「あー、子供は子供なんだが、俺と血は繋がっていなくて、でもある意味では俺の子で……」
「えぇっ!? それって、ハー君が……ハー君が誰かと結婚して、その奥さんの連れ子って事!? ……えっ!? ハー君って結婚してたの!?」
「いや、してないから。というか、エリーは自分で言って自分で驚くなよ」
エリーのは、どんなノリツッコミだよと思いつつ、改めて事情を説明する。
「エリーは知っていると思うが、俺は今、とある村の領主になっていて、他国の孤児を何人も保護したんだ。それで、その孤児たちの為に基礎学校を作る事にしたんだが、子供たちの勉強を見る者が居なくて困っているんだ」
「え? ハー君が領主様!? エリー、そんなの聞いてないよ!?」
「あれ? 言って無かったっけ? 魔族を倒した功績で、ある村の領主になったんだけど」
俺の言葉にエリーがキョトンとしながら首を横に振る。
その直後、
「えぇぇぇっ!? ヘンリー君、領主様になったのっ!?」
「待って。領主様って事は、爵位とかを授与されているって事よね? というか、貴族様!?」
「孤児を保護するくらいだから、裕福な村って事だよね? 私たちと同い年で魔族を倒して、領主で……って、超優良物件だよね。とりあえず、話だけでも……」
再び教室内が騒ぎに。
一体どうやったら話が進むんだよ。
一先ず、話し掛けるのは諦め、黒板にこちらの条件をデカデカと記載する。
――子供が好きで、基礎学校レベルの内容を教えられる人。
住み込みも問題ない事。尚、食事は三食出て、メイド付きの屋敷に住める。
秘密を厳守出来る事と保護者の了解を得られる事――
すると、次第に教室が静かになっていったので、
「これに加えて、向こうにこの魔法学校の教師が居るので、授業の続きは教えてもらえるし、単位も貰えて正式に魔法学校を卒業可能だと、学長と話は済んでいる。あと、給与だが……」
「えぇっ!? そ、そんなに貰えるのっ!? ヘンリー君、それ宮廷魔術士並の給料だよっ!?」
「そうなのか? いや実の所、俺はこういう所は疎くて、お金関係は財務担当の専任者に任せているんだ。で、その者が言うには、これくらいの金額で二、三人居ると助かるって話でさ」
具体的な補足内容を話すと、今度はヒソヒソ話が始まった。
聞こえてきた内容としては、
「……親が許可さえしてくれたら、絶対に行くべきよね」
「……けどこれって、いずれは私たちが子供を産む事になるんじゃないかしら? 相手はあの性欲の権化、ヘンリー君よ?」
「……でも、それはそれでアリじゃない? 貴族の仲間入りよ?」
……って、性欲の権化は酷くないか!?
いやまぁ俺も健全な男だし、人並にはあるけどさ。
『人並み……ですか?』
(人並だよっ!)
まったく。俺の事を変態みたいに言うなんて、アオイも失礼だな。
そんな話をしていると、最終的に三人の手が上がった。
もちろん、全員保護者に確認して承諾してもらうという条件は残っているが。
一先ず、ここから先は皆の前で話す事でも無いかと思ったので、一人ずつ個別に面談して細かい話をする事にした。
最初は、ある意味予想通りであり、俺としては凄くありがたい、エリーだ。
「エリー。来てくれると俺は助かるけど、大丈夫なのか?」
「うんっ! あのね、エリーもお金の事とかは未だ分からないけど、ハー君と一緒に居たいもん」
「分かった。じゃあ、後は保護者の承諾……って、エリーのお母さんなら、むしろ喜んで送り出しそうだな」
「あはは。とにかく、お母さんには確認しておくねー!」
後で俺もエリーの家に挨拶に行く事を伝え、二人目の立候補者の面談に移る。
二人目は、基礎魔法コースの代表委員であるロレッタちゃんだ。
「えっと、ロレッタちゃん。代表委員なのに、良いの?」
「うん。私、子供が好きだし、子供を作る事にも興味があるから大丈夫だと思う」
「なるほど……って、ちょっと待った。今、変な事を言わなかった!?」
「問題は、パパなのよね。もう私は十五歳で成人しているのに、溺愛っていうか、未だにお風呂へ一緒に入ろうとするし」
「それはちょっと色んな意味で危なくない!?」
「けど何とか説得してみせるから、ヘンリー君、子供……お願いっ!」
「子供に勉強を教える仕事をお願いって意味だよね!? ロレッタちゃん!? ロレッタちゃーんっ!?」
前から妄想に浸り易い女の子だったけど、大丈夫だろうか。
とりあえず、残りの一人の話も聞き、放課後にそれぞれの家へ行って親と話をする事になった。
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