っていたら、絞る程に揉ませてくれるらしい。
この少女は神だ。ありがとう。
「では、こちらへ」
「じゃあ、お言葉に甘えて」
奥の部屋へ入り、すぐさま扉を閉めると、背後からナタリーの胸に手をまわし、思いっきり揉みしだく。
「えっ!? や、やだっ! 何するのっ!?」
「凄いっ! 柔らかいっ! 大きいっ! 素晴らしいっ!」
「こ、この変態っ! 誰かっ! 誰か、助けてっ!」
――スンッ
ナタリーが悲鳴を上げた直後、閉めた扉が音も無く粉々になって崩れ去る。
「主様。何をしていらっしゃるのでしょうか?」
何故かジェーンが剣を鞘に戻しながら、目が笑っていない笑みを浮かべて入って来た。
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