「おぉ……これは、何という上質の寝具だっ! ラウラも大いに気に入っているようだし、これにてドワーフの第三の試験を完了とするっ!」
「なんとっ! この試験を突破した人間が現れるなど、何百年振りの事かっ! ライマー様、良かったですな!」
ソフィアにドワーフを見せに来ただけなのだが、いつの間にかラウラの父、ライマーさんも来ていて、満足そうに頷いていた。
どうやら、ソフィアのベッドを第三の試練の寝具だと思っているようだが……まぁいいか。
優先すべきは、聖銀を剣にしてもらう事だからな。
後でソフィアに謝り、同じベッドを購入しよう。
「ちょ、ちょっと……このずんぐりむっくりしたオジサンは一体何なのよっ!」
「だから、この人たちが本物のドワーフだってば。ここはドワーフの国なんだからさ」
「……何度も言うけど、ラウラちゃんも本物のドワーフ」
集まってきたドワーフたちにソフィアが戸惑っているけれど、そんな事お構いなしと言った様子で、
「では、これにて我が娘ラウラとの婚姻を結ぶ為の試練を終了とする。尚、試練を突破したヘンリー=フォーサイス殿を、正式にラウラの夫とする!」
「異議なし! 新たな夫婦に祝福を!」
「おめでとう! ……ラウラちゃん、幸せになってくれよなっ!」
ライマーさんが大きな声で試練の終了を宣言し、周囲のドワーフたちが拍手したり、号泣したりし始めた。
そんな中、
「ちょ、ちょっと待ちなさいよっ! アンタ……こんな幼い女の子と婚姻って、何を考えているのよっ! 変態っ!」
「いや、さっき家でも言ったけど、本当に色々あったんだよ」
「色々って、剣を作って貰う為じゃなかったのっ!?」
ベッドの上でソフィアが騒ぎだす。
とりあえず、ドワーフたちに剣を打って貰うため、一旦ソフィアには静かにしてもらおうと思ったのだが、
「ふむ……婿殿。そちらの人間の女性は……どういう関係なのかな?」
先にライマーさんからツッコミが入ってしまった。
「関係を聞かれると……どう言えば良いんだろうな、ソフィア」
流石に、パンツを見せてもらうだけの関係とは言えず、ソフィアに尋ねてみると、
「どうしてウチに振るのよっ!」
「……旦那様からは、パンツを見せてもらう仲だと聞いている」
「ちょ……アンタっ! ウチの事を、何て説明しているのよっ!」
「……大丈夫。ラウラちゃんも、毎晩旦那様の相手をするのは大変。順番に夜を過ごす」
「何の話なのよっ!」
ラウラが割り込んできて、とんでもない事になってしまった。
「なるほど。今日は来ておらぬようだが、前に聞いた五人と同じ様に、その女性と既に婚姻関係にあったのか。ラウラは六番目の妻になると思っておったのだが、七番目の妻であったか」
「……アンタ。前の五人って何!? どういう事なのっ!?」
「いや、だから、色々とあったんだってば」
ライマーさんが、ソフィアの事まで五人――ヴィクトリーヌ、ドロシー、クレア、プリシラ、ニーナ――と同じ様に、妻だと勘違いし、ソフィアが物凄いジト目で俺を見てくる。
家に戻ったら、いくらでも説明してやるから、ソフィアは余計な事を言わないでくれないだろうか。
「そちらの女性も、以前に聞いた家族の一人として名を連ねておいて良いか? 良ければ、名前を教えてもらいたいのだが」
しかし、ライマーさんが余計な事を聞き、
「いや、ちょっと待ってくれ。ソフィアは……」
「ソフィア=ロックフェラーよ」
「って、おい! ソフィア、これはマジな奴だ。土の神様を信仰している国では、本当に俺とソフィアが夫婦になってしまうんだぞ!?」
「……べ、別に良いわよっ! な、何か文句があるのっ!?」
どういう訳かソフィアが暴走する。
いや、ソフィアはドワーフの事を舐め過ぎじゃないか?
そういう意味では、先の五人も似た所があるので強く言えないが。
「ライマーさん、待ってくれ。ソフィアは……」
「うむ。婿殿の六人目の妻として、記入しておいた。さぁ、皆の者! これより、ヘンリー殿と我が娘ラウラの結婚式を行う! 盛大に祝ってくれ!」
「おめでとーっ! 幸せになっ!」
俺の言葉が掻き消される勢いで、結婚式の話が突如出てきて、前の試練で俺が持ってきた火酒が運ばれて来た。
「さぁ、婿殿。ドワーフの一族になるのだ。ぐっと行くが良い」
「いや、俺は酒なんて飲まな……お、おぃっ!」
「婿殿が持ってきた肴もあるぞっ! 保存食として加工しているが、酒に合うぞ」
俺は酒なんて飲まないし、飲んだ事も……だが気付いた時には、魚の話を聞いた所で俺の記憶が途切れてしまっていた。
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