「ドワーフがどういう種族か知っているのか!? 酒と鉱物にしか興味が無く、年中土の中で暮らすような奴らだぞっ!?」
「えぇ。そのドワーフに用事があるんです。今は、このピュイード火山の地下に居るんですよね?」
「それは……確かにそうだと聞いている。まさか、会いに行くのか!?」
何故かドワーフに対して嫌悪感を示すヴィクトリーヌに、二つ返事で「もちろん」と答えると、物凄く嫌そうな顔を向けられる。
「くっ……せめて、ジャンの代わりとなる監視役が見つかるまでは待てないのか?」
「無理です。我々も国の任務として来ている以上、無駄な時間を過ごす訳にはいかないので」
「ぐぬぬ……」
「ドワーフの王国への入口は知ってます? 知らないなら、こっちで調べるけど」
「……知っている。ついて来い」
ヴィクトリーヌが、苦虫を噛みつぶしたような表情から何かを諦めたような表情に変わり、俺たちを先導する。
何があるのかは知らないが、流石に他国の正規の騎士隊に嘘を教えないだろうし、信じてついて行くと、街から大きく離れた場所に、どうにか人が通れる程のほら穴があった。
「……ここが、ドワーフの王国への入口だ」
「ふむ。いかにもって感じの洞窟だな」
「えぇ。この横幅は広いのに、高さは低い所がドワーフって感じなのです」
洞窟は、横に四人くらい並べる程の幅があるのに、この中で一番背の高い俺はもちろん、女性としては普通の身長であるニーナやプリシラにヴィクトリーヌも、少しかがむくらいに、高さが無い。
背の低いドロシーとクレア、そしてユーリヤは普通に歩けるが、これはキツいな。
一先ずドロシーを先頭に、洞窟の中へ入ると、プリシラが神聖魔法で早速明かりを灯す。
「これは腰を痛めそうだな」
「そ、それは一大事ですっ! ヘンリー様の大事な腰がっ!」
後ろを歩くクレアが、腰を優しく撫でてくれるのだが、それはもう少し後で……実際に腰を痛めてからお願いしたい。
途中で現れた魔物はドロシーやプリシラに任せて暫く歩いていると、ようやく真っ直ぐに立てる程の場所に出た。
「ふぅ。やっと普通に歩けるな。……で、ここがドワーフの国なのか?」
「何を言っているんだ? そんな訳がないだろう。ここはドワーフが作ったダンジョンだ」
「ダンジョン? どういう事だ?」
「そのままの意味だ。奴らは気に入った場所に、土や石を使ったダンジョンを作る。外部からの侵入を防ぎ、採掘や鉱物の加工に専念するためにな」
「そうなのか。ちなみに、そのダンジョンを無視して、石の壁をぶち抜いて行ってはダメなのか?」
「やめておけ。仮にも石や鉱物に掛けては、右に出る者が居ない種族だ。下手な事をしたら崩落させるくらいの罠を、仕掛けているかもしれん」
ドワーフの国へ侵攻する訳ではないので、あくまで立ち塞がる壁を壊すだけなのだが……ヴィクトリーヌの言う通り、どんな仕掛けがあるかは分からない。
ドワーフと言えば、鍛冶と細工に優れているからな。
俺とユーリヤだけならともかく、崩落なんて起こったら、他のメンバーが命の危機に陥ってしまう。
「仕方が無い。じゃあ、ここからは地道にダンジョンを突破するか」
「はいっ! 頑張るッス」
「……はぁ。やっぱりこうなるか……」
ヴィクトリーヌがドワーフと聞いて嫌そうな顔をしていたのは、このダンジョンの事を知って居たからか。
先日踏破したオークの巣は単純だったけど、ここはドワーフたちによる人工のダンジョンだ。
かつて聖銀を手に入れた、エルフの作ったダンジョンみたく、罠が沢山仕掛けられていると考えた方が良いだろう。
……って、この中にあのダンジョンへ一緒に行ったメンバーが一人も居ない!
しかも、呪いや状態異常に強いマーガレットも居ないけど、大丈夫だろうか。
はっきり言って、俺は幻覚とか催眠の類には弱いぞ?
前もルミのちっぱいに顔面ダイブしかけて……って、ダメだぞ! 可愛いユーリヤの胸にダイブなんてさせるなよ!? 絶対、絶対にさせるなよっ!?
「じゃあ、隊列を変えよう。先頭は俺とドロシーだ。次にユーリヤとクレア。最後尾はニーナとプリシラに任せる。後ろからの奇襲も十二分に有り得るので、気を付けるように」
「了解だよっ!」
「了解なのですっ!」
ニーナとプリシラの返事を聞き、早速ダンジョンの中へ。
ちなみに、ヴィクトリーヌはどこでも自由に……と伝えると、俺やドロシーと並んで先頭を位置取った。ダンジョンを嫌がっていたけれど、それ以上に何事も自分で決めたいタイプなのだろうか。
一先ず、エルフのダンジョンと同様に、分岐路へ差し掛かる度に具現化魔法で剣を生み出し、進んだ道が分かるように地面へ突き刺して行く。
時折現れる魔物を薙ぎ倒し、どこからともなく飛んで来た矢を防ぐ。
しかし、遭遇する魔物は弱いのだが、段々暑くなってきているのは気のせいだろうか。
ドワーフがどういう風にダンジョンを作っているのかは知らないが、空気はちゃんとある。
にも関わらず、こうも暑いのは何故だ!?
だがドロシーは平然としているし、暑いと思っているのは俺だけなのか!?
……チラッと後ろを見てみると、ニーナやプリシラがかなり汗をかいており、服が濡れて大きな胸が透けて見えている!
そして意外な事に、
「も、もう……無理ぃ」
一番最初に音を上げたのは、ヴィクトリーヌだった。
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