英霊召喚 ~ハズレと呼ばれた召喚魔法で、過去の大賢者を召喚して史上最強~

向原 行人
向原 行人

第67話 フィオンの洞窟第三階層

公開日時: 2020年10月14日(水) 21:21
文字数:2,234

 ソフィアと別れた後、いつもの様に王宮へ行き、ジェーンとニーナの様子を見る。


「あ、隊長さん。……今日は、いつものローブを着ていないんですね……あっ! もしかして、隊長さん自らボクの剣を見てくれるんですか?」

「いや、悪いが俺は巨乳剣術を教える事は出来ないんだ。すまない」

「……巨乳剣術? って、何ですか?」

「えっ!? あ、いや、何でもないんだ。それより、修行はどんな感じだ?」


 危ない、危ない。

 巨乳剣術って俺が勝手に思っているだけで、ニーナやジェーンにはドン引きされるだろうからって、その呼称は使わなかったんだ。


『私は引きまくってますけどねー』

(まぁまぁ。でも巨乳は正義だからさ)

『そうですか? 私の中で巨乳は、悪の幹部ってイメージですけど』

(露出が激しい巨乳は、確かにそんなイメージだよな。けど、恥ずかしがり屋の巨乳とか、ガードの固そうな女騎士が鎧を脱いだら巨乳だったらサイコーだろ?)

『……なるほど。目の前に居る二人の女性騎士をそういう目で見ていたんですね』

(まぁ否定はしないが、二人とも鎧は着ないし、ガードも緩そうだから、さっき言ったギャップによる萌えは無いけどな)

『き、厳しい……以前はパンツだけで、あんなに大はしゃぎしていたのに』

(いや、大はしゃぎはしていないと思うんだけど)


 とはいえ、今でもパンツは大好きだけど……と、そんな事を考えつつ、ニーナとジェーンを労い、今度は街へと移動する。

 人数分のカンテラを買い、ついでに食料や水と、小型の運搬用の手押し車みたいなのを買って、フィオンの洞窟へ。


「皆、お疲れ様。首尾はどうだ?」

「お兄ちゃーん! お帰りなさーい! 二階層はもう全部踏破したよー!」

「そうか。ルミ、ありがとうな」


 小屋へ入ってルミが走り寄って来たかと思うと、今度はアタランテが来た。


「貴方、お帰りなさい。お風呂にする? ご飯にする? それとも……わ・た・し?」

「……アタランテ。やっぱり欲求不ま……」

「あぁぁっ! そうじゃないのっ! ただ、ルミのお帰りなさいに対抗しようとしただけなんだよっ!」


 しまった。アタランテに欲求不満は禁句だったか。

 完全にふっ切れたと思っていたのだが、まだ完璧とは言い難いみたいだ。


「お兄さん。デリカシーがないよー」

「そ、そうだな。すまない」

「じゃあ、これからお姉さんが、女性に対するイロハを教えてあげるから、とりあえず私の部屋へおいでよー」

「いや、今から洞窟攻略だから。というか、マーガレットのその服は何なんだ!? その、服が透けていろいろ見えているんだけど」

「これ? 私の寝間着だよー。この前、買って貰った服だよー」

「買って貰ったというか、マーガレットが勝手に買ってきた服だな。とりあえず、着替えてくれ」

「はーい。……なるほど。お兄さんはチラリズムが好きで、こういう直接的なのは好みじゃないっと……」


 マーガレットが一人で何か呟きつつも、珍しく素直に部屋へ引き下がって行った。


「皆。とりあえず、三階層の入口に次の小屋を作るから、持って行く物があれば、ここへ置いてくれ」


 そう言いながら、俺も食料や水に毛布などを置いていく。

 特に水は多めに持って行こうと思う。

 ここは魔法で水を作りだす事が出来るが、中では飲み水はもちろん、お風呂や洗濯だって困るだろうし。

 マーガレットも着替えを済ませたし、三人の着替えも積んで、出発する。

 一先ず手押し車を引きながら二階層へと入り、所々手押し車を抱えて洞窟を進んで行く。

 分岐点に目印も置いてあるし、魔法生物も全滅させているので、随分と早く三階層への扉へ到着した。


「じゃあ、お兄ちゃん。三階層への扉を開くねー」


 ルミに扉を開いて貰ったすぐ先の場所で魔法を使い、早速小屋を作って荷物を置く。


「よし。では三階層の攻略を開始する。隊列は二階層と同じだ。皆、それぞれ気を付けるように……特にマーガレット」

「え、私? 私は大丈夫だよ? どちらかというと、私よりも欲求不満なアタ……」

「はいストップ! この話は終了! とにかく、全員気を引き締めて行くぞ!」


 魔法生物が出るっていうのに、アタランテの冷静さを失わせてどうするというのか。

 買ってきたばかりのカンテラを一人に一つ持たせ、洞窟の中を進んで行くと、


「……お兄ちゃん。これ、重いよ……」

「そうか。全員同じ大きさにしたのは不味かったか。仕方がない。ルミのカンテラはここへ置いて行き、帰りに回収しよう」

「せっかく買ってきてくれたのに、ごめんね。お兄ちゃん」


 ルミがカンテラの重さにギブアップを宣言してきた。

 身体が小さいし、子供だし、仕方がないか。


「お兄さーん。私も、このカンテラ重ーい。非力な私は、フォークより重い物を持つのは無理だよー」

「メイスを振り回して敵を殴り倒すマーガレットが何を言っているんだ?」

「……くっ。非力なのは本当なのにっ!」


 うーん。カンテラ人気無いなー。

 昨日、アタランテはずっと持っていてくれたのに。

 何か別の案を考えなければと思っていると、前方から変な音が聞こえてきた。


――ガシャン、ガシャン、ガシャン


「何だ? 二階層では無かった音だな」

「貴方。何かの罠ではないかしら?」

「ルミは、何かの集団がこっちに向かって歩いて来ているような気がするよー?」


 アタランテとルミがそれぞれ予測を口にしたので、マーガレットにも聞いてみようとした所で、


「くふふ……悪しき魔法の生き物め。いざ、滅ぼさん!」


 退魔スイッチの入ったマーガレットが、前から現れた動く鎧――リビングアーマーの群れに突っ込んでいってしまった。

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