「ふむ。では大地の神の試練、第一の試練の品……確かに受け取った」
火酒を手に入れた後、ラウラとユーリヤだけを連れてドワーフの国に居るライマーの所へやって来た。
相変わらず、ライマーは父親モードでラウラに優しい目を向けているが、周囲にいるドワーフたちがずっと俺を睨んでいる。
別に嫌われるのも構わないし、襲い掛かられても負ける気はしないが、後で依頼する聖銀の加工は、ちゃんとしてくれよ。
「では、大地の神の試練、第二の試練を……」
「ん? その大瓶の中身を確認しなくて良いのか?」
「もちろん確認は行う。だがそれは今では無い」
「そうなのか? こちらとしては、早めに確認してもらって、ダメならもう一度調達しに行きたいのだが」
「何を言っておる。お主がラウラと共に持って来たこれらの品は、皆で一斉に確認する事と決まっておる。ワシだけ先に味を見るなど、許されんよ」
ふむ……よく分からんが、それがドワーフの文化だというのであれば仕方がないか。
「では、改めて第二の試練についてだが……二つ目の試練は、最高の肴を用意する事だ!」
「魚? それは生きている状態で持ってくるのか?」
「いや、生はダメだ。まだ日取りが確定していないからな。とにかく旨くて量がある物だ」
うーん。量がある……っていう事は、大きい魚で、かつ最高に旨い物か。
ドワーフが魚料理を求めるのは意外だな。
……いや、ドワーフだからこそか。土の中に住んでいると、海や川に行く事はない。
ならば、確かに魚は珍しい物となるだろう。
「分かった。旨い魚なら、何でも良いんだな?」
「もちろんだ。旨い肴なら、何でも良い」
次の試練の品を聞き、一先ず帰ろうとした所で、
「あー、ラウラや。婿殿には大事にしてもらっているのか?」
周囲のドワーフから離れ、完全に父親の表情となったライマーが近付いてきた。
「……大丈夫。この前、大勢の前で一生養うって言ってくれた」
「そうか。婿殿……娘を、孫を宜しく頼みますぞ」
まぁラウラの言った事は嘘ではない。
アオイの暴走をラウラに止めてもらう時に、そう言ってしまったからな。
だが孫は無理だろ。この身長差を考えてくれ。
喉まで言いかけた言葉を何とか飲み込み、空気を読んで、無言で会釈だけして去る事にした。
一先ずテレポートで屋敷に戻り、さっそく皆に聞いてみる。
「という訳で、聖銀を剣に加工して貰う為に、旨くて大きな魚が必要なんだが、誰か魚に関する情報を持っていないか?」
「……兄たん、少し違う。ラウラちゃんと結婚する為に肴が必要」
ラウラの言葉を完全にスルーしつつ、皆の意見を待つが、当然誰からも出てこない。
うーん。魚って事は海や河だけど、大きな魚っていう指定があるから、やっぱり海か?
海と言えば……あ、そうだ!
「あ、イロナ。海の家では魚料理とかを出して居なかったのか?」
「んー、私はお店に全然関わらせて貰えなかったからねー。でも、お店も村も海のすぐ近くだったし、誰かしら何か知っているかも」
「そうか。じゃあ、エルフの村でダークエルフに聞き込みしてみるか」
ラウラとユーリヤに、イロナを加えてエルフの村へ移動しようとした所で、
「ヘンリーさん。エルフの村へ行くなら、私も連れて行って貰って宜しいですか?」
「エリザベス? どうしたんだ?」
「いえ、エルフの村へ行く機会があれば、新たな取引商品を開拓したいと考えていましたので」
エリザベスから申し入れがあった。
流石はエリザベス。内政を全面的に任せている上に、こんな提案まで。
早速了承し、エリザベスも連れて行く為、ワープ・ドアを使った所で、
「おにいちゃん、あそんでーっ!」
「あ! ダメだよ!」
三姉妹の声が聞こえ、小さな何かが俺の胸に飛び込んできた。
「おにいちゃん! あそんで、あそんで、あそんでーっ!」
「えーっと、この感じだと、リオナか」
「そーだよー! ねー、あそぼーっ!」
リオナがじゃれるようにして、俺の腕にしがみ付く。
なんて言うか、変身してないけど、犬……だな。
見た目的にはユーリヤより年上のはずなんだが……あれかな。体力が有り余っているんだよな。
そうだ! 色々あって忘れていたけど、今こそあの……
「お兄ちゃん? どういう事なの!?」
ちょっと思い出した事があったんだけど、それを整理する前に、何故か不機嫌そうなルミが現れた。
「ルミ。連絡無しに突然来てしまって悪かったな。ちょっと急ぎの用事があって……」
「お兄ちゃん! ルミという未来のお嫁さんが居るのに、どうして女の子と抱き合ってるの!?」
……えーっと、ルミは何を言っているんだろうか。
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