英霊召喚 ~ハズレと呼ばれた召喚魔法で、過去の大賢者を召喚して史上最強~

向原 行人
向原 行人

第146話 ロリコンオジサン

公開日時: 2020年12月16日(水) 08:08
文字数:1,796

「へぇ、よく気付きましたね。僕の隠蔽魔法を見破るなんて、そこの幼女はエルフか何かですか? 人間ごときの魔力では見破れるはずなんて無いのですが」


 相変わらず俺の背中へくっついたままのユーリヤが指さす方向を見てみると、真っ黒のローブ……いや、マントに身を包んだ細身の男が立っていた。


「何者だっ!」

「教える義理はないね。けど、薄々気づいて居るんじゃないのかい? 特にそこの幼女ちゃんは」


 黒マントの男は俺――ではなく、俺の肩に顔を乗せているユーリヤだけを見ていて、他の面々に一切興味がないといった感じだ。

 おそらく、重度のロリコン野郎なのだろう。


『ヘンリーさんとは違うんですから、真面目にやってください』

(わかってるよ。冗談だ……って、誰がロリコン野郎だっ!)

『そのノリはもういいですから。ヘンリーさんも気付いているんでしょ。私が見破れない程の隠蔽魔法を使う男の正体を』

(あぁ。あの男から放たれる暗くて黒い気は、魔族だな。しかも、前に倒したオリバーとは比べ物にならない程、強い)


「にーに。あの、へんなおじちゃん……なにしてるの?」

「お、おじ……待って。僕は決してそんな歳ではない」

「そーなの? じゃあ、おじちゃんは、そこでなにしてるの?」


 見た目は三十代半ばといった感じの男が地味にダメージを受けている。

 けど、何故だろうか。

 ちょっとだけ嬉しそうにしていないか?


「いいぞ、ユーリヤ。あの魔族にはっきり言ってやれ。オッサンだと」

「おい、お前! 誰がオッサンだ! そっちの幼女ちゃんからすれば、確かに僕はおじちゃんかもしれないが、それをお前に言われる筋合いはない!」


 俺がオッサンというと真顔で怒り、ユーリヤがおじちゃんと言うと、微妙な表情を浮かべながらも、少し嬉しそうだ。

 これって、もしかして……真性かっ!


「あんた、まさか……ガチのロリコンなのか!? 魔族のくせに」

「なっ!? ち、違うぞっ! 僕はムッチムチでボンキュッボンの女が好きなんだ!」

「魔族ってとこは否定しないのな」

「……まぁ、それは事実だからな。だが僕はロリコンでは無い。そして、オッサンでもないんだっ!」

「まぁロリコンの奴は、ロリコンだって言われると必死で否定するよな」

「だから違うって言っているだろっ!」

「ふーん……ユーリヤ。前に回っておいでー。抱っこしてあげよう」


 ユーリヤが一旦俺の背中から降りて正面に回って来たので、抱きしめ立ち上がる。


「にーに! だっこだっこー!」

「だ、だから、何だと言うのだ。べ、別に羨ましくなんて……ない。羨ましくなんかないんだからなーっ!」

「あれ? おじちゃん、どこいくのー?」

「き、今日は帰るっ! いずれまた来るからなっ! 今度は、もっと強力な奴を連れて!」


 男が顔を真っ赤にして宙に舞い、そのままどこかへ飛んで行った。


「良かった。あの魔族がロリコンで本当に良かった」


 思わず安堵のため息を吐く。

 はっきり言って、サムソンとの戦いで精神をすり減らした今の状態では、魔族と戦って勝てる気が到底しない。

 何とか自ら帰るように戦意を削いだのだが、上手くいったようで本当に良かった。


『良かったです。ヘンリーさんがロリコンの方の気持ちが分かる人で』

(うぉい。だから俺は、巨乳好きでロリコンじゃないっての)

『ロリコンの人は、ロリコンだって言われると必死で否定するんですよね?』

(だから俺は、本当にロリコンじゃなーいっ!)


「にーに、どーしたの?」

「え? いや、そろそろユーリヤに降りてもらおうかなーと思って」

「えぇー! さっき、だっこしてくれるっていったのにー!」

「うっ……それはそうなんだけど、いろいろと大人の事情があってだね」

「やだー! にーにに、だっこしてもらうのー!」


 ユーリヤが正面から抱きしめてくる。……かなりの力で。


『あらあら、ユーリヤちゃんにギューってしてもらって、良かったですねー』

(ちょ、待って。痛い……折れる。骨が折れるっ!)

『幼い女の子に抱きしめられて果てるのであれば、ロリコンさんとしては本望ですよねっ!』

(だから、俺はロリコンじゃないって言ってるだろーっ!)


 力が強すぎて、俺の顔色が青色になりはじめたらしく、ジェーンがユーリヤをあやし、マーガレットに治癒魔法を使用してもらって事なきを得た俺は、一旦宮廷へと戻り、サムソンの討伐と新たな魔族を目撃した事を報告した。

 ……その魔族が、『もっと強力な奴を連れてまた来る』と捨て台詞で残した事を含めて。

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