英霊召喚 ~ハズレと呼ばれた召喚魔法で、過去の大賢者を召喚して史上最強~

向原 行人
向原 行人

第201話 シャーロット

公開日時: 2021年2月9日(火) 08:08
文字数:2,450

 パメラとのやり取りが終わった後、ユーリヤと共にシャロンの居る王宮の資料庫へ。

 お仕事中のシャロンにお願いして、領主として何をすべきかという、統治に関する資料の中から、持ち出し可能なものを集めてもらった。

 昼食を済ませてから、それを自室でずっと読んでいるのだけど……無理だ。もう何が書いてあるのかすら分からない。

 領主権? 不入権? なにそれおいしいの? ……正直言って、書かれている言葉が理解出来ないさ。


「失礼します。御主人様、お飲み物をどうぞ」

「ありがとう。ノーマ」

「それと、もうじきお時間になりますが」

「もうそんな時間なのか。じゃあ、ちょっと行ってくるよ。悪いけど、お茶の準備を頼むね」

「畏まりました」


 ノーマに淹れてもらった紅茶を飲みながら、借りてきた資料を片付けると、


「にーに。おでかけするのー?」

「あぁ。でも、お姉ちゃんを迎えに行くだけだから、すぐ帰ってくるよ」

「ユーリヤもいくのー」


 ローテーブルでお絵かきをしていたユーリヤが抱きついてきた。

 ちなみに、四六時中一緒に居ると言っていたパメラは、お昼ご飯を食べてからずっと、ゲストルームで爆睡しているそうだ。

 まぁ、俺が魔法学校へパメラが傍に居ないと苦情を入れる事は無いし、パメラだって何もせずにグータラ出来るから、この状態が双方にとってWin-Winとなる良い状態だと思う。

 ……パメラ対策に、後でもう一箱お酒を買っておこうか。


「テレポート」


 ユーリヤを抱きかかえて魔法学校の訓練室に行くと、既にソフィアが待って居た。


「お待たせ」

「べ、別に待ってなんかないわよっ!」


 そう言って、ソフィアがぷいっと顔を背ける。

 顔が赤くなっているあたり、やはり父さんに会ってくれという無茶振りに怒っているのかもしれない。

 ……って、待てよ。この制服姿のソフィアはまずくないか?

 正直、ソフィアは胸が残念で、ちょっと性格もキツめだけど、顔は可愛い。

 父さんがくいついたノーマやメリッサと同じ年齢で、その二人よりもソフィアは胸が小さい上に、学生服だ。

 魔法学校の制服姿で貧乳の女子生徒なんて、父さんに襲ってくれって言っているようなものじゃないか。

 もっと早く気付くべきだった……そうだ!


「よし、ソフィア。今から一緒に商店街へ行こう」

「え? どうして? 何か買いに行くの?」

「あぁ。ちょっと学校の制服は良くない気がするから、服を買いに行こう」

「ふーん。でも、今から仕立てていたら時間が足りないでしょ。だったら家で着替えて来るから少し時間を頂戴」

「こちらからお願いしているのに、手間を掛けさせてすまないな。とりあえず、ソフィアの家まで送るよ」


 ユーリヤを抱っこからおんぶに変え、耳元で「あわゎゎゎ……」と、よくわからない事を言い出すソフィアをお姫様抱っこすると、テレポートでソフィアの家に。

 いつも通り門の前でユーリヤと共に待とうとしていると、


「ちょっと。どうして、そんな所に立って居るのよ。アンタも一緒に来なさいよ」

「え? 良いのか?」

「良いも悪いも、これからお父様にお会いするんでしょ? だったら、その……近いうちにウチのパパにも会う事になるんだし、いずれ家にだって入るじゃない。それがちょっと早まっただけよ」


 流石ソフィアだ。

 父さんに統治の話をしてくれるだけではなく、後日実際に統治をしている父親まで紹介してくれるなんて。

 ただ、どうして父親に統治について教えて貰う話で顔を赤くしているのかは分からないが。

 あれかな? もしかして、俺の家みたいに実は恥ずかしい父親とか?

 とはいえ、感謝の気持ちでいっぱいになりながら、依然としてユーリヤをおんぶしたままソフィアの隣を歩く。

 しかし、門から屋敷まで遠いな。俺が住む事になった屋敷よりも庭が広いし、家も大きい。

 流石は王都に住む貴族という所か。


「おかえりなさいませ。ソフィアお嬢様」


 屋敷を目指して歩いていると、庭師らしき紳士たちが恭しく頭を下げる。

 しかし、俺の所はワンダ一人だけだが、ここは何人庭師が居るんだよ。

 一先ず、ぐるりと見渡しただけでも五人は居るんだが。

 ソフィアの家、凄いなー……と思いながら、ようやく屋敷に入ると、


「おかえりなさいませ。ソフィアお嬢様」

「おかえりなさいませ。ソフィアお嬢様」

「ソフィアお姉様っ! おかえりなさいっ!」


 大勢ならぶメイドさんたちの間から、可愛らしい女の子が駆けてきた。


「ロティー。お家の中で走ってはいけませんよ」

「はーい。ごめんなさーい」


 そう言って、ロティーと呼ばれた女の子が全く反省していない様子で謝っているのだが……それよりも何よりも、物凄い違和感がある。


「ソフィア。その子は、妹さんか?」

「えぇ、そうなんです。御紹介いたしますわ。こちらが私の妹、シャーロットです。さぁ、シャーロット。私の学友ヘンリーさんに御挨拶を」


 ……えーっと、今喋って居るのはソフィアだよな?

 私とか、ヘンリーさんとか、喋り方がソフィアじゃないんだが。

 何だか違和感を飛び越えて、噴き出してしまいそうだ。


「ヘンリー様。初めまして。シャーロット、十一歳です。趣味はソフィアお姉様の恋……」

「ロティー。余計な事は言わなくて良いの」


 ソフィアが目は笑っていない微笑を浮かべながら、シャーロットちゃんの口を塞ぐ。

 なんというか、こういうのが貴族なのだろうか。家の中や姉妹にすら気を使わないといけないなんて大変だな。


「えーっと、俺は……私はヘンリー=フォーサイスと申します。ソフィア……ソフィアお嬢さんとは同じ学校なんですよ。そして、こちらが……ユーリヤ。シャーロットちゃんに御挨拶しようか」

「ユーリヤ。よろしく」

「……まぁそういう訳で、今後ともよろしくお願いします」


 挨拶で「俺」って言ったら、ソフィアに物凄く睨まれてしまった。

 貴族……面倒臭いよ貴族。

 早くも帰りたくなってしまったが、一先ずソフィアが着替えてくると言うので、メイドさんの一人にゲストルームへ案内されると、


「ねぇ、ヘンリーさん。ソフィアお姉様とは、どういう関係なの?」


 何故かシャーロットちゃんが同じ部屋に入って居た。

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