授業終了後、ソフィアをニーナとマーガレットの元へと連れて行き、ユーリヤと共に王宮へ移動する。
いつものように門で中へ入る手続きを行っていると、
「あー! フローレンス様のヘンリー様ですよね!?」
焦った様子の衛兵が話しかけてきた。
「……フローレンス様のというか、第三王女直属特別隊のヘンリーだが?」
「何でも良いッス。とにかくヘンリーさんッスよね? 昨日捕まえてきた賞金首について捕まえた時の話をお聞きしたいと、偉い人が言っていたッス」
「あぁ、昨日捕まえた盗賊の事か。時間がある時ならいつでも構わないんだが、今急ぎの用事だと呼び出しを受けているんだが」
「急ぎの用事? フローレンス様ッスか?」
「いや、コートニーという名前だった。教会がどうとかって……」
コートニーの名前か教会という言葉かは分からないが、突然衛兵の顔が青くなる。
「ダメッス。俺は何も聞いてないッス」
「え? いや、だから教会が……」
「聞こえないッス。とにかく急いでコートニー殿の所へ行くッス」
「でも、盗賊の事を偉い人が聞きたいって言っているんじゃないのか?」
「大丈夫ッス。そんなの無視すれば良いッス。さぁとにかく急いでコートニー殿の所へ行くッス」
どういう訳か、追い立てられるようにして、宮廷の中へと入れられてしまった。
……しまった。コートニーって人がどこに居るのか聞いておけば良かった。
一先ず、いつものように第三王女直属特別隊で使用する小部屋へ向かったのだが、今日は公務でフローレンス様が不在だと、俺の顔を覚えていたメイドさんに言われてしまった。
しかも、そのメイドさんはコートニーという人の事を知らないという。
困った。今日はニーナもマーガレットとドワーフ探しに出ているし……シャロンは知っているかな?
資料庫を覗きに行ったが居なかったので、訓練場へ行くと……居た。
巨乳ジェーンと、ロリ巨乳シャロンがポヨンポヨンと大きな胸を揺らし、その隣でイライラした様子の青髪の女性騎士が素振りをしている。
正直言って、ジェーンとは比べ物にならないくらい、剣筋が雑だ。
これは、剣の訓練というより、苛立っているから、素振りで邪念を鎮めようとしている感じだろうか。
『ヘンリーさん。剣の素振りを見ただけでそこまで分かるのに、どうして女性の気持ちは微塵も分からないんですか?』
(いや、剣筋に邪念が篭っているし……というか、俺は女性の気持ちだってちゃんと分かるぞ?)
『へぇぇぇ、例えば?』
(そうだな。そこで素振りをしている女性は胸が殆どないだろ? きっと目の前に居るジェーンとシャロンの巨乳コンビを見て苛立っているんだ。で、その苛立ちを素振りで解消しようとしているんだよ)
『あの、流石に違うと思いますけど。もしも仮にそういう理由でしたら、他の場所へ移動すれば良いはずですし』
(いや、だけど王宮内で素振りが出来る場所は限られているし、それにだ。そもそもあの女性の場合、殆どの女性と比べて胸が劣ると思うんだけど)
何と言うか、顔は綺麗なのに胸が残念な騎士だ。
強く生きて欲しいと思う。
剣を振っても少しも揺れない胸はさて置き、シャロンにコートニーという人の事を知っているか聞いてみなければ。
「おーい、シャロン! ……うぉっ」
「あ、ヘンリーさん……って、どうしたんですか? 突然、驚いたりして」
「いや、小さい物を見た後に大きな物を見たから、ギャップが凄くてさ」
「な、何の話なんですかっ!」
「もちろん胸の話に決まっているだろ? ……っと、それよりもだ。シャロン、王宮内でコートニーって人を知らないか?」
「え?」
ユーリヤを地面に降ろしてコートニーの事を聞くと、シャロンとジェーンが顔を見合わせ、二人同時に青髪の貧乳騎士に目をやる。
