「むむっ!? これは……物凄く大きいが、魚なのか?」
「あぁ。信じられないかもしれないが、俺たちよりも遥かに大きい魚だ。だが、そのままの大きさでは、このドワーフの国へ運ぶ事が出来なかったので、一先ず斬らせてもらった。だが、元が大きな魚だというのは、ラウラが証言してくれるだろう」
「……うん。旦那様が斬る前は、確かに大きな魚だった」
ドワーフに聖銀を鍛えて剣にしてもらうために挑んだ三つの試験のうちの二つ目。
大きな魚を持って来いと言う試練の為、マーメイドのネレーアに協力してもらい、リヴァイアサン・フィッシュという、とてつもなく大きな魚を手に入れた。
だが今は、そんな事よりも、
「ラウラ。どうして俺の事を『旦那様』なんて呼び方をするんだ!?」
「ラウラ……そんな呼び方をするのは、少し気が早いのではないか?」
俺とラウラの父親ライマーが、ラウラの言葉へ同時に突っ込む。
「……ラウラちゃんと旦那様は、既に夫婦としての契りを交わしたから」
「な、な、な……それはつまり、まだ試練が終わって居ないというのに、孫が出来たという事なのかっ!? 娘に会ったその日に傷物にしてくれた事だけあって、手が早い……」
「出来てないっ! というか、傷物にもしてないっての!」
何だよ、夫婦の契りって。
というか、マジで幼女に興味は無いんだよ。
「……ラウラちゃん、旦那様とチューした。いつも一緒にお風呂へ入って、身体も洗いっこしてる。あと、毎晩抱き合って一緒に寝てる」
「……孫の名前は何が良いかのう。男の子ならラインハルト。女の子なら、レオナなんてどうかの?」
「待て! 色々と誤解がある。キスは人命救助の為だし、風呂はラウラ以外とも入っているし、毎晩抱き合って……って、ラウラの寝相が悪すぎるだけだろうがっ!」
急にライマーがぶつぶつ言いながら、子供の名前を挙げ始めたので、慌てて止める。
孫が出来るような行為なんて、一切していないってのに。
「しかし、今の婿殿の話からすると、理由はどうあれキスした事は事実なのであろう? ラウラ以外の女と風呂へ入ったり、一緒に寝るのは大いに結構。三人でも四人でも、そういう行為は大勢ですると良いだろう。ただし、ちゃんとラウラを満足させてやるのだぞ?」
「アンタは実の娘の前で、何を言っているんだよっ!」
「何か変な事を言ったか? 複数の妻を持つ者としては、当然の事であろう」
あ……そうか。ドワーフ族って、一夫多妻制だっけ。
だが、それにしても娘の前ではっちゃけ過ぎじゃないか?
「さて、ラウラのお腹が大きくなる前に試練を終えねばならんので、早く第三の試練に挑んでもらおう」
「ならねぇよっ! ラウラの腹が大きくなるとしたら、食べ過ぎだっ!」
「第三の試練は……既に婿殿とラウラには無用とも言えるが、最高の寝具を持って来てもらおう」
「寝具? 酒、魚ときて、寝具とは、どういう事だ?」
酒……は、まぁ分からなくもない。
神様へ奉納する御神酒というのもあると聞いた事があるし、そもそもドワーフは無類の酒好きだし。
魚も、土の中で過ごすドワーフにとっては、非常に入手困難な物だからなのだろう。
しかし、三つ目が寝具というのは、イマイチ理解出来ない。
「大地の神様は、休息……即ち寝る事を大切な事だとされている。その休息は、優れた寝具から得られるであろう。その為、ドワーフの試練では、寝具を求めるのだ」
「ふーん。そういうものなのか」
まぁドワーフ族は仕事が好きで、常に働いているというし、神様の教義とかにでもしないと、休まないのだろう。
だから、休息は大切だ……って、ラウラは寝てばかりだけどなっ!
「そうそう。言い忘れていたが、ここでいう寝具とは、ベッドの事を言う。二人以上で眠る事が出来る、大きなベッドである事が条件で、それ以外条件は無い」
「そうなのか? じゃあ、普通に店で売っているような物でも良いのか?」
「構わん……が、余りに貧相な物だと、ワシが許さぬ。そうだな……判断基準はラウラに聞くと良いだろう」
いや、大きさ以外に条件は無いって話じゃなかったのかよ。
まぁ神様に奉納するベッドだし、それなりの物じゃないとダメって事か。
何にせよ、ちょっと高い店で良さげな……ラウラが気にいるようなベッドを買えば良いんだろ?
これなら楽勝だし、すぐに終わらせて、聖剣を打ってもらうんだっ!
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