「え、えっと、ハー君。とりあえず、エリーの実習服を着てもらったけど、これで良かったのかな?」
「ん? あぁ、とりあえずジェーンが裸でなければ……」
「あ、主様! どうされたのですか!? どうして私を見た途端に、鼻から盛大に血をっ!?」
だ、ダメだ。
全裸だったジェーンがエリーの実習着を着たものの、元より面積の少ない服なのに、その上エリーよりもジェーンの方が胸が大きいから、その豊満な膨らみに押し上げられて、普通に下胸が見えているし、短すぎるスカートから見えてはいけない場所がチラチラと……あぁぁぁ逆に全裸よりエロくなってるよっ!
『なるほど。ヘンリーさんは、チラリズムに弱い……っと』
そんな事は覚えなくて良い! とアオイにツッコミつつ、慌てて俺のローブをジェーンに羽織らせる。
「……ジェーン。とりあえず、ちゃんとした服を入手するまで、そのローブを外すのは禁止な。前もしっかり押さえて、中が見えないようにする事」
「分かりました。しかし、主様。この防御姿勢にはどういう効果があるのでしょうか? 上等ではありますが、ただの布では大した防御力は無いと思うのですが」
「防御力とかじゃないから。歩く凶器というか、破壊力抜群のそれを隠す為だよ」
「凶器……ですか? 私の剣は、どこかへ行ってしまい、今手元には無いのですが」
「いや、そういう意味の凶器じゃなくて、おっ……いや、何でも無い。とにかく、ローブで身体を隠しておく事」
改めて言うと、それ以上は質問せずにジェーンが身体を隠す。
基本的に俺の命令を聞くらしいのだが、この様子だと色々と教えなければならない事も多そうだ。
「いいなぁ、ハー君のローブ。エリーも着たいなー」
「いや、エリーは自分のローブがあるだろ……って、どうして突然服を脱ぎ出すんだっ!?」
「だって、服を脱いだらハー君にローブを羽織らせて貰えるんでしょ?」
意味不明な事を言うエリーに突っ込み、一先ず服を脱ぐのを止めさせる。
もちろん俺だって女の子の身体に興味はあるが、それでも一応常識と理性はあるつもりだ。
だが今ここでエリーにまで全裸になられたら、その理性が一瞬で吹き飛び、残りの学生生活が大変な事になる様子が目に浮かぶ。
「エリー。とりあえず、このジェーンが基礎魔法チームの三人目のメンバーだ。二人とも、仲良くな」
「うん。だって、ジェーンちゃんはエリーとハー君の子供だもん。当然だよっ!」
「主様。主様の奥方様ですので、当然私は従います。以後、よろしくお願いいたします」
いや、俺とエリーの子供っていう表現は問題が有り過ぎるんだが。
それとジェーンも、エリーを奥方って呼ぶのは……いや、毎回指摘していたら大変だから、魔法大会が終わってから改めて訂正するか。
大会中は、エリーの指示にも従って貰う事だってあるだろうし、互いにこのままの方が都合が良いかもしれない。
「さてと。新たにジェーンが加わった訳だけど、とにもかくにも先ずはジェーンの服を調達しないとな。エリー、何か要らない私服とかって無いか?」
「うーん。家に着なくなった服が有るには有るけど……」
「頼む。それをジェーンに譲ってくれないか? なんだったら、俺が買い取るって形でも良い。ただ、あんまりお金はないけどさ」
「ううん。お金は別に良いんだよー。エリーの服くらい、いくらでもあげるんだけど……今ここには無くて、家にあるんだよね」
「まぁ、それはそうだろうな。だから、明日学校へ持って来てくれれば良いよ。今日はとりあえずこの格好で我慢してもらって……って、しまった! どうしよう。ジェーンは俺の寮に連れて行けない!」
アオイは誰にも姿が見えず、その声は俺以外に聞こえていないから、寮の俺の部屋で過ごしても全く問題がないけれど、ジェーンは違う。
現に触れば餅みたいに柔らかくて、その身体は見るだけでも鼻血が出てしまう程のエロ美少女なのだ。
寮へ――騎士候補生の男子寮へ連れて行くのはリスクが高過ぎる。
「ハー君、待って。ジェーンちゃんはエリーの子供でもあるんだから、エリーのお家に来れば良いんだよー」
「……いや、正直男子寮へ連れて行くよりは良いんだが、大丈夫なのか?」
「もちろん。お母さんもきっと喜ぶよー」
「ま、まぁ魂は俺が召喚したものの、身体はエリーが製造したホムンクルスが元だからな」
「じゃあ、そういう訳で、ジェーンちゃん。早速ママと一緒にお家へ帰ろうねー」
いや、ママって。それに、どう見ても――背丈も胸の膨らみも、エリーよりジェーンの方が大きいのだが。
しかし、いろいろとツッコミ所はあるけれど、エリーに任せておこうとしたのだが、何故かジェーンが動こうとしない。
「ジェーン、どうしたんだ?」
「主様。私は主様をお守りするために、この世界に生を受けました。奥方様にも感謝はしているのですが、それでも優先すべきは奥方様よりも主様なのです」
「え? それは、つまり……俺と一緒に居るって事か?」
「はい。私は、いつも主様の傍に居るのが務めなのです」
マジかよ、どうしよう。
忠誠を誓ってくれるのは構わないのだが、元が騎士だからか、ジェーンは融通が効かないらしい。
とりあえず、さっきのプランを変更して、服屋でジェーンの服を探して、どうにかして寮に連れ込んで、朝見つからない様に寮を出れば良いのか。
結構大変だな。それに、よくよく考えたら、俺に女性物の服なんて選べないから、エリーにもついて来て貰った方が良いかもしれない。
無茶をお願いする事になるが、付き合ってもらうしかないかと思った所で、突然エリーが顔を輝かせる。
「わかったー! だったらハー君も一緒に、エリーのお家へ来れば良いと思うのー」
「……え? 俺が? エリーの家に?」
「うん。大きな家じゃないけど、二人くらいなら大丈夫だよー。決まりー! じゃあ、ハー君もジェーンちゃんも、エリーのお家へ行こー!」
「いや、行こー! って、そんな軽いノリで良いのか!? 俺、男だぞ? それに家の都合だってあるだろうし」
「ん? ハー君が男の子なのは当然だよね? 女の子だって言われたらビックリしちゃうよー。あと、家は大丈夫、大丈夫。何とかなるよー」
いや、そういう意味ではないのだが、エリーはちゃんと理解しているのだろうか。
少なくとも俺は、女の子の家に行くなんて大イベントは初体験だ。一体、何をどうすれば良いのかサッパリ分からないのだが。
いろいろと不安を覚えつつも、俺とジェーンは、学校から少し離れた場所にあるエリーの家に案内されてしまった。
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