英霊召喚 ~ハズレと呼ばれた召喚魔法で、過去の大賢者を召喚して史上最強~

向原 行人
向原 行人

第56話 それぞれの成果

公開日時: 2020年10月9日(金) 08:08
文字数:2,989

 授業再開の式が終わり、以前の様に教室で授業が行われる。

 一限目の授業が終わり、二限目、三限目と授業が進んで行くのだが……おかしい。どういう訳か、誰も俺の所に魔法を見てくれとやって来ない。

 俺の予想では、休憩時間になる度に沢山の女の子に囲まれ、「はっはっは。おいおい、困るよ。僕の身体は一つしか無いんだぜ」とか言ってやるつもりだったのに。

 皆、魔法学校へ通っておきながら、王宮に仕官したくないのだろうか。


『ヘンリーさんの日頃の行いのせいでは……』

(いやいや、誰よりも紳士な俺だぜ? 日頃の行いは良過ぎるくらいだろ)

『ヘンリーさん。病院へ行きましょう。一度、お医者様に診ていただいた方が……』

(ちょっと、そのマジのトーンで心配するのはやめろって。悲しくなるだろっ!)


 結局昼休みになっても俺の所にはエリーしか来ず、いつも通りエリーと一緒にお昼ご飯を済ませ、そのまま放課後に突入してしまった。


「じゃあ、エリー。また明日な」

「むー。今日はエリーの家に来てくれないのー?」

「昨日説明しただろ? 今はちょっと忙しいんだってば。でも、また明日学校で会えるし、じゃあそういう訳で」

「あ、ハー君……」


 まだ何かエリーが言いたそうだったが、忙しいのは本当なのだ。

 魔法訓練室でテレポートを使い、王宮近くの路地へ現れた。

 一応内定をもらっている訳だし、直接王宮内へ移動しても良さそうだけど、一応正門で受付を済ませてから入るという規則は守っていたりする。

 というのも、俺はフローレンス様の後押しが無ければ新米以下の立場なので、あまり調子に乗らないでおこうと。

 宮廷魔術士はともかく、騎士団側は特にこういう規律とかにうるさそうだし。

 正規の手続きを行い、ジェーンとニーナが居ると聞いた、第五訓練場へ。

 扉を少し開けて、中をこっそり覗いてみると、


「はぁっ!」(ぼよよーん)

「もっと腕をコンパクトにしてください!」

「はい、先生っ! とぉっ!」(ばぅんばぅん)

「身体の軸を意識してください!」

「こうですかっ!? たぁっ!」(ぶるんぶるん)


 部屋の中でニーナの爆乳が縦横無尽に暴れて居た。

 素晴らし……もとい、頑張ってもらいたいものだ。

 しかし、改めて見ていると、同じように剣を振るっているにも拘わらず、大きな胸が上下左右に揺れるニーナとは違い、同じく大きな胸のジェーンは揺れが小さいように思える。

 二人とも身体が大きい訳でもないのに、あの質量の胸が揺れれば、当然身体がぶれて、剣の筋もおかしくなるよな。

 二人の胸の動きを比較してようやく分かったけれど、だからと言ってこれについて俺が教えてやれる事が無い。

 さて、そろそろ顔を出すか。


「頑張っているな。ジェーン、どうだ? ニーナは」

「主様っ! そうですね。やはり胸が邪魔にならない頃に修得した身体の動かし方が馴染み過ぎてしまっていますね。これは、少々時間が掛かりそうです」

「そうか。だけど、ジェーンだって胸は大きいだろ? それなのに、どうして普通に剣を振れるんだ?」

「私の場合は、十二歳頃にマーガレット様から導かれ、それから初めて剣を手に取ったので。胸が小さい頃に剣の訓練をしていなかったのが、かえって良かったのかもしれません」


