二人が大量に買い、店主に運んで貰ったと言う食料や衣類やらを、人目の無い時を見計らって空間収納魔法で取り込むと、ワープ・ドアでフィオンの洞窟へ。
「洞窟の中で魔法が使えない事もあって、この洞窟の攻略は長期戦になると思われる。一先ず、ここに拠点となる小屋を作ろう」
「私と貴方の愛の巣だね?」
「愛の巣……あー、うん。まぁそうなんだけど、今回は二人っきりじゃないから」
チャンスがあれば、またアタランテと一緒にお風呂へ入りたいけれど、今回は難しいだろう。
というか、洞窟の中ではお風呂も難しいと思うのだが。
「ねぇねぇ。今言っていた愛の巣ってどういう事? 二人っきりだと何が起こるの? ねぇ、ちょっと私も混ぜてよー」
「え? 三人では未だ早いというか、先ずはノーマルが先というか……」
「そ、そうだね。マーガレットさんの参加は出来れば控えて欲しいかな」
何の話かも分からずにマーガレットが混ざろうとしてきたが、俺とアタランテが断ってしまったので、ちょっとへこみだした。
「あー、いいんだー。どうせ私なんて何の特徴も無いもんねー。アタランテちゃんみたいに猫耳でもないしー、エルフの子みたいにロリでもないしー。あーあー、私は仲間外れなんだー」
マーガレット……ちょっと面倒臭いんだけど。
だけど、これから洞窟を攻略しようというのに、メンバーがバラバラでは不味い。
俺は小さく溜息を吐くと、マーガレットに耳打ちする。
「あのな。今から俺が魔法で小屋を作るんだけど、以前そこでアタランテと……その、いろいろあったんだよ。察してくれ」
「なるほどねー。じゃあ、今回は私も混ぜてねー」
「いやそこは普通、引く所じゃないのか!?」
「なんで? 男と女が一緒に居るんだから、いろいろ起こって当たり前でしょ? あ、お兄さんが希望するなら妊娠の加護をあげるから、遠慮なく言ってねー」
混ざりたがってきたー!
というか、妊娠の加護とか怖いよ! まだ学生だよ! 責任とか取れないよ!
いや、そもそも妊娠するような事なんてしないけどさ。
『ヘタレですもんね』
(ヘタレじゃないっての! 俺は紳士なだけなんだ。そういう事は、ちゃんと恋人同士になってからするべきなんだ)
『胸を触ったり、パンツは覗いたりするのにですか?』
「さぁ、小屋を作るぞ。希望があったら言ってくれ。出来る限り応じるから」
『逃げたっ! 胸を触った事を指摘したら、話を一方的に終わらせるんなんて」
「ふむ。個室か。確かに、洞窟内で一緒に居るのだから、休憩時くらいはプライベートな空間が欲しいよな。分かった。他には?」
「ほぅ。大きなお風呂か。了解した。もう無いか?」
『えーん。ヘンリーさんが苛めるー』
(……はいはい。俺が悪かったかよ。とりあえず、小屋を作るから魔法を頼むよ)
『はーい』
一先ずアオイを宥め、前と同じ要領でマテリアライズの魔法を使い、少し広めの小屋を作成した。
「いやー、お兄さん。凄いんだねー。流石、何人も女の子をはべらせているだけはあるねー」
「まぁな……って、ちょっと待った。何だよ、女の子をはべらせているって」
「え? お兄さんはハーレムを作ろうとしているんじゃないの?」
「違うよっ! 魔王や魔族を倒そうとしているんだよっ!」
マーガレットに褒められたかと思ったら、ハーレムって。
漢のロマンではあるものの、そんなの実現出来ないっての。
『実現してると思うんですが……』
何をだよっ! アオイにツッコミつつ、今度は空間収納魔法でアタランテたちが買った木箱を取り出す。
「二人とも、四部屋作ったから好きな場所を選んでおいて。あと買った物のうち、持って行く分だけ別に分けておいて。洞窟の中では空間収納魔法が使えないから、自分たちで運ばないといけないからな」
「了解だよ。貴方は、どうするの?」
「一先ず拠点作りが終わったからルミを迎えに行ってくる。エルフが居ないと聖銀が採れないらしいしさ」
「……まぁ仕方ないね。いってらっしゃい」
一人ファッションショーを始め出したマーガレットはさておき、アタランテに見送られながら、テレポートの魔法でエルフの村へ。
……って、来たけどルミの家ってどこなんだ? 長老サロモンの家に行けば良いのだろうか。
初めてこの村へ来た時は、見張りみたいな人が居たはずだけど……っと、居たな。あの女性に聞いてみようか。
「すみません。ルミ……ちゃん、というかルミ=リーカネンの家って、どちらなんでしょうか」
「あら。失礼ですが、どちら様でしょうか? それに、どうやって村の中へ?」
「失礼しました。俺はヘンリー=フォーサイスという者で、ルミちゃんに洞窟を案内してもらう約束をしていたんですが……」
「あぁ! 貴方が伝説の魔術士様なんですね!? 話はルミから聞いています。どうぞ、こちらへ」
「ちょっと、伝説の魔術士って何ですか!?」
「え? ロストマジック――時空魔法を使われるんですよね? しかも高等魔法である召喚魔法まで」
いや、確かにアオイの力で時空魔法は使えるけれど、伝説の魔術士って。
流石にその呼ばれ方は恥ずかしいのだが。
しかし俺たち人間社会と違い、エルフの村では召喚魔法が高く評価されているらしい。
高等魔法かー。こっちは自分の力で使えるから、ちょっと嬉しいかも。
しかも、この女性は二十代前半といった感じで、出る所がしっかり出ているのに、身体は細い。
胸を覆う布と、ミニスカートみたいに短い腰布だけで、お腹や太ももを露出しまくった……正直エロエルフさんなのだが、エルフの女性はみんなこういう格好なのだろうか。
『エルフは主に精霊魔法を使うから、服の面積が小さいんじゃないですか?』
(なるほど。うちの学校の実習服の話は、エルフでも同じなのか)
『まぁ精霊を介さない私には関係の無い話ですが』
(正直、それは本当に助かる。だって俺、あんな格好したくないし)
エルフのお姉さんの太ももを見ながらついて行くと、小さな木の家に案内された。
「どうぞ。ルミはこちらに居ますよ」
「ありがとうございます」
「ルミー。お客様よー」
このお姉さんはルミと知り合いだったらしく、扉を開け、ルミを呼び出してくれた。
「はーい。どなたーって、ママ! お兄ちゃんを連れてくるなら、先に言ってよー! もぉっ、髪の毛乱れてるしー」
「あらあら、ごめんなさいねー」
いや、洞窟探索へ行くのに髪の毛とか関係ないと思うのだが……
「……って、ママ!? 今、ママって言った!?」
「うん。お兄ちゃんの隣に居るのはルミのママだけど?」
「な、なんだってー!」
予想外のルミの言葉に、思わず硬直してしまった。
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