「何なのっ!? ヘンリー、その太くて大きいのを、どうする気なのっ!?」
「フロウ……このまま俺に貫かれてくれっ!」
「い、イヤっ! そんなに太いの、絶対に痛いじゃないっ! もっと優しくしなさいよっ!」
意外に素早い動きで、フロウに避けられたっ!
剣みたいに、このまま横に薙ぎ払いたいんだけど、これ……形が槍だし、やっぱり貫かないとダメだよな?
「待ってくれ。俺は、フロウに危害を加えたりしない」
「嘘よ! だって、こんな大きなので貫かれたら、死んじゃうわよっ!」
「大丈夫なんだ! これは、ドワーフが聖銀で作った特殊な武器だ。とりあえず、先っちょだけ……先っちょだけ刺してみよう。それで痛くなければ、残り全部を……」
そう言いながらも、ランスのように大きな槍をフロウに向かって突き出すが、軽やかに避けられる。
剣程ではないにしろ、士官学校で槍の訓練も受けていた俺の攻撃をここまで避けるなんて……フロウは実力を隠していたのか?
『そうではなくて、内部の……魔王の力ではありませんか? ヘンリーさんのやりたい事は分かりましたが、とにかく急いでください。いつ魔王が表に出てきてもおかしくない状況なんです』
(わかった。次で決める)
『ヘンリーさん。何か、王女様の意識を引き付ける……もしくは、唖然とさせる事をしてみたり、言ってみてはどうでしょうか。魔王によって身体能力が上がっているように思えますが、一方で意識は王女様が優先されているみたいですし』
なるほど。
アオイの言う事も一理ある。
フロウを唖然とさせるなら……おっぱいを揉む! かな。
『それは、怒らせるだけでは? あと、避けられると思います』
くっ……確かに。
俺の槍を避けるくらいだから、近付いて抱きしめたり、胸に顔を埋めたりっていうのも無理か。
……そうだ。これなら……唖然とさせられる事が出来るはずだ!
『何か思いつかれたんですね?』
(あぁ、任せろっ! 今度こそ、フロウを助けるんだっ!)
「フロウ! 聞いてくれ!」
「な、何よ。言っておくけど、痛いのはイヤよっ!」
「そういう事じゃないんだ。……聞いてくれ。俺は、フロウと結婚したい!」
「……え? ……ヘンリー、やっと私の想いを……」
「隙ありっ!」
予想通り、俺の突拍子もない言葉でフロウが唖然と……していなかったが、隙が出来たのは確かなので、魔力の槍で思いっきり貫いた。
すると、フロウから黒い何かが剥がれ落ち、影の中へ逃げるかのように移動しようとする。
「逃がすかっ!」
続けざまに、黒い何かへ槍を何度も突き刺し……ついに、その黒い何かが完全にフロウから離れた。
「今だっ!」
魔力の槍を手放し、すぐさま聖剣を抜くと、
「これで……終わりだぁぁぁっ!」
その黒い何かを真っ二つに斬り……消滅した。
『ヘンリーさんっ! やりましたよっ! 魔王の魔力が消えました!』
(よしっ! あとは、フロウが無事なら……えっ!?)
黒い魔力を完全に消滅させたはずなのに、フロウを見ると、顔が物凄く怒っている。
これは……あの黒い魔力がフロウから生み出されたものだという事なのか!?
怪しい魔力を消すだけではなく、フロウ自身を倒さないとダメなのか!?
そんな事を考えて居ると、
「ヘンリー。さっきの言葉はウソだったの!?」
顔を真っ赤に染めて怒るフロウが詰め寄って来る。
「ふ、フロウ?」
「聞いてくれ……って言って、話を聞いたら、槍で刺したわよね。あれは、ウソだったの!?」
「す、すまない。だが、フロウの中にある魔力だけを攻撃し、フロウの身体には傷一つ付けていないだろ?」
「そんなのどうでも良いのっ! ヘンリーは私と結婚するって言ったわよね!? あの言葉……ちゃんと責任を取りなさいっ!」
「えっ!? フロウ!?」
そう思った時には、思いっきりキスされていて……えーっと、これは魔王が俺を魅了しようとしている罠なのか?
『違うと思いますよー。とりあえず、王女様からはもう魔王の気配がありませんし』
(じゃあ、これはフロウの本心?)
『という事ですね。じゃあ、ヘンリーさんはこれから頑張ってくださいね。えーっと、貴族令嬢にドワーフの長の一人娘、エルフの英雄の子孫……そして、更に王女様ですか。いやー、大変ですねー。まぁでも、世界を救った勇者ですし、大丈夫ですよ』
……えーっと、あれ? ど、どういう事なんだーっ!?
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