「ようこそマックート村へ。どうぞ、こちらへ」
領主就任パーティ当日、パーティ開始の少し前にエルフの村へ移動し、参加者をワープ・ドアの魔法で纏めて連れて来た。
ちなみに、参加者は俺の予想よりも少し多く、八人のエルフが参加している。
エルフの長老サロモンさんに、その孫のルミ。ダークエルフの長ヨセフィーナさんと、その娘のカティさん。それから、せっかくのパーティだからと、好奇心が旺盛な若い女性エルフとダークエルフが二人ずつだ。
見たところ、カティさんは人間にして二十歳くらいだし、他のエルフやダークエルフの女性たちも同じくらいなので、父さんに襲われそうなのはルミだけだろう。
一先ず、ルミをずっと傍に置いておこうと考えていると、ヨセフィーナさん譲りのランクEである大きな胸を持つカティさんが、
「お兄さん。お久しぶりー!」
可愛らしい笑顔と共に手を振ってきた。
その直後、
「へぇ。貴方……こちらの女性とはどういう関係なのかしら?」
俺のすぐ背後から、やや冷たいアタランテの声が届く。
というか、今日はパーティだからっ! そして、この人たちはゲストだから、変なマネはしないでくれっ!
ついでに言うと、俺だってこの綺麗なお姉さんが何言ってるか分からないっての! 思いっきり初対面だよっ! ……声には出さないけどさ。
『ヘンリーさん。何を仰っているんですか? カティさんにはお会いしてますよ?』
(え? どこで? こんな胸の大きな可愛い人と会った事があったっけ?)
『忘れたんですか? その時は名乗って居ませんし、今みたいなドレスではありませんが……大きな胸を真下から見上げるという、とてつもなくバカな事をしていたじゃないですか』
(あぁーっ! あの、海の家で案内してくれた、水着の巨乳お姉さんかっ! そういえば、ヨセフィーナさんの事をお母さんって呼んでいたっけ! ……パーティが終わった後で、メルヴィちゃんみたいなサービスしてくれないかな?)
アオイのフォローによってカティの事を思い出したので、アイコンタクトでアタランテには後で話すと伝え、
「お久しぶりです。海の家ではお世話になりました」
「いえいえ、こちらこそ。ルミさんやお母さんと一緒に魔族を倒してくれましたし」
一先ず挨拶を交わす。
それから、司会を申し出てくれたエリザベスが今回のパーティの趣旨を説明し、俺と父さんを皆の前へ。
事前の打ち合わせ通り先ずは俺が挨拶をして、無難に終えた後、
「えー、皆様。先程ご紹介に預かりました、マックート村の領主代行トリスタン=フォーサイスです。現在、このマックート村では基礎学校を作っている最中でして……」
父さんが今手がけている基礎学校の話を始めた。
「へぇ、学校を作るっていうのは良いじゃないか。エルフの村からそう遠くないし、この村が受け入れてくれるのなら、ダークエルフの子供を通わせてみようかねぇ」
「ありがとうございます。俺たちとしても、それは大歓迎ですよ」
学校の話にヨセフィーナさんが喰いつき、有り難い事だと感謝していると、
「イイッ! 実にイイッ! そうです! 私トリスタンに、是非お嬢様をお預けください! 誠心誠意熱心に指導し、立派なレディに育ててみせますっ!」
俺との会話を父さんが聞き、幼少期の教育の重要性について熱く語り出す。
この辺りに学校が無いから、百歩譲って教育の話をするのは良いとしても、どうして先程から生徒の対象が女の子限定なのだろうか。
女子校じゃないからね? 普通に共学だからね? あと、語りながら時折ルミをチラチラ見るのはやめような。手を出そうとしたら、流石に殴るからね?
「……私からの挨拶は、以上とさせていただきます」
挨拶にしてはかなり長い話となっていたのだが、
「良いじゃないか。ちょっと今の話、もう少し詳しく聞きたいねぇ」
思いのほかヨセフィーナさんに響いたらしいので、ノーマに言って急遽二人の席を近くに変えて貰った。
あと、追加でパメラも隣の席へ。
すると、ヨセフィーナさんとパメラがハイペースでワインを飲みだしたのだが……まぁあの一角は好きにさせておこう。
暫くルミやカティさん、若いエルフのお姉さんたちと談笑した所で、俺の隣に座るエリザベスが本題を切り出す。
「ところで、エルフの村では困っている事などはありますでしょうか?」
「ん、そうだね。近くの村だし、俺もルミには沢山世話になって、サロモンさんやカティとも知らない中じゃないしさ、何かあれば協力させてもらうよ」
エリザベスに俺も続くと、エルフたちが暫く考え、皆の考えを代表するかのように、サロモンさんが口を開く。
「そうじゃのう。我々エルフは魔法が得意なので魔物には困っておらんし、基本は菜食主義じゃし、特に食糧困難という訳でもない。強いて挙げるとすれば……」
「挙げるとすれば?」
「そろそろ次の世代のリーダーを担う者……エルフの長の血を引く者の子供が欲しいかのぉ」
俺とエリザベスとで想定していたのと、全く違う回答に戸惑っていると、
「じゃあ、る、ルミとお兄ちゃんが子供を作れば、良いんじゃないかなー?」
ルミの爆弾発言で、部屋の中の空気が一気に凍りついてしまった。
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