「お姉様。明るいと恥ずかしいから夜にしたい、音や声でバレる、初めての事って何でしょうか? シャーロット分かんなーい!」
「な……な、な、何の事かしら? ウチ……わ、私には何の事だかさっぱり……」
「お姉様? どうして、顔を真っ赤に染めて、目を逸らされるのですか? お姉様が教えてくださらないのでしたら、ヘンリーさんに教えてもらおうかなっ! ベッドで」
そう言って、シャーロットちゃんが甘える様に俺の腕に抱きついてきた。
ソフィアは一体何をためらっているのだろうか。
別にシャーロットちゃんに隠すような事でも無いと思うのだが。
「ソフィア。別に教えてあげても良いんじゃないのか? シャーロットちゃんを除け者にする理由なんて無いと思うんだけど」
「あ……アンタ! 何を言っているのよっ! 私だけじゃなくて、ロティーともする気なのっ!?」
「シャーロットちゃんがその気なら、俺は別に構わないが?」
「だ、ダメよっ! ば、バカじゃないのっ!? ロティーは未だ十一歳なのよ!? ……というか、私に声を掛けておいて、その目の前で妹にも声を掛けるって、どういう事よっ!」
「いや、シャーロットちゃんが分からないと言っているんだから、教えてあげても良いんじゃないのか? ベッドの買い方くらい」
「だからベッドには私と……って、ちょっと待って! ベッドの……買い方!? アンタは何の話をしているのよっ!?」
「何の……って、貴族御用達の寝具店を紹介して欲しいんだが」
ソフィアのベッドを買った店を紹介してくれと、ここへ来た趣旨を改めて説明すると、
「アンタは……どうして、いつもいつもそうなのよっ!」
「ヘンリーさん。流石にお姉様が可哀想というか、私もちょっとだけ期待しちゃってたんですけど」
「ろ、ロティー!? 貴女には早過ぎるわよっ! そういうのは、もっと大きくなってから……って、何の話よっ!」
どういう訳かソフィアとシャーロットちゃんが、二人揃ってジト目で俺を見てくる。
何故だ!? 一体俺が何をしたというんだ!?
正面のソフィア、右手のシャーロットちゃんから詰め寄られ、思わず左側に後ずさると、
「……ん? 旦那様? もう用事は終わった?」
その拍子に、眠っていたラウラを起こしてしまった。
「あら? アンタ……よく見たら、いつも一緒に居たユーリヤちゃんはどうしたの? というか、その女の子は誰なのよ! それに、旦那様ってどういう意味っ!?」
「……誰?」
「誰……って、ウチの方が聞いているんだけど、まぁいいわ。アンタ、この女の子は誰なのよっ! どうして旦那様だなんて呼ばせているの!?」
ソフィアがラウラに突っかかって来たので、説明しようとした所で、
「……ラウラちゃんは、旦那様の妻。よろしく」
「はぁっ!? アンタ、こんなロティーよりも幼い子に、何を言わせているのよっ!」
「……旦那様から言わされている訳じゃない。ただの事実を言っただけ」
先に余計な事を言われ、どんどん話がこじれていく。
「アンタ……どういう事か、ちゃーんと説明してもらいましょうか」
「ヘンリーさん。私も、義妹としてお話を聞きたいです」
「いや、これには深い理由があるんだ。いろいろ大変でさ」
心なしか、右腕に抱きつくシャーロットちゃんの力が強くなっているような気がしつつも、これまでの経緯を説明する事に。
「……つまり、ドワーフに剣を作ってもらおうとしたら、その幼女を妻にして、三つの試練に合格しろって言われたって事?」
「そうなんだ。それで二つの試練をクリアして、三つ目の試練が何故かラウラ好みのベッドを買って来いって内容でさ」
「……旦那様。これは、人間以外の種族がドワーフと結婚する為の試練。剣は関係無……」
余計な事を言いかけたラウラの口を慌てて塞ぎ、ジト目のソフィアとシャーロットちゃんに向き直る。
「とにかくそういう訳で、ソフィアのベッドを買った店を紹介して欲しくて来たんだよ」
「へぇー。で、これまでの話……どこまでが本当の話なの?」
「全部本当だっ! というか、ドワーフの国はソフィアも一緒に探していただろっ!」
「ドワーフの国を一緒に探したのは事実だけど……話が無茶苦茶過ぎて、信じられる訳ないでしょっ! そもそも、剣を作る試練で、ベッドを持って来いって意味不明じゃないっ!」
「俺だってそう思ってるよっ! それは俺じゃなくて、ドワーフ族に言ってくれっ!」
ちゃんと説明したのに、ソフィアが試練の話を全否定し始めたが……まぁ気持ちは分からなくもない。
どうしてラウラのベッドを持って行かなきゃならないんだとは、俺も少し思うしな。
そんな事を考えていたら、
「……といか、その幼女は本当にドワーフなの!? どこかから攫って来た女の子とかじゃなくて?」
今度はラウラの……というか、ドワーフの存在自体を疑いだす。
そして、
「攫うかぁぁぁっ! ……わかった。そうまで言うなら、ソフィア。俺と一緒にドワーフの国へ行くか? 確かにラウラはドワーフっぽく見えないが、父親はイメージ通りのドワーフだぞ?」
「ふんっ! そうまで言うなら、本物のドワーフを見せてみなさいよ!」
「……目の前に本物のドワーフが居る」
ラウラの呟きをスルーしつつ、ソフィアをドワーフの国へ連れて行く事となった。
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