英霊召喚 ~ハズレと呼ばれた召喚魔法で、過去の大賢者を召喚して史上最強~

向原 行人
向原 行人

第143話 合流

公開日時: 2020年12月13日(日) 08:08
文字数:1,913

「ぐっ……」


 コートニーの貧乳に目を向けている内に、目前に迫って居た男の攻撃を剣で受け流し、後ろへ跳びのく。

 男が俺に詰め寄り、二度三度と剣を振るう。

 はっきり言って、荒い。

 太刀筋はめちゃくちゃで、軌道も読み易いので対処も出来る。

 だがその一撃一撃が非常に重く、速い。

 敏捷性という意味では大した事はないのだが、身体強化された腕力で振るわれる剣の一振りが、とにかく強すぎる。

 剣を受け止める事が出来ないので、振るわれる剣先をずらし、体さばきで強烈な剣を何とか避け続け、


「……ここだっ!」


 単調な攻撃の隙間をぬって、男の身体を横薙ぎに払う。

 俺の剣が男の左腕を切り落とす……はずだったのだが、鈍い音と共に俺の剣が折れてしまい、バックステップで距離を取る。


「危ない、危ない。やはり剣はダメだな。ワシの剣も既に刃が欠けて、ただの棒だ」


 そう言うと、男が手にしていた剣を捨て、


「どうだ、少年。男らしく、殴り合おうではないか」


 両拳を胸の前で握り、独特の構えをとった。


 身体強化した者同士での殴り合いか。

 体術も出来なくはないが、俺にとってそれは非常手段であり、あくまでも俺は剣士だ。

 わざわざ相手に――街を破壊するような奴に付き合う義理は無い。

 だが騎士の剣ではダメだ。

 身体強化された者同士の戦いなので、より強固な剣――具現化魔法で強度を増した剣を生成したいのだが、それには周囲の騎士たちが邪魔だ。

 どうしたものかと考えていると、前方から見慣れた姿が走ってくる。


「主様っ!」

「お兄さんっ! これ……どういう状況なのっ!?」


 大きく胸を揺らすジェーンと、それには劣るものの、上下に胸を揺らすマーガレットが男と距離を取って俺の傍に来た。


「少年。三人掛かりでも良いが、その二人は役に立つのか? まぁワシとしては、ここに居る全員が一斉に来ても良いのだが……一撃で終わってしまうからつまらんが」

「もちろんだ。だが、お前と戦うのは俺とこのジェーン、そしてユーリヤだ」

「えっ!? お兄さん、私は!? 私だけ除け者なのっ!?」


 マーガレットが媚びるようにして俺の左腕に胸を押し付けてくるが、別に除け者にしようとした訳じゃない。


「マーガレット。こいつのせいで大勢怪我人が出ている。悪いが、そこに居るコートニーと共に怪我人の治療をしてくれ」

「あ、そういう事ね。了解っ!」


 納得したのか、マーガレットが俺に密着させていた胸を離す。

 そこは離さなくても良いのだが。


「コートニー! このマーガレットは神聖魔法が得意だ。周囲の騎士たちと協力して怪我人を探し、マーガレットと共に救助してくれ!」

「あ、貴方たちはどうされますの!?」

「俺たちか? もちろん、こいつを倒す。だから、ここに居る騎士全員で怪我人を探すんだっ!」

「ですが……」

「人命優先だっ! こいつは俺たちに任せろっ!」


 人命優先という言葉が効いたのか、暫く戸惑っていた騎士たちも皆それぞれが散り、俺とユーリヤ、それとジェーンだけが男の前に残る。

 さて、ここからが本番だ。


「少年、目が変わったな。アレか? もしかして、周囲の仲間を巻き添えにするから、本気で戦えなかったという奴なのか? ……愚かな」

「いや、違うぞ。周りに人が居て本気を出せなかったというのは正しいが、別に巻き添えにしてしまうからという理由じゃない。俺の保身のためさ」

「……? 良く分からんが、先程よりも楽しませてくれるって事で良いんだな? そっちの女も含めて」

「あぁ。それは保証するぜ。本気の俺とジェーンは強いぞ。あと……出来れば本気になって欲しくはないが、ユーリヤも」


 具現化魔法で新たな剣を生み出すと、それとは別に小さめの、だが強度を非常に高くした盾を二つ生み出す。


「ジェーン。あいつは異様なパワーファイターだ。とにかく力が強い。攻撃を受けると吹き飛ばされるから、避けるか受け流すようにするんだ」

「了解いたしました」


 ジェーンに盾を渡し、俺も左腕に盾を装着すると、ジェーンに身体強化魔法を掛ける。


「待たせたな」

「構わんさ。だが最初に言った通り、ワシは女子供にも容赦せんからな?」

「承知の上だ」


 目の前の男は一応会話が出来るものの、魔物が女や子供を見逃してくれるかというと、そんな事は無い。

 今回はそれと同じだ。街中で人の姿をした魔物が暴れているに過ぎない。


『……ん!? 人の姿をした魔物?』

(どうかしたのか?)

『いえ、少し引っ掛かっただけで……ちょっと時間をください』


 アオイはアオイで、魔法が効かない奴を倒す為の方法を考えてくれているようだ。

 だが、その答えを待つよりも、直接倒してしまえるのであれば、それが一番早い。

 一瞬ジェーンと視線を合わせ、


「行くぞっ!」


 俺は左から、ジェーンは右から男に向かって駆けだした。

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