英霊召喚 ~ハズレと呼ばれた召喚魔法で、過去の大賢者を召喚して史上最強~

向原 行人
向原 行人

第136話 獣人族の村

公開日時: 2020年12月6日(日) 08:08
文字数:2,208

 ボス猫をジェーンに抱いてもらい、夜の街道をひた走る。

 とはいえ、俺とアタランテが本気で走るとジェーンが遅れてしまうし、猫を抱いている事もあって、速度はジェーンに合わせているが。


『おぉぉ……人間とは、こんなにも速く走れる生き物なのか!?』


 ボス猫が俺たちの走る速さに、若干引きながら問いかけてくる。


(本気を出せばもっと速く走れるぞ。とはいえ、全ての人間の脚が速いという訳ではないが)

『そうなのか。人間に対する認識を改めなければならんな』

(まぁ俺たちは少し例外だと思ってくれて良いんだが……それよりも、既に街を出てからかなり走っているが、大丈夫なのか?)

『大丈夫とは?』

(猫って、あまり行動範囲が広い訳では無いんだろ? 街の外へ出て、道が分かるのか?)

『問題無い。信頼出来る所から情報を得ているのと、ちゃんと目印を教えて貰っている。だから、一先ずこのまま街道を進めば良い』

(まぁ、そう言うのなら従うまでだが)


 猫の集会場を発ってから、それなりの時間が経って居る。

 俺たちの速度なので、かなりの距離を進んでいる事になるのだが。

 とはいえ、俺たちはボス猫に案内してもらうしか術がないので、ひたすら進んでいると、唐突にマーガレットからメッセージ魔法が届く。

 ……どうやらユーリヤに、起きそうな気配があるそうだ。


「ジェーン、アタランテ。一旦、ストップ。ユーリヤがヤバいらしい」

「了解いたしました」

「あー、ユーリヤちゃんが起きそうなんだね。じゃあ、私たちはここで待って居るよ」


 月明かりしかない、周囲を草原に囲まれた草原の中で二人を止めると、すぐさまテレポートで寮の部屋に戻る。

 闇に慣れた目をすぐさまベッドに向けると、ゴロゴロと転がるユーリヤの隣に滑り込んだ。


「……にーにぃ……」


 俺の存在を確認出来て安心したのか、ユーリヤの動きが止まる。

 危ない、危ない。

 マーガレットの話によると、前回はあのまま俺が見つからず、ムクっと起き出したって話だったからな。

 そうなると、朝まで全身拘束コースだからね。

 暫くユーリヤの傍に居て、静かに寝息を立てたのを確認すると、ゆっくりと立ち上がる。


「……マーガレット。悪いけど、また頼む」


 マーガレットにユーリヤを任せ、再びテレポートで二人と一匹の元へ。


「すまん、待たせた……って、この血の匂いは魔物か?」

「はい。ですが、特に問題はありません」

「魔物は夜の方が活発だからねぇ。まぁでも、大した事なかったよ」


 よくよく見てみれば、闇に紛れて黒い塊が落ちているが、大きさからしても中型の魔物だ。

 確かに、この二人であれば問題無いだろう。


『人間……一つ良いか?』

(ん、何だ?)

『この二人の強さは、まぁ良いとしよう。魔物を倒す力を持つ人間が居るというのは知っていたからな。だが、問題はお主だ。一瞬で消え、気配も匂いも絶っていたが、何が起こったのだ?』

(あぁ。俺、瞬間移動の魔法が使えるんだよ。今日、猫の集会場にもそれで現れただろ? 一度行った事のある場所には行けるから、無事に獣人族の村へ着いたら、集会をしていた公園まで送ってやるよ)

『そうか、それは助かる』


 ジェーンたちが倒した魔物の死骸を空間収納魔法へ格納すると、再び走り出す。

 そこから暫く走った所で、


『見えたぞ。我らが得た情報によると、あの横一列に並んだ四本の高い樹が目印だ。あそこまで行ってくれ』


 ボス猫が目的地を示したので、ジェーンに確認を取った上で加速する。


『ぐ……ぐぐぐ……』


 速すぎるのか、ボス猫が呻いているが、その甲斐あって目的の場所へと到着した。

 四本の樹が不自然に真っ直ぐ並んでおり、その少し先には大きな森が広がっている。


(次はどっちだ? この樹を目印に右か左かへ曲がるんだろ?)

『いや、ここが目的の村だ』

(おいおい。ただの森で、村どころか家すら無いぞ?)

『大丈夫だ。人間……一先ず、我を下ろすように言ってくれ』


 ジェーンにボス猫を地面に降ろすように伝えると、四本の樹をするすると登りだした。

 猫は樹に登れるが、降りられないと聞いた事があるのだが、大丈夫だろうか。


『人間……登れないか?』


 ついて来いと、こちらを見下ろしながら、ボス猫が上へ上へと登って行く。


「登って来いだってさ」

「ふーん。まぁいいけどね。じゃあ、先ずは私が行くよ」


 身軽なアタランテがするすると猫の後を追い、俺はその場で行方を見守る。

 ふっふっふ……思った通り、アタランテのパンツが見放題だ。

 木登りは、軽い者から行くのがセオリーだからと、どこかで聞いた話を伝え、次はジェーンに登ってもらう。

 アタランテとジェーン、二人のスカートの中を覗きながら思う。

 昼間に来れば良かった……と。

 夜の暗闇に慣れているので、木登りくらいは出来るが、せっかく真下から二人のスカートを覗けているのに、暗くてよくわからない。

 流石に今から明かりを点けるのも不自然だしな。

 せめてジェーンが木登りが苦手とかなら良かったのに。それなら助けを申し出ながら、下からお尻を触り放題だしさ。


『……思考が私の予想通り過ぎて、突っ込む気にもなれませんよ……』

(甘いな。俺は、そのアオイの呟きを予想していたぜっ!)


 だから何だという話をアオイとしつつ、俺も木に登る。

 結構な高さなので、最悪の場合は浮遊魔法を使おうと思いつつ、先行した二人と一匹に追いつく。


「樹に登ったが、ここに何が……って、凄いな。こういう事か」


 高い樹の上に登ると、木で作られた家が森の上に沢山並んで居た。

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