「おにーちゃん!? ここはどこ? どうやって来たの!?」
「ついさっき約束したろ? ここへ来る方法は内緒だ。で、ここがどこかって質問には答えよう。俺の家だ」
「え? 家……って、この王族とかが住んでそうな家が!?」
「いや、王族は言い過ぎだな。とりあえず中へ入ろうか。ここは女の子がいっぱい住んでいるし、皆きっと良くしてくれるよ」
「あ。そういう……う、うん。分かった。何でもするって約束したもん! 私、頑張るっ!」
何が分かったのかは分からないが、一先ず頑張るそうなので、保護した幼女を連れて屋敷の中へ。
「御主人様。お帰りなさいま……せ」
「ただいま。ノーマ、すまないが風呂の準備を頼む」
「えっと、既に入れる状態ですが……」
「わかった。じゃあ、悪いがこの子を風呂に案内してあげてくれ」
「か、畏まりました。こ、こちらです」
幼女が強制的に住まわされる事になった家には、まともな風呂が無かったのだろう。
薄暗い小屋の中では無く、明るい場所で見てみると、幼女の肌がかなり汚れていた。
一先ず、風呂に入って綺麗になってもらおうと思ったのだが、
「あ、あの……お、おにーちゃんは入らないの?」
「俺? いや、別に……」
何故か幼女が、困惑しながら俺を風呂に誘う。
待てよ。ユーリヤやラウラならともかく、明らかに一人で風呂に入れる女の子が、わざわざ俺に声を掛けたという事は……もしかして俺、臭い!?
別に汗をかくような事はしていないが、ユーリヤを抱っこしながら、高速お散歩という名のダッシュを数時間している訳だから、自分では気付けていないが、ヤバい状態なのか!?
ユーリヤは優しいから俺が臭くても言わないだろうし、ノーマも雇い主にそんな事は言い難いだろう。
つまり、物怖じせずにハッキリ言えるこの幼女のいう事が真実かっ!
「よ、よし。やっぱり俺も入ろう」
「良かった。私も初めては、助けてくれた、おにーちゃんが良いもん」
「じゃあ、ユーリヤもー!」
幼女は良く分からない事を言っているが、さっきまでの不安そうな表情から、何かふっきれたような表情に変わったので、まぁ良しとしよう。
俺におんぶされるユーリヤはいつも通りだが、何故かノーマだけが、嘘でしょ!? とでも言いたげな顔で俺を見つめて来る。
ノーマはあまり感情を表に出さないんだけど、一体何があったのだろうか。
一先ず、脱衣所へ着いたので、
「ノーマ。悪いが、この子が着れそうな服を適当に見繕って置いといてくれないか」
「清楚な服か、大人な服。もしくは子供らしさを強調する服ですと、どれが宜しいですか?」
「へ? ……年相応な感じで良いんじゃないのか?」
「……畏まりました。では、どうぞごゆっくりお楽しみください」
ノーマに幼女の着替えを頼んだだけなのだが、何故か驚いた表情で、
「……そういうのがお好みだったのですね……」
何か小声で呟いて去って行った。
一先ず、いつもユーリヤと入るように、スポーンと全裸になり、先ずはユーリヤの身体を洗っていると、幼女が俺の背後に立つ。
「あ、あの……は、初めてなので、申し訳ないのですが、間違っている所があれば言ってください」
この子は初めて風呂に入るのか?
いや、そんな訳ないか。
……わかった! ブライタニア王国とハザーラー帝国とで、風呂の様式が違うんだ!
「まぁどこから洗うかは、人それぞれだとは思うが、とりあえず俺は先ず身体を洗うかな。そこにある石鹸を使って、よく泡だてたら、自分の手や腕、それから胸とかお腹を洗ってみたら?」
「分かりました……こ、こういう事ですね?」
「……え? どういう事!? どうして俺に抱きつくんだ?」
「え? 違いますか? じゃあ、直接?」
「いやいやいや、何故俺の身体を洗おうとしてるんだ!?」
「ん? だって、これから私、こういうお仕事をするんですよね? その研修ですよね?」
「すまん。何の話だ!?」
よくよく話を聞くと、幼女をあの国から脱出させた見返りに、エッチな仕事で儲けて建てた屋敷に住まわせ、そういう仕事に就かせる……って、俺はどんな悪徳商人だよっ!
「いや、違うから。見返りとか本当に要らないから。俺は単純に、あの国から逃げ出したいっていう想いを汲んだだけだからさ」
「じゃ、じゃあ……エッチな事とかしなくて良いんですかっ!?」
「だから、良いってば。ユーリヤみたく、子供らしく無邪気に楽しく過ごせば良いよ」
「あ、ありがとうございますっ!」
いや、だから抱きつかなくて良いから。
Aランクの胸を押しつけられても……って、少し大きい?
ほぉ、幼女なのにBランク……将来有望株だな。とはいえ、流石に今はそういう対象に入らないが。
それからユーリヤと三人でお風呂へ入り、夕食は何かなーっと予想したり、好きな食べ物の話をしたりしてお風呂を出ると、
「あの……おにーちゃん。助けてもらった身だし、わがままは言わないつもりだけど、これは……」
「お、おぅ。ちょっと待っててくれ。俺が着替え終わったら、急いでノーマを探して来るから」
一体ノーマが何を思ったのか、幼女の着替えとして、ウサ耳フードの付いた、着るとドピンクのウサギになれそうなパジャマが置かれていた。
「にーに。ユーリヤ、それがいいなー」
「そ、そうだな。どっちかって言うと、ユーリヤの方が似合いそうだな」
着せてあげたのでユーリヤは嬉しそうにしているけど……というか、どこにこんな服があったんだよ。
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