 なるほど。剣の訓練を始めるのが遅かったから、結果的に良かったというのは、ニーナにとっては皮肉な話かもしれない。


「あ、隊長さーん! ボク、頑張ってますから、もう少し待っていてくださいねー!」

「あぁ。無理し過ぎないようにな」

「では、私も指導に戻りますね」


 そう言って、ジェーンがニーナの所へ戻って行く。

 しかし、二人とも汗だくでシャツがピッタリと胸に張り付いているから、凄まじい事になっている。

 ……って、訓練が終わった後、誰かとすれ違ったら、ガン見されるよな。

 俺が見る分には良いが、俺以外の男に見られると思うと、ちょっとモヤっとするのは何だろうか。

 とりあえず、空間収納魔法でタオルを二つ取り出し、入口に置いて次の場所へと移動する事にした。


……


 さてと。いよいよ次が本番なんだが、大丈夫だろうか。

 予め打ち合わせしておいた時間となり、マーガレットから今居る場所がメッセージ魔法で伝えられた。

 どうやら街の中心、露店通りに居るらしい。

 王宮からそれほど離れていないし、人が大勢居る場所へ瞬間移動すると騒ぎになりそうなので、走って移動すると、


「あ、貴方! こっちだよ」


 アタランテの大きな声が響き、近づいて行った途端に抱きつかれる。


「あ、アタランテ?」

「半日も離れていたんだから、ちょっとくらい良いよね」

「いやいや、二人とも。そういう事は、人の居ない所でやろうよー。そうしたら、もっと過激な事もするんでしょ? 私はそっちの方が見てみたいしー」


 意味不明な事を言うマーガレットだけど、いつも通りだと思いなおし、先ずは頼んで居た買い物の確認をする。


「えっと、洞窟の攻略に必要な物だけど、あらかた買えたのか?」

「もちろん。食料や水、ランプにポーション……必要そうな物は買ったよ。けど、実は途中でマーガレットと逸れちゃったから……」

「あー、つまり、マーガレットが何を買ったのかを把握出来ていないって事か」

「うん。申し訳ない」


 アタランテが謝ってくるけれど、正直アタランテは悪く無いと思っている。

 あくまで予想だけど、マーガレットが自らアタランテを撒いたと思うんだ。


「で、マーガレットは何を買って来たの?」

「もちろん、洞窟攻略に要る物に決まってるっしょ。見て見て。これ、可愛いでしょ?」


 マーガレットが俺の目の前に差し出したのは、淡いピンク色の三角形の布だ。


「……俺の目がおかしくなったのかな? 俺にはマーガレットの持っている物が、パンツに見えるんだが」

「うん、パンツだよー。いっぱい買って来たんだー」

「……あのな、マーガレット……」

「ちょっと待って! 私の話を聞いて欲しいんだ。魔法の使えない洞窟攻略だよ? 絶対長期戦になるよね? となれば、女性にとって着替えは絶対に必須! お兄さんも、女の子は清潔な方が良いでしょ?」

「ま、まぁ、それはね」

「洞窟の中で汚れが気になったり、着替えたいという気持ちで意識が散漫になるくらいなら、最初から着替えを沢山持って行っておけば良い。そうする事で、女性が常に洞窟攻略に全力を注げる……そういう事なんだよっ!」

「そ、そうなの……か?」

「そう! 女性にとって下着は大事! 私は前もってその不安を取り除こうとしているの! 私、偉い! ね、お兄さん!」


 マーガレットの主張はどうなのだろう。

 一理あるのだろうか?

 とはいえ、マーガレットの足元にある、そこそこの大きさの木箱の中身全てがパンツなのだろうか。

 流石に買い過ぎだと思い、アタランテに意見を求めようとした所で、こっそり柔らかい物が手に押し付けられた。


「お兄さん。さぁ、それで手を打とうじゃないか」

「これは……パンツ? だが、新品のパンツなんて貰った所で……」

「分かっているさ。それは、今朝から私が履いていたパンツだよ。それなら文句ないでしょ?」

「なっ!? くっ……、分かった。女性にとって下着は大事だしな」

「でしょー! いぇーい! 可愛い下着と服げっとー!」


 あー、あの中には服も入っていたのか……って、完全にマーガレットの趣味で買い物してるよね!

 やられたと思いながらも、マーガレットが履いていたと言う白いパンツを手にしているので、残念ながら何も言う事が出来なくなってしまった。

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