フローレンス様が穏やかな表情になってから、あの黒い魔力が途端に弱まって行く。
『今です! ヘンリーさん、今なら魔王を倒せますよっ!』
(いや、しかし……)
『ヘンリーさんは、女の子のおっぱいの為に、王女様を倒すのでしょう!? 今がその時ですよっ!』
確かに今なら、簡単にフローレンス様を斬る事が出来る。
しかし、先程までとは違い、フローレンス 様からは敵意が感じられない。
だが……だからといってらジェーンやマーガレットを攻撃した事に変わりはないっ!
「フロウっ!」
「なぁに? やっと私とも、してくれる気になってくれたの?」
「くっ……なんて、事だ。おっぱいの敵も、またおっぱい。俺には、おっぱいを斬る事なんて出来ない!」
フローレンス様が、優しく微笑みながら、俺に抱っこを求めるようにして両手を上げたので、目の前でDランクのおっぱいが揺れた。
こんなの、俺にどうしろって言うんだ!
『ヘンリーさん! 攻撃してくださいよっ! 見た目は王女様でも、中身は魔王なんですってば!』
(しかし、俺の目の前でおっぱいが揺れているんだ!)
『知りませんよ、そんなのっ! ……言い方を変えれば、目の前のおっぱいを倒さなけ」ば、この世界の全てのおっぱいが滅びます。良いんですかっ!?』
そんなの良い訳ない。
だけど、俺は……俺は……揺れるおっぱいを斬る事なんて出来ないっ!
『ヘンリーさんのアホーっ! 胸なんて、後でニーナさんに揉ませてもらえば良いじゃないですかっ! 王女様よりも遥かに大きくて、ムニムニしているじゃないですかっ!』
(いや、それはそうなんだけどさ……)
『小さいのが良ければ、ソフィアさんでもラウラさんでも……って、散々揉んでるでしょっ! それより早く魔王を……魔王を倒してくださいよぉぉぉっ!』
アオイが泣きそうな声で叫びだす。
でも、フローレンス様は可愛くてさ、胸も結構大きくてさ、何より俺を直属の部下にしてくれた訳で。
要は恩人であり、可愛いお姫様であるフローレンス様の身体を傷付けず、その中に居る魔王だけを倒したいんだ。
そんな魔法……知らないか?
『そんな都合の良い魔法なんてありませんよっ! 人の魔力だけを攻撃する魔法だなんて』
(だよなぁ。魔力だけを攻撃………………あれ?)
『どうされたんですか、ヘンリーさん。それより、何度も言っていますが、魔王が攻撃してこない内に……』
(違うっ! あるっ! フローレンス様を傷付けず、魔王だけを倒す手段がっ!)
『あの、先程も言いましたが、そんな都合の良い魔法なんてありませんから。そんな事よりも、早く魔王を……』
アオイの言葉を無視して、床に倒れるマーガレットの所へ。
「マーガレット、大丈夫か?」
「えぇ。よく分からないけど、急に黒い顎が消えたの。あと、あの黒い魔力に私の魔力が吸い取られたみたいで、動けないけど、別に怪我とかはしていないから」
「分かった。色々考えたが、今すぐ終わらせてくる。だから、少しだけ待っていてくれ。ジェーンも大丈夫か?」
マーガレットに続いて、座り込むジェーンに聞いてみると、
「はい、大丈夫です。主様、私も……」
「無理はするな。見ての通り、向こうに敵意は無い。すぐに……終わらせる」
立ち上がろうとしたジェーンを制し、治癒魔法をかけておく。
「マーガレット。少しだけ、借りるぞ」
床に落ちていた、マーガレットに貸していた魔力のメイス……というか、ライマーさんが作ってくれた聖剣の柄を拾い上げると、それを腰の前で構え、力を――魔力を込める。
すると、アオイの魔力が強いからか、それとも俺の魔力が多いからか。剣でもメイスでもなく、槍の形をした巨大な白い魔力の塊が柄から伸びて来た。
「フロウ! これで、俺が助けてやるっ!」
魔力で出来た巨大な白い槍を構えると、そのまま腰だめに構え……フロウに突っ込んだ。
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