ロレッタちゃんの家を出ると、瞬間移動ですぐさまエリーの家へ行き、お母さんへ事情を説明すると、
「……ついにこの時が来たのね。いつかは、この日が来るって覚悟はしていたけれど、少し早かったわね」
「お母さん? 何の話なのー?」
「エリー。これを持って行きなさい」
「お母さん? これはー?」
「お母さんがおばあちゃんから貰ったネックレスなの。エリーに嫁入り道具として持たせるから、大事にしてね」
何だか話が大きく捻じ曲がっている気がする。
エリーは、うちの村で学校の先生……というか、保母さん? みたいな事をしてもらおうと思っているんだけど、お母さんの解釈が変じゃ無いか?
「エリー。お母さんは大丈夫だから、行ってきなさい。けど、そうね。年に二回くらいは帰ってきて欲しいかな」
「あの、エリーのお母さん。もっと頻繁に帰ってもらっても大丈夫なんですが」
「ヘンリー君。気を使わなくても大丈夫よ。ただ