「あの、ご主人様……そちらの女性たちは?」
「ん? あ、そうか。エリザベスにしか話してなかったな。俺のクラスメイトで、子供たちに勉強を教えてもらう先生だよ」
「……女の子ばっかり……」
恐る恐る声を掛けてきたノーマに説明し、部屋の準備をお願いすると、何かを呟いて屋敷の奥へと駆けて行った。
きっと、三人分も部屋の準備をしないといけないから忙しいとか、そういう感じの事だろう。
……幼女たちがも増えて、人数がかなり多くなったから、そろそろノーマを補佐するメイドさんや、メリッサを補佐する料理人も必要かもしれないな。
「あ、あのヘンリー君。今のメイドさんみたいな女の子は……」
「ん? ノーマはこの屋敷で働いてくれているメイドさんだが?」
「め、メイドさんが居る家……流石、領主だね」
「他にもいろんな人が居るから、三人とも後で紹介するよ」
驚くロレッタちゃんと、屋敷の中をキョロキョロと見渡すエリーとポピー。
まぁ最初はそうなるよな。俺だって、学校の寮からこの家に移った時は、差が凄すぎて驚いたしな。
「あれ? エリーはこの家に来るのは初めてだっけ?」
「そうだよー。ハー君のお家に、やっと招待してもらったんだよー」
「そうか。エリーは割と俺の家に来ているイメージを勝手に持ってしまっていたよ」
「あはは。ハー君がよくエリーの家にお泊りしに来てくれていたからじゃないかな?」
けど、最近はあんまり来てくれなかったけどねー……と、頬を膨らませるエリーの頭を撫でていると、
「……やっぱりヘンリー君は、エリーちゃんのお家にお泊りしてたんだ……」
「……ロレッタちゃん。これからはエリーちゃんだけじゃなくて、私たちもそういう関係になるんだよ?」
「……ど、ドキドキとワクワクが混ざってて、変な感情になっちゃうね。ポピーちゃんはそういう経験ってあるの?」
「……ある訳ないよ。けど、もう覚悟は出来てるからね。じゃあ、ロレッタちゃんより私が先かな?」
何やらロレッタちゃんとポピーがコソコソと話をしている。
何を話しているかは分からないが、顔を赤らめながらチラチラ俺とエリーに目をやるのは何だろうか。
「ヘンリーさん、おかえりなさい。そちらの女性たちが、仰っていた魔法学校の生徒さんですか?」
「あぁ。昼食の時にでも三人を皆に紹介するけど、エリーにロレッタちゃんに、ポピーだ」
「エリザベスと申します。皆さん、よろしくお願いいたしますね」
エリザベスの優雅な会釈に、三人が――いや、エリーはいつも通りで、ロレッタちゃんとポピーが焦りながら深々と頭を下げる。
「エリザベスは、この村の財務関係とか、内政全般を担ってくれている、ある意味一番大変な役を担ってくれているんだ」
「す、凄いね。何ていうか、オーラがあるっていうか、気品が溢れ出ている気がする」
「そうだね。お城に居たら、王女様だって思っちゃうかも」
ロレッタちゃんもポピーも凄いな。正解だ……というか、これはエリザベスの持つオーラが凄いのか?
「では早速ですが、お三方にはお仕事について、お話させてください。後で、パメラ先生にも入っていただきましょう」
「えっ!? パメラ先生!? ……あ、いえ、何でも無いです」
「パメラ先生……モテないからって、生徒であるヘンリー様を狙って……!?」
エリザベスからパメラの名前が出た途端に、ロレッタちゃんとポピーが顔を見合わせる。
エリーはいつも通りニコニコしているけれど、多分生徒たちの中で有名だったんだろうな。悪い意味で。
「じゃあ、エリーたちはエリザベスの指示に従ってくれ」
「え!? ハー君はどこへ行くの?」
「俺はちょっとやる事があってさ。とはいえ、すぐ近くには居るから」
若干不安そうな表情を浮かべるエリーを宥め、三人をエリザベスに任せる。
それから俺は、イロナとワンダを呼び、
「これから、ここに学校の仮校舎を作る。素材は石なんだが、二人の意見を聞きながら作るから、アドバイスをくれないか?」
植物のプロ――というか、ワンダは樹の妖精なんだが――の二人に意見を求め、石で出来ているけど、重苦しくなり過ぎない学舎を作る事にした。
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