「あの、主様」
「ん? どうしたジェーン……うんうん。やっぱりジェーンも素晴らしいな」
「主様。見るのは構わないのですが、人前ではお止めになった方が宜しいかと」
「んー、まぁジェーンがそう言うのなら……で、何か言いかけてなかったっけ?」
「はい。主様がお探しのコートニー様でしたら、すぐそちらに居られますよ? それに、以前お会いになられていますよ?」
「そちらに……って、まさかコートニーって、あの胸の小さな女性の事か? うーん。見た事がある様な無い様な……胸が無いのは一目瞭然なんだけどな」
シャロンとジェーンの胸を見てから、コートニーという騎士を見ると、余計に胸が小さく見えてしまう。
だが、ジェーンの言う通り、俺はあの胸を知っている気もする。
しかし、それを思い出す前に、コートニーが近寄って来た。
「ちょっと! さっきから人の事を貧乳呼ばわりして……聞こえていますのっ!」
「あ、すみません。でも、今からでも頑張れば大きくなる……かも?」
「別に大きくしたい訳ではありませんのっ! ……この失礼な男性は……あぁっ! この前の変質者っ!」
「誰が変質者だ、誰が」
「貴方に決まっていますの。私の、私の胸を激しく触ってきましたのっ!」
胸を触った? この小さな胸を? 俺が?
俺はちっぱいに興味は無いんだが……
「あ、思い出したっ! ニーナの胸が萎んだと思って、慌てて確認した時か!」
そうだ、そうだ。思い出した。確かに、あの時思いっきり触ったな。
小さいけれど、触り心地は悪くなかったんだ。
「だから、私を乳牛騎士と一緒にするなと言っていますのっ!」
「でも、ニーナの胸に質量は劣りますけど、柔らかさでは負けてませんよ?」
「……人の胸を触りながら、何を言っているんですのっ!」
「ちょっと、コートニーさん。人に向かって剣を振り下ろしたら危ないですよ?」
「私の剣を避けながら、胸を触り続けるなんて……そうまでして私の胸を触りたいんですの?」
「うん」
顔を真っ赤に染めて怒る、コートニーの乱れまくった剣を避けながら、暫くペタペタと胸を触っていると、
『ヘンリーさん。重要そうな呼び出しをしてきた相手に、それは不味いんじゃないですか?』
(あ、そうだった。完全に忘れてた)
『でしょうね。ちなみに、気付いていないでしょうが、ヘンリーさんの真似をして、ユーリヤちゃんがシャロンさんの胸をペタペタ触っていますからね?』
(何ぃっ! 俺も触りたい!)
『違うでしょっ! 一刻も早く止めて、要件を聞いてください』
アオイに怒られてしまった。
仕方なく、胸を触るのを止めて少し離れると、
「と、当然どうしたんですの?」
「あの、コートニーさん。俺に用ってなんですか?」
「何の話ですの?」
真顔で返されてしまった。
あれ? あの手紙はコートニーが出したんじゃないのか?
「いや、俺に手紙を出したでしょ?」
「手紙? どうして私が、あ、貴方みたいな変質者に手紙を出すんですの?」
「あれ? でも、これって教会による正式な文書なんですよね?」
イザベル先生から渡された封筒をコートニーに見せると、
「ど、どうして貴方がその封筒を持っているんですの!?」
「え? 俺に宛てて出したんじゃないんですか?」
「……ま、まさか、貴方がヘンリー=フォーサイス……ですの?」
「えぇ」
「魔族と戦い、フローレンス姫を助けたという、あのヘンリー=フォーサイスですの?」
「はい。そのヘンリーです」
「嘘でしょぉぉぉっ! 誰か嘘だと言って欲しいですのーっ!」
どういう訳か、コートニーがその場に崩れ落ちてしまった。
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