英霊召喚 ~ハズレと呼ばれた召喚魔法で、過去の大賢者を召喚して史上最強~

向原 行人
向原 行人

第285話 ドワーフの第二の試練

公開日時: 2021年5月7日(金) 08:08
文字数:1,842

「ふむ。では大地の神の試練、第一の試練の品……確かに受け取った」


 火酒を手に入れた後、ラウラとユーリヤだけを連れてドワーフの国に居るライマーの所へやって来た。

 相変わらず、ライマーは父親モードでラウラに優しい目を向けているが、周囲にいるドワーフたちがずっと俺を睨んでいる。

 別に嫌われるのも構わないし、襲い掛かられても負ける気はしないが、後で依頼する聖銀の加工は、ちゃんとしてくれよ。


「では、大地の神の試練、第二の試練を……」

「ん? その大瓶の中身を確認しなくて良いのか?」

「もちろん確認は行う。だがそれは今では無い」

「そうなのか? こちらとしては、早めに確認してもらって、ダメならもう一度調達しに行きたいのだが」

「何を言っておる。お主がラウラと共に持って来たこれらの品は、皆で一斉に確認する事と決まっておる。ワシだけ先に味を見るなど、許されんよ」


 ふむ……よく分からんが、それがドワーフの文化だというのであれば仕方がないか。


「では、改めて第二の試練についてだが……二つ目の試練は、最高の肴を用意する事だ!」

「魚? それは生きている状態で持ってくるのか?」

「いや、生はダメだ。まだ日取りが確定していないからな。とにかく旨くて量がある物だ」


 うーん。量がある……っていう事は、大きい魚で、かつ最高に旨い物か。

 ドワーフが魚料理を求めるのは意外だな。

 ……いや、ドワーフだからこそか。土の中に住んでいると、海や川に行く事はない。

 ならば、確かに魚は珍しい物となるだろう。


「分かった。旨い魚なら、何でも良いんだな?」

「もちろんだ。旨い肴なら、何でも良い」


 次の試練の品を聞き、一先ず帰ろうとした所で、


「あー、ラウラや。婿殿には大事にしてもらっているのか?」


 周囲のドワーフから離れ、完全に父親の表情となったライマーが近付いてきた。


「……大丈夫。この前、大勢の前で一生養うって言ってくれた」

「そうか。婿殿……娘を、孫を宜しく頼みますぞ」


 まぁラウラの言った事は嘘ではない。

 アオイの暴走をラウラに止めてもらう時に、そう言ってしまったからな。

 だが孫は無理だろ。この身長差を考えてくれ。

 喉まで言いかけた言葉を何とか飲み込み、空気を読んで、無言で会釈だけして去る事にした。

 一先ずテレポートで屋敷に戻り、さっそく皆に聞いてみる。


「という訳で、聖銀を剣に加工して貰う為に、旨くて大きな魚が必要なんだが、誰か魚に関する情報を持っていないか?」

「……兄たん、少し違う。ラウラちゃんと結婚する為に肴が必要」


 ラウラの言葉を完全にスルーしつつ、皆の意見を待つが、当然誰からも出てこない。

 うーん。魚って事は海や河だけど、大きな魚っていう指定があるから、やっぱり海か?

 海と言えば……あ、そうだ!


「あ、イロナ。海の家では魚料理とかを出して居なかったのか?」

「んー、私はお店に全然関わらせて貰えなかったからねー。でも、お店も村も海のすぐ近くだったし、誰かしら何か知っているかも」

「そうか。じゃあ、エルフの村でダークエルフに聞き込みしてみるか」


 ラウラとユーリヤに、イロナを加えてエルフの村へ移動しようとした所で、


「ヘンリーさん。エルフの村へ行くなら、私も連れて行って貰って宜しいですか?」

「エリザベス? どうしたんだ?」

「いえ、エルフの村へ行く機会があれば、新たな取引商品を開拓したいと考えていましたので」


 エリザベスから申し入れがあった。

 流石はエリザベス。内政を全面的に任せている上に、こんな提案まで。

 早速了承し、エリザベスも連れて行く為、ワープ・ドアを使った所で、


「おにいちゃん、あそんでーっ!」

「あ! ダメだよ!」


 三姉妹の声が聞こえ、小さな何かが俺の胸に飛び込んできた。


「おにいちゃん! あそんで、あそんで、あそんでーっ!」

「えーっと、この感じだと、リオナか」

「そーだよー! ねー、あそぼーっ!」


 リオナがじゃれるようにして、俺の腕にしがみ付く。

 なんて言うか、変身してないけど、犬……だな。

 見た目的にはユーリヤより年上のはずなんだが……あれかな。体力が有り余っているんだよな。

 そうだ! 色々あって忘れていたけど、今こそあの……


「お兄ちゃん? どういう事なの!?」


 ちょっと思い出した事があったんだけど、それを整理する前に、何故か不機嫌そうなルミが現れた。


「ルミ。連絡無しに突然来てしまって悪かったな。ちょっと急ぎの用事があって……」

「お兄ちゃん! ルミという未来のお嫁さんが居るのに、どうして女の子と抱き合ってるの!?」


 ……えーっと、ルミは何を言っているんだろうか。

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