英霊召喚 ~ハズレと呼ばれた召喚魔法で、過去の大賢者を召喚して史上最強~

向原 行人
向原 行人

第164話 ダークエルフの海の家

公開日時: 2021年1月3日(日) 08:08
文字数:2,188

「えーっと……ルミ、どうなってんだ?」

「ルミに聞かれても、わかんないよー!」


 二十歳前後だと思われるダークエルフのお姉さんが、小さな小さな際どい水着で、大事な部分だけを隠した褐色の大きな胸を揺らしながら、


「お客様? いかがされました?」


 とか、尋ねてくる。

 とりあえず、俺の頭がどうかしてしまったのかと思ったのだが、ルミも困惑しているので、視界に映っているこの状況は事実なのだろう。


(アオイ……もしかして俺、ダークエルフの幻術とか、魅了とかにやられているのか?)

『いえ。目の前のエルフは何も魔法を使っていませんね。強いて言うなら、ヘンリーさんの鼻の下が伸びまくっています』

(まぁそれは仕方が無いさ。目の前に、エロい格好の褐色巨乳エルフが居るんだから)

『肌を露出した白いエルフなら、ずっと一緒に居ましたけど?』

(ルミの事か? いや、お子様に興味は無いし。せめてルミも、リリヤさんみたく胸が膨らんでいれば、まだ良かったんだけどな)


 アオイと会話をしていたら、突然ルミが抱きついてきた。


「どうしたんだ、ルミ?」

「よく分からないけど、お兄ちゃんから何だか嫌な感じがしたー」


 これは、ソフィアやコートニーと同じ、貧乳が持つ読心術がルミにも発動したのか!?

 いや、今ルミの事はいいや。

 それよりもダークエルフのお姉さんだ。


「あの、貴方はエルフ……ですよね?」

「はい、そうですよ」

「えっと、ここで何をしているんですか?」

「最初に申し上げた通り、ダークエルフの海の家です」


 可愛らしい声と共に、再びダークエルフのお姉さんが微笑んでくれるのだが、全く状況が理解出来ない。


「……すみません。海の家って何ですか?」

「あら? お兄さんとお嬢ちゃんは、街で話を聞いて来てくれたんじゃないんですか?」

「話って?」

「いえ、夜になったらフォレスト・タウンの街で、我々ダークエルフの広報部が宣伝活動を行っておりますので」

「街で宣伝活動!? 人間に向けて?」

「えぇ。大切なお客様ですし、お昼は皆さんお仕事をされているので、冒険者ギルドや夜の酒場で宣伝させていただいていますよ」


 ダークエルフのお姉さんの言葉を聞き、思わずルミと顔を見合わせる。

 エルフって森の中でひっそりと生きているんじゃないの?

 人間の街で宣伝し、自ら人間に来て貰う……って、俺の知ってるダークエルフとは全然違うんだけど。


「あの、立ち話でもなんですし、お店へ来ませんか? 今は朝の時間なので、お嬢ちゃんが一緒でも大丈夫ですよ?」

「……よ、夜の時間だと、ルミは一緒に入れないんですか?」

「そうですね。でも、お兄さんは来てくださいね。夜はちょっとお高いですが、きっとサービスに満足いただけると思いますよ」


 夜になったら、ここで何が行われているのだろうか。

 これはブライタニア王国に仕える者として、調べておくべきではないだろうか。


「お兄ちゃん。どうしてニヤニヤしているのー?」

「えっ!? に、ニヤニヤなんてしてないぞ?」

「ふーん。へぇー」


 何故だろう。

 ルミがジト目で俺を見つめてくる。

 おかしいな。任務について、真面目に考えているだけなのだが。


「と、とりあえず、お姉さんの言う通り、その海の家へ行ってみよう。ダークエルフについて話を聞かないとな」

「へぇー。そうだねー」

「お客様、二名様ご来店でーす!」


 水着のお尻部分がほぼ紐なお姉さんに着いて行き、街道からも見えていた大きな岩の反対側へ。

 そこには岩に隠れるようにして、割としっかりとした造りの家があった。


「どうぞ、こちらへ」


 言われるがままに中へ入ると、薄暗い部屋の中にテーブルとソファーが沢山並べられていた。

 だが朝早いからか、俺たち以外に客は居ないらしい。


「お嬢ちゃんは、こっちのソファー。お兄さんは、好みとかありますか?」

「好み? ……よく分からないので、任せます」

「はーい。皆良い娘ですけど、何かあったら遠慮なく申しつけてくださいねー」


 訳が分からないまま案内されたソファーに座って居ると、先程のお姉さんよりも更に大きな胸の女性が二人現れた。


「お兄さん、お嬢さん。はじめましてー! 笑顔がいっぱい、元気もいっぱい、自慢はおっぱいのメルヴィちゃんでーすっ!」

「あなたに愛をお届けします。クールビューティなトゥーリアです」

「……」


 ……あ、あまりにも唐突だったので、一瞬頭が真っ白になってしまった。

 メルヴィちゃんが俺より少し年上の十代後半といった感じの陽気な少女で、自分でクールビューティとか言っちゃうくらいに、凄く綺麗なお姉さんがトゥーリアさんだ。

 おそらく二人ともジェーンと同じくらい胸が大きいのに、露出が激し過ぎる水着姿で、メルヴィちゃんが俺の隣に、トゥーリアさんがルミの隣に腰掛ける。


「な、な、何が起こるんだ?」

「お、お兄ちゃん。どうなってるのー!?」

「あはは。二人とも、海の家は初めてなのかな? 怖がらなくても良いよー。お姉さんたちは、お喋りしにきただけだからねー。それより、お兄さんは何を飲みますー?」


 メルヴィちゃんが値段の載っていないドリンク一覧を出してきたので、とりあえずお茶を頼むと、


「ねぇお兄さん。メルヴィちゃんも、飲み物いただいても良いですかぁ?」

「え? どうぞ」

「すみませーん。こちらにブラックティーとダークカクテルお願いしまーす!」


 お店の奥から黒い服を着た男性エルフが飲み物を運んできて、メルヴィちゃんに渡すとどこかへ消えて行った。

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