「……と、まぁこういう事があったんだ。で、この五人が俺の妻という事になっている」
久々に屋敷へ戻り、ヴァロン王国遠征で同行する事になったメンバー――ドロシー、プリシラ、ヴィクトリーヌ、ラウラ――の紹介を行い、起こった事を説明した。
つまり、俺が魔族と戦う為の武器を得る為に火酒が必要な事と、成り行きで五人が妻になってしまった事を。
「よくやった! 流石は我が息子ヘンリーだ! ……こほん。私が君たち五人の義理の父、トリスタンだ。さぁ皆、お義父さんって呼んでごらん!」
凄ぇ。ニーナやクレアはともかくとして、父さんはドロシー、プリシラ、ヴィクトリーヌの三人は初対面だというのに、スルーされた。
ヴィクトリーヌは興味が無い事は無視しそうだけど、ドロシーは人懐っこいし、プリシラは真面目だというのに。
三人の反応が無かったからか、今度はラウラを凝視しだしたので、俺の身体で隠していると、
「待って! 百歩譲ってニーナとクレアは許すよ。知らない仲じゃないし。だけど、その三人は何なんだい? いきなり現れて、妻だって言われても、納得出来ないさ」
アタランテが不機嫌そうに声を上げる。
……あ、そうか。アタランテは父さんに俺の妻って自己紹介していたからな。その設定を守っているのか。
結局、あの自己紹介の後、訂正する機会も無かったし、そのまま忘れてしまっていたな。
「ヘンリー殿。あの猫耳の少女とは、どういう関係なのだ?」
「アタランテは……いや、脱線するから後で説明するよ。それより今は、これからの話をしよう」
「ヘンリー。その偉そうな獣人は、どこの誰なんだい!? あと、私は獅子だ。猫じゃない」
いや、ヴィクトリーヌたちの事はさっき紹介したよね?
ヴィクトリーヌとアタランテが互いに牽制するかのように、見つめ合っている。
あれかな? 二人とも狼耳と猫耳でケモミミが被っている事を気にしているのかな?
面倒なので二人を俺の両脇に座らせ、俺が間に入る事で壁に……って、どうして唐突にヴィクトリーヌが俺の腕に大きな胸を押し付けてくるのだろうか。
一方で、左側に座らせたアタランテも俺の腕に抱きつき、腕を胸で挟んで……
「ヘンリー隊長。話を進めて欲しいのです」
唐突にプリシラの冷たい声が響く。
プリシラは真面目だから……皆、覚えてね。
「話を戻すと、最初に話した通り武器を得る為に火酒という物が必要なんだが……パメラは知っているか?」
「知らなーい。先生は普通のお酒しか飲んでないもの」
「他に誰か聞いた事のある者は……」
まぁ居ないよな。
そもそも、ここに居るメンバーで酒を飲むのがパメラだけだし、唯一手掛かりを知って居そうなのはラウラだが、既に何も知らないと言われてしまっている。
(アオイ……も知らないよな?)
『残念ながら。私もお酒は飲まなかったので』
アオイのリアクションも予想通りだ。
どうしよう。エルフの長老にでも聞きに行くか?
「あ、あの……御主人様。以前、一緒にお酒を買いに行った酒屋さんに聞いてみてはどうでしょうか?」
「それだっ! メリッサ、偉いぞ!」
「えへへ……褒められちゃいました」
「よし。今から、メリッサと一緒に火酒について情報収集してくる。すぐに戻るから、皆このまま待機していてくれ」
そう言って、俺の両腕にしがみ付くおっぱい――もとい、ヴィクトリーヌとアタランテを思い出し、
「あと、少しだけ指示を出す。ヴィクトリーヌはラウラの護衛を頼む。アタランテは、父さんが変な事をしないか監視だ。出来るだけ早く戻る」
「え? 護衛って……ヘンリー殿。屋敷に敵でも襲ってくるのか?」
「あぁ。残念な事に、屋敷の中に変態が居るんだ。だが、相手は殺さないように頼む」
「……承知した。ラウラ殿をお守りしよう」
おっぱいが離れるのは寂しいけれど、断腸の思いで指示を出すと、二人揃って父さんに目を向ける。
変態が誰の事かは話してないんだけど……まぁ分かるか。
「よし、メリッサ。こっちへ来てくれ」
「にーに。ユーリヤはー?」
「もちろんユーリヤも一緒だ」
小走りで寄って来たメリッサを抱き寄せ、ユーリヤを抱っこすると、
「テレポート」
よく来る商店街近くの路地へ。
ユーリヤを抱っこし、メリッサの手を引いて暫く歩くと、目的の酒屋に到着した。
「いらっしゃいませ」
「店主、すまない。酒の事について教えて欲しんだが、火酒という物を聞いた事はないか?」
「火酒ですか? 生憎、ここ最近は切らしてますねぇ」
「知っているのか!?」
「え? はい。そりゃ、もちろん。酒を扱う商売をしておりますし」
メリッサの意見が的中したので、嬉しさのあまり抱きしめて頭を撫でていると、ユーリヤが羨ましそうに見つめてくる。
「にーに。ユーリヤもー!」
「はいはい。ユーリヤも可愛いなー!」
「あ、あの、御主人様……は、恥ずかしいです」
暫く二人を愛でていると、
「あの、お客様……そういう事は、御自宅でされた方が宜しいのかと」
店主が引きつった笑顔を浮かべながら、困り果てていた。
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