ルミが口を尖らせ、意味不明な事を言ってくる。
――ルミという未来のお嫁さんが居るのに。
いや、ルミと結婚する未来なんて無いぞ?
ただし、ルミが急激にリリヤさんみたいな巨乳エロエルフに成長したら、考えても良い。
――どうして女の子と抱き合ってるの!?
誰とも抱き合っていないんだが。
今回はワープ・ドアで来たから、エリザベスとイロナは普通に立っている。
ユーリヤはおんぶだし、ラウラは小脇に抱えているだけだし、リオナはじゃれているだけだ。
というか、ユーリヤは俺の娘だが、ラウラとリオナは女の子というより、子供だからな。……もちろんルミも。
「さて、今回エルフの村へ来た要件なんだが」
「え? お兄ちゃん!? ルミの言葉は無視なの!? せめて言い訳くらいしてよっ!」
「いや、言い訳って言われても、言い訳するような事がないんだが」
「それは、堂々と浮気するっていう事っ!?」
「浮気……って、すまん。何を言っているんだ?」
ルミの言葉をよく考えてみたのだが……うん、やっぱり分からん。
「……兄たん。このエルフは誰? 浮気って?」
「あぁ、ラウラは初めて会うんだったか。この子はルミって言って、このエルフの村の長老の孫だ」
「……ふーん。で、浮気って?」
「それは何の事か分からん。とりあえず、初対面なら挨拶はしておこうか」
小脇に抱えられたままのラウラが、ルミの事をジロジロと見ているので、地面に立たせると、
「……ラウラ。兄たんの妻。よろしく」
面倒臭そうに、ペコリと頭を下げた。
まぁちゃんと挨拶しただけでも良しとしようか。
「ルミよ。お兄ちゃんが言った通り……って、ちょっと待って! 妻って何よ! お兄ちゃんは将来私と結婚するのよ!」
「……別に構わない。ただラウラちゃんは、もうすぐ挙式予定」
「なっ!? お、お兄ちゃん! どういう事なの!? この子供が言っている事は本当なの!?」
今度はルミが俺に食って掛かる。
どうして、こんなに噛みついてくるのだろうか。
「まぁ嘘ではないな。それより……」
「ど、どうしてよっ! お兄ちゃんはルミと結婚するって約束したじゃない!」
「いや、してねーよ」
「したよっ! 三年経ったら、ルミの胸が少し大きくなっているから、子供を作ってくれるって! でも、その子はルミよりも幼いじゃないっ! だったら、今のルミだって構わないって事でしょ!?」
「……すまん。マジで何を言っているんだ?」
ルミと子作りとかする訳ないだろ……と思っていると、
「ヘンリー。残念だけど、それに近い事を確かに言っていたよー」
「どういう事だ?」
「就任パーティで皆が集まった時に、今みたいな話ではないんだけど、そうとも取れるような曖昧な事を言っていたかな」
「え、マジで!?」
イロナから思いがけない話を聞く。
しかも、
「あの、ヘンリーさん。私も、そういう事を少し耳に致しましたが」
「エリザベスまでっ!? 流石に二人も言うって事は、本当……なのか!?」
イロナは時々ノリで変な事を言うけれど、絶対に嘘を吐かないであろうエリザベスにまで言われてしまった。
「……兄たん。ラウラちゃんは、兄たんに何人奥さんが居ても大丈夫。他の奥さんとも仲良くする」
いや、今そのフォローは要らないから!
「じゃあ、決まりだねー。お兄ちゃん、ルミとも子供を作ろっ!」
「……とりあえず、その話は後だ。俺たちは大事な用事があって、ダークエルフの長ヨセフィーナさんに会いたいんだ」
「いいよー。じゃあ、こっちー」
何故か上機嫌になったルミが先導し、村の奥へと進む。
ヨセフィーナさんの家まで連れてきてもらい、ノックをしようとして、ふと右手が軽すぎる事に気付いた。
あれ? 右腕にはリオナがしがみ付いていたはず……
「って、リオナが居ないっ!」
気付けば、ずっとじゃれていたリオナが居なくなっていた。
「え!? あの小さな女の子の事!? お兄ちゃん、村の中なら大丈夫だけど、村から出たら魔物に遭遇する可能性があるよ!?」
「だぁぁぁっ! 悪い! イロナ、ヨセフィーナさんに魚の事を聞いておいてくれ! エリザベス、取引については任せる! 俺はリオナを探してくる!」
「お兄ちゃん! ルミも一緒に行くー!」
「いや、ルミは村の中を熟知してるだろ? 手伝ってくれるなら、別々で探そう。あの子は、一切戦う事なんて出来ない、普通の女の子なんだっ!」
「普通……? まぁいいや。じゃあ、仕方ないね。ルミは向こうを探してくる」
ダークエルフが海の家で暮らして居た時の話を聞きに来ただけなのに、面倒な事になってしまった。
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