英霊召喚 ~ハズレと呼ばれた召喚魔法で、過去の大賢者を召喚して史上最強~

向原 行人
向原 行人

第131話 貧乳四天王

公開日時: 2020年12月1日(火) 08:08
文字数:2,380

 完璧な作戦だと思ったのに、思わぬ所に落とし穴があった。

 見た目は、ちょっと小柄な男性騎士なのだが、喋ると思いっきり女性だとバレてしまう。

 そして既に教会が来ており、残された手段は女性の声だけどジェーンを俺だと言い張るか、俺がそのまま出て行って戦闘能力の一点突破を図るかのどちらかだ。

 後者の場合、戦闘能力については全く心配していないが、コートニーの話だと戦闘能力は重視していないらしい。

 あー、やっぱり改めて考えてみても前者の方が良いな。


(アオイ。女性の声を男性の声に変える魔法とかって無いか?)

『ヘンリーさん。無茶苦茶な事を言いますね。そんな魔法ありませんよ』

(そこを何とか)

『そんな事を言われましても……あ。要はジェーンさんの声が男性の声みたいになれば良いんですよね?』

(お、何かそういう魔法を思い出した? 流石、アオイ先生! いやー、流石です)

『いえ、声を変える魔法なんてありませんが、声を変える方法に心当たりがあります』

(何でも良いから、やってくれ。頼むよ)

『それは構わないのですが、ちょっと高度な魔法を高精度にコントロールしなければならないので、集中させてください』


 瞬間移動や時間を操作する魔法をほいほい使うアオイが集中しなければならないとは、一体どういう魔法なのだろうか。

 声を変えるのだから、何となく風系統の魔法な気がするんだけど、精霊魔法や元素魔法をアオイが高度と表現した事は無い気がする。

 そういえば、精霊魔法と言えばルミとソフィアなのだが、コートニーも氷の魔法――つまり水の精霊魔法を使っていたな。

 ……改めて考えてみると、俺の周囲では精霊魔法を使う女性が全員ちっぱいなのだが、これは偶然なのだろうか。

 それとも精霊魔法を使う者は、貧乳の加護があったりするのだろうか。

 だとしたら、元素魔法を使うアオイはどちらなのだろう。

 精霊の力は借りていないけど精霊魔法と同等の魔法が使えるし、ジェーンの胸を羨ましいと言っていた事から、やっぱりアオイも貧乳なのだろうか。

 仮にそうだとしたら、貧乳四天王か!?


『……ヘンリーさん。集中させて欲しいって言いましたよね? 変な事を考えるのはやめて貰えませんか?』

(ごめん。いや、まじでごめん。そういや、考えている事がアオイに筒抜けだったんだよな)

『えぇ。何も考えずに、無の状態で居てください。ヘンリーさん程の武術の達人でしたら、それくらい出来ますよね?』


 くっ……まさかアオイからこんな挑発を受けるとは。

 しかし、ジェーンの声を変えて貰わないと困るし、安い挑発ではあるが、乗ってやろうじゃないか。

 無だろ、無。

 何も考えず、頭の中を空っぽにするんだ。

 無……無……無。

 あ、この「無」っていう事すら考えちゃダメなんだな。

 むむむ……無とは……そうだ。無と言えば、コートニーの胸だ。

 ちっぱいこそが無の象徴であり、無なんだ。

 ちっぱい、ちっぱい、ちっぱい……おぉ、ちっぱいの事だけを考えていたら雑念が消え、心が洗われていくかのようだ。


『……ちっぱい、ちっぱいと全く無になっていませんが、一先ず魔力の制御が出来そうです。ジェーンさんの鉄仮面に向かって、この魔法を使ってください――』

「グラビティ!」


 アオイに言われた魔法を発動させると、鉄仮面の口元を黒い光が覆う。

 この黒い……というか、闇色の正体は何なのだろうか。

 その答えをアオイに聞くより早くジェーンが口を開き、


「主様。今の魔法は何でしょうか?」

「おぉっ! 成功だ。ジェーンの声が低くなった」

「え? そうなんですか? 確かに、若干違和感はありますが」

「あぁ。その声なら、男性の声と言われれば、まぁそうかと納得出来るレベルだ。いける、いけるぞっ!」


 見事に声が変わっていた。


『ふぅ……成功して良かったです。それよりヘンリーさん! 精霊魔法を使う人でも胸の大きな人は居ましたよ! あと、誰が貧乳四天王ですかっ! わ、私は貧乳ではありませんからっ!」

(悪い悪い。そんなにムキになって否定しなくても良いからさ)

『だ、誰がムキになっているんですかっ! 私は冷静に事実を言っているだけですっ!』

(まぁそういう事にしておこうか。それより、精霊魔法を使う人で、胸の大きな人って誰か居たっけ?)

『沢山居ますよ。学校の魔法大会で対戦した女子生徒さんたちや、ルミさんのお母さんとか』

(魔法大会で対戦した……っていうのはあんまり記憶にないけど、リリヤさんは確かに胸が大きいな。魔法を使っている所は見た事がないけれど、エルフだし、精霊魔法は使えるだろうな)

『でしょう。ですから、私が貧乳などという誤った認識は持たないでくださいっ!』

(いや、それはもう済んだ話なんだけど……それより、ジェーンの声を変えた魔法ってどういう魔法なんだ? 風系統の魔法ではな無いように思えたけど)

『あぁ、グラビティですか。いいでしょう、説明して差し上げます。あの魔法は声を変える魔法ではなく、重力――つまり重さを変える魔法なんです。今回はそれをアレンジしたのですが、そもそも声の高さがどのように変わるかから説明しますと……』


 アオイがムキになるので、ちっぱい認定してしまったせいか、その反撃と言わんばかりに延々と声の変え方について説明をされてしまった。

 要は、ジェーンが発する声を伝える空気だけ、周囲の空気よりも重くする事によって、低く聞こえるらしい。

 正直、どういう理屈でそうなるのかを長々と説明されたけど、全く理解出来なかったが。


「……ひ、一先ずジェーンさんをヘンリー殿として、教会と対峙するしかありませんの。腹を括るしか無いみたいですの」

「主様のため、このジェーン=ダーク、全力を尽くして参ります」

「コートニーさん、ジェーンを頼みます。ジェーン、任せたぞ」


 ジェーンの男装の精度がより向上したからか、先程よりかは若干余裕が出て来たコートニーが、ジェーンを連れて部屋を出て行った。

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