「ソフィア、行くぞ」
「し、仕方ないわね」
テレポートでドワーフの国へ行く為、ソフィアを抱き上げると、
「きゃぁぁぁっ! お姉様ったら、大胆ーっ! やっぱりヘンリーさんとラブラブなんですねーっ!」
シャーロットちゃんが目をキラキラと輝かせて俺たちを見つめてくる。
「ち、違うのよっ! これはコイツの魔法で、仕方なく……」
「えぇー。それってつまり、お姫様抱っこしてもらいたくなる、魔法の魅力って事? お姉様にそこまで言わせるなんて……流石ヘンリーさんですっ!」
「だから、違うって言ってるでしょーっ!」
しまった。
勢いでドワーフの国へ連れて行こうとしたけど、シャーロットちゃんにテレポートの魔法が使えるのを知られるのはまずいな。
何とか誤魔化さないと。
「すまない、シャーロットちゃん。ソフィアが可愛過ぎて、今すぐ部屋に行きたいんだが、良いかな?」
「きゃぁぁぁっ! 今から!? ど、どうぞ、どうぞ。あの、シャワーとかは大丈夫ですか?」
「ちょ、ちょっとアンタ! ロティになんて事を言っているのよっ! それにロティも真に受けないでっ! 何よ、シャワーって!」
幼いシャーロットちゃんが、ソフィアと部屋に行くという事から、シャワーという言葉を出して来たけど、どうしてそんな知識があるんだ?
確か十一歳って言っていたよね?
「お姉様。頑張ってくださいね!」
「何を頑張るのよっ! 何を想像しているのか知らないけど、昼間っからそんな事する訳ないじゃない!」
「……夜だったらするんだ。まぁラウラちゃんも混ざるけど」
ラウラは余計な事を言うなっ!
というか、混ぜないし、そもそもソフィアがそんな事を許してくれる訳がないだろっ!
ソフィアも、テレポートを使う為の口実だって気付いてくれよっ!
まぁ最初に、この場でテレポートを使おうとした俺が悪いんだけどさ。
一先ず、ソフィアを抱き上げたまま部屋を出ると、
「ソフィア。部屋はどっちなんだ?」
「え……本当に行くの? あ、あっち……」
ソフィアの案内に従って移動する。
「ま、まぁ、ソフィアお嬢様……」
「なるほど。あのお方がお噂の……」
「しかし、後ろを歩く幼子は一体……?」
ソフィアの部屋を目指して移動していると、メイドさんや執事? みたいな人が、チラチラこっちを見て、何か呟いている。
いやいや、別に俺は人攫いとかじゃないからな……って、お姫様抱っこで移動しているからか。
「あのね……こ、ここが、ウチの部屋」
って、着いちゃったよ!
もう、ここまで来たんだ。
降ろして、また抱き上げ方が面倒なので、そのまま部屋の中へ。
白で統一された部屋は、綺麗に片付けられ、ゴミ一つ落ちていない。
とりあえず人目を避けるという目的は達したので、テレポートを使おうとしたら、
「あ、あのね。どうせなら、ベッドまで連れて行って欲しいな」
珍しくソフィアが可愛くお願いしてきた。
「……仕方ないな」
三人くらい寝れるんじゃないかっていう大きなベッドまで運び、その上にソフィアを降ろすと、
「じゃあ、ソフィア。準備はいいか?」
「う、うん……ウチは、いいよ」
「分かった。じゃあ、行くぞ……ストロング・ブースト」
一時的に筋力を強化する魔法を掛ける。
そして、ベッドを持ち上げると、
「テレポートっ!」
「……とーっ」
ギリギリラウラが飛び乗ったベッドと共に、ドワーフの国へと瞬間移動した。
「……は? はぁっ!? はぁぁぁっ!? アンタ、何してんの!?」
「何って、ソフィアがドワーフを見せろって言うから、ドワーフの国へ連れて来たんじゃないか。リクエスト通り、ベッドまで連れてきて」
理由は分からないが、ソフィアがベッドごとテレポートさせて欲しいというので、かつて無いダイナミックな瞬間移動になってしまった。
そのせいで、周囲に居たドワーフたちも驚いている。
「待って! ベッドまで連れて行って……っていうのは、こういう意味じゃないわよっ! 何処の世界に、ベッドを連れて行くなんて言い方をするバカが居るのよっ!」
「……残念。ここに居た。でも、旦那様はバカじゃない」
「そうだぞ、ソフィア。人に向かってバカとか言うもんじゃないぞ?」
ラウラがソフィアのベッドでゴロゴロしだしたのだが……広いベッドな上に、かなり柔らかそうだ。
もしかしたら、うちの屋敷のベッドよりも良いやつかも。
「とうっ!」
「アンタも、そっちの女の子も、ウチのベッドでゴロゴロするなーっ! ていうか、本当にアンタはバカよっ!」
「……ベッド気持ち良い。ふかふか」
何故かソフィアが怒っているが、とりあえずこのベッドは凄く寝心地が良かった。
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