英霊召喚 ~ハズレと呼ばれた召喚魔法で、過去の大賢者を召喚して史上最強~

向原 行人
向原 行人

第135話 ゴッドハンド

公開日時: 2020年12月5日(土) 08:08
文字数:2,159

 教会とのやり取りがあった翌日。

 今日は放課後にシャロンのおっぱい――もとい剣術を見て癒された後、買い物と夕食を済ませて、ユーリヤをお風呂に入れ……いつも通りの日常を過ごした。

 そして、ユーリヤが眠った後、静かにベッドから出ると、


「主様。猫ちゃんの所へ行かれるんですよね? 私も連れて行ってください」

「貴方、私も付き合うわよ」


 ジェーンとアタランテが静かに起きてくる。

 三人で先日行った猫の集会で、あの猫たちが獣人族の村を見つけて、連れていくと言ってきたのが今日だ。

 なので、今日は商店街を回り、ちゃんと報酬となる大量の魚も用意している。


「ちゃんと見つけてくれていると良いな」

「そうですね。ですが、きっと大丈夫だと思います。猫ちゃんたち、可愛いですし」


 猫が好きなジェーンの思考が良く分からない事になっているが、猫たちが自ら三日だと言ったのだ。

 きっと大丈夫だろう。

 暗闇の中で二人が着替えるのを見つめ……見えないけど見つめた後、ワープ・ドアの魔法を使うと、三人で猫の集会場所へと移動する。

 移動した先では、ボスの白猫を筆頭に、多数の猫たちがニャアニャアと鳴いて居た。


「貴方。この猫たちは何を騒いでいるの?」

「ちょっと待って。俺も魔法を使わないと分からないよ……コミュニケート」


 俺の言葉と共に、淡い光が白猫を包み込むと、


『待って居たぞ、人間』


 先程までニャアニャア鳴いていた猫の言葉が理解出来るようになる。


(数日振りだな。それより取引の件だが、目的の場所は見つけられたのか?)

『当然だ。我らのネットワークをもってすれば、獣人族の村を見つけるなど、容易い事だ』

(おぉ、本当か! だったら、早速連れて行ってくれ)

『待て。それよりも人間。約束の品はどうした。この前の十倍の魚を持ってくると言っていたのに、何も持って居ないではないか』

(あぁ、その事か。俺は空間収納魔法っていうのが使えてな。荷物をいつでも好きな時に取り出す事が出来るんだよ……こんな風にな)


 手ぶらで来たように見えたらしく、空間魔法で大きめの魚を十匹程出して投げ与えると、不機嫌だった白猫の態度が一転して魚に飛び付く。

 もしかしたら、先程までニャアニャアと猫たちが騒いでいたのは、約束が違うと疑っていたのかもしれない。

 追加で二十匹程魚を取り出すと、周囲で鳴いている猫たちにも与える事にした。


「うふふ……皆、仲良く食べてねー」


 合計三十匹近くの魚を投げたので、ここに居る猫たちが、最低でも魚を一匹は食べられると思うのだが、魚が落ちた位置が悪かったのか、争うようにして魚を取り合う猫が居たのだが、それをジェーンが宥めていく。

 ジェーンは猫と意思疎通を図る魔法を修得していないはずなんだけど……まぁジェーンだからな。

 何でも出来る巨乳騎士だし、気にしないでおこう。

 ボス猫が魚を食べ終えたのを見計らい、


(一先ず今のは魚を用意していると示しただけだ。残りは、俺たちを獣人族の村へ連れて行ってからだ)

『……うむ、分かった。では、早速道案内をしてやりたいのだが、一つ問題がある』

(何だ?)

『その目的地まで、それなりに距離がある。おそらく、一晩走り続けても到着しないだろう。我らは夜に生きる者。夜が明ければ、その辺りで寝るが、人間は同じようにはいかぬのだろう?』

(そうだな。俺たち三人は、徹夜で走り続ける体力はあるが、諸事情であまり時間を掛けられないんだ)


 まぁ諸事情っていうのが、ユーリヤの事なんだが。

 何とかユーリヤが目を覚ます前に帰らないと、またあの一睡も出来ない事態になってしまう。

 結構辛いんだよな、あれ。


(ところで、一晩走り続けても到着しないって言ったけど、それは猫の足での話だよな?)

『もちろんそうだが……人間よ。まさか我らよりも、足が速いと言う気か!?』

(いや、普通に俺たちの方が速いと思うが。そもそも身体の大きさが違うし。物は試しって事で、誰か選んでくれたら、俺たちが抱きかかえて走るけど)

『笑止! 誰が人間などに抱きかかえられるものか! 我らは人間に飼われている猫とは違う! 誰を選ぼうが、自らの足で走る事を選ぶに決まっている!』

(抱きかかえるのは、このゴッドハンドの異名を持つ、猫撫でマスターのジェーンだが)


 ゴッドハンドも猫撫でマスターも、俺が勝手に今名付けた適当な称号だが、猫好きジェーンの撫で技術は良く分かっているのだろう。

 少し間が空き、


『……仕方が無い。取引を確実に遂行するため、我が行こう。いや、あくまで確実にそなたらを目的地へ連れて行く為であってだな。決して、その女に撫でられたい訳では無いのだぞ!?』

(はいはい。そういう事にしておくよ)

『いや、本当だから。本当なのだっ! ……おい、人間。何故、我を見てニヤニヤするのだっ!』


 ボス猫自らが、俺たちへ同行すると言ってきた。

 気持ちは分かるよ。俺だってジェーンに抱っこして貰いたい……というか、あの柔らかくて大きな胸に顔を埋めたいし。

 ジェーンが猫を抱きかかえたら、おのずと胸にくっつけるよな。

 猫、いいなぁ。

 猫に変身する魔法はないだろうか。ドラゴンが幼女に変身するのだから、俺が猫に変身出来ても良いと思うのだが。

 ……今のドラゴン幼女で、ユーリヤの事を思い出した俺は、一瞬部屋へと戻り、ユーリヤが起きていない事を確認して、獣人族の村へと出発する事にした。

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