砂浜に打ち寄せる波に足を入れ、ザブザブと進んで行く。
クレアに渡されたマジックアイテムを咥え、腰まで水に浸かった時には、俺にしがみ付いているラウラは、既に頭まで水の中に浸かっていた。
一先ず苦しそうではないし、大丈夫なのだろう。
背の低い順に、クレア、カティと水の中へ入って行き、最後に俺が水の中へ。
呼吸は大丈夫だ。
よし、行け……ねぇっ!
慌てて手を繋いでいたクレアを抱き寄せ、ラウラも抱えて後退し、海から出る。
「ヘンリー様? どうされました!? 何か不具合でしょうか」
「……兄たん。息出来なかった?」
「ヘンリーさん。突然引き返されましたが、大丈夫ですか?」
三人から心配されつつ、一度マジックアイテムを口から離す。
「いや、呼吸は大丈夫だ。けど、海水で目が痛いんだが。カティは魔法を使っているのだろうけど、どうしてラウラとクレアは平気なんだ!?」
「……ラウラちゃんは、ずっと目をつぶってた」
まぁラウラはそれでも良い……のか?
ドワーフの試練だと思うのだが、その本人が目を瞑ったままって。
「わ、私もヘンリー様と手を繋いでいるので、目を閉じていました」
「なるほど。じゃあ、目を開けていたのは俺だけか。俺はおっぱ……もとい、魚を捕まえないといけないから、目は瞑れないな」
「では、どういたしましょうか。今から、またマジックアイテムの開発ですか?」
せっかく出発するってなったのに、またマジックアイテムの開発を待たなくちゃいけないのは、嫌だな。
何か方法は無いか?
海中で視界を得る方法は。
『風の結界を張って入れば、万事解決だと思うのですが』
(それは嫌だ。おっぱいを触れないじゃないか!)
『そもそも、その発想が誤っているんですよっ!』
(嫌だっ! 俺はマーメイドのもろ出しおっぱい天国へ行くんだっ!)
『何なんですか、その意味不明な場所は。屋敷のお風呂で良いじゃないですか。毎晩おっぱいがいっぱいでしたよ』
(いやそれ、全員幼女だろ。俺は、ニーナクラスとまでは言わないが、普通の成人おっぱいに囲まれたい……って、待てよ。そういえば、前にあのバカ――もとい、父さんが風呂を覗くマジックアイテムを作っていたよな)
あの時は、ユーリヤの魔力で父さんを探してもらい、見事阻止したけれど、湯船の中に潜んで、女の子の裸を覗こうとしていたんだから、当然水中でも視界がクリアに保たれる仕掛けがあるハズだっ!
「この状況を打破する方法が一つだけある。皆、少しだけ待って居てくれ」
皆に断り、濡れた身体のままで父さんの開発部屋へ。
ベッドで眠る父さんを叩き起こし、
「父さん。前に使っていた、お風呂を覗くマジックアイテムがあっただろ? アレを貸してくれないか?」
「……あ? それなら、そこの棚じゃないか? ふっ……ヘンリーも、ついにこっちの道へ来たか。こうなる事を予想して、二つ作ってある。今はまだ眠いから、今晩にでも親子水入らずで覗きに行くか」
父さんが意味不明な事を言っているが、寝言は寝て言え……と言う前に寝たので良しとしよう。
「確か、こっちの棚って言っていたよな」
「……兄たん。これは? マスクみたいなのがある」
「あ、確かそんな形だったな。ありがとう……って、ラウラ!? ついて来ていたのか!?」
「……兄たんに抱きついていたら、ここに居た。それより、お風呂なんて覗かなくても、兄たんにはラウラちゃんが、いつでも見せる」
「いや、覗かないっての! というか、脱ごうとするなっ! ……って、一人で脱げないのかよ!」
ラウラが海水で濡れた水着を脱ごうとして、暫くジタバタし、
「……分かった。水着を脱がなくても、ここの部分を少しズラせば……」
「しなくて良いっての!」
「……ラウラちゃんは見られても恥ずかしいくない。遠慮しなくていい」
「遠慮じゃないっての」
何故かわざわざ俺に身体を見せようとしてくる。
「ん? 可愛らしい幼女の声が聞こえたんだが、ヘンリー以外に誰か居るのか?」
「父さんは寝てろっ!」
「ん? 何かスク水みたいな……ごふっ!」
起き上がって、こっちを見ようとしてきた父さんをベッドに沈め、手にしたマジックアイテムとラウラを連れて、クレアたちが居る場所へ戻る事にした。
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