またまたテレポートを使用し、王都の商店街へやって来た。
来たのだが、
「アンタ……まさか、ウチらへの結婚指輪を商店街で買う気なの!?」
「いや、違う。違うぞっ! この魔法は、俺が行った事がある場所にしか行けないんだよ」
「そういう事なら……じゃあ、あっちへ。前から贈ってもらうなら、これって決めていた指輪があるの」
着くなりソフィアが口を尖らせたので、とりあえず言われるがままについて行く……というか、ソフィアにガッチリ腕をホールドされているので、若干連行されている気分だ。
「……ラウラちゃんは、旦那様が買ってくれるなら、何でも良いんだけど」
「ダメよ。ウチもラウラちゃんも、領主の夫人なんだから。それなりに……って、ちなみに、どっちが第一夫人なの?」
「……じゅ、順番的には、ソフィア、ラウラ……かな?」
一応、昨日はラウラの結婚式で、ソフィアが先に俺の妻だった……という体になっているので、ソフィア、ラウラという順番で答えたのだが、どうやら正解だったらしい。
ジト目のソフィアが優しい目に戻ってくれた。
「……ご主人様。ラウラちゃんは、順番なんて気にしないから、大丈夫。でも、子供は欲しい」
ラウラは前からそういう一面があったけど、かなり子作りが好きみたいだな。
……いや、それは俺か。ラウラは純粋に子供が欲しいのか。
……うん。期待に応えるためにも、これから毎晩頑張ろう。
「ここよ」
「うぉっ……ず、随分と大きな店だな」
「当然。貴族はもちろん、王室御用達のお店だもの」
「そ、そうか」
ソフィアとラウラに両腕を抱きしめられた状態で店の前へ立つと、
「いらっしゃいませ」
身なりの良い女性に扉を開けられ、店の中へ。
「ソフィア様。本日は、どのようなご用件でしょうか」
「前に注文しておいた指輪を出してくれるかしら」
「畏まりました」
……って、既に注文していたのかよっ!
「ん? どうして、先に注文していたんだ?」
「だ、だって、ウチは何度もアンタとこういう関係になると思っていたから……それなのにアンタときたら、本当……まぁいいわ。ちゃんと幸せにしてよねっ!」
えーっと、よく分からないが、ソフィアは以前から俺の事が好きだったという事なのか!?
……その割には、一切態度に出て居なかったんだが。
それならそうと、言ってくれればもっと話が早くて、あの素晴らしい体験をもっと早く出来たのに。
『あの、ヘンリーさん。ソフィアさんは分かり易すぎるくらい、態度に出ていましたけど』
(え? どこが?)
『……まぁとりあえず、お二人が結ばれて良かったですよ。ヘンリーさんが鈍感過ぎて、本当に私はやきもきさせられていましたから』
ソフィアが分かり易く態度に出ていた?
いやいや、いつも会えば怒鳴られていた気がするんだが。
アオイの意見に若干納得出来ないものの、奥から女性が指輪を運んで来た。
シンプルで、嫌みに感じない程度に、小さな宝石が埋め込まれているプラチナの指輪……まぁソフィアが自ら決めたのだから、構わないだろう。
「……って、二つもあるのか」
「何を言っているのよ。こっちはアンタの分よ。サイズもピッタリだと思うから、着けてみて」
「あ、あぁ……確かにピッタリだが、どうして俺の指のサイズを知っていたんだ?」
「そんなの、よく一緒に居るんだから、それくらい分かる……って、何を言わせるのよっ!」
えぇぇ……今のは俺が悪いのか?
しかも、そこまで言うほど四六時中ソフィアと一緒にいたかな?
まぁ実際ピッタリなんだけどさ。
「ラウラは、どれが良いんだ?」
「……旦那様が選んでくれた物がいい」
「……んー、じゃあ、これかな? ラウラの手は小さくて、指が細いし、シンプルなのが良いかと思うんだが」
「……うん。それがいい」
「という訳で、この三つの指輪を貰おう。幾らだ?」
ソフィア、俺、ラウラの三つの指輪の合計金額を聞くと、
「ありがとうございます。こちらになります」
「……」
……いや、買えるし、買うよ?
ただ、指輪って高いんだな。
王室御用達だからか?
とりあえず、ソフィアに催促され、買ったその場で二人の左手の薬指に指輪をはめ、俺も二人揃って一つの指輪をはめられた。
さて、屋敷に……父さんに話をするか。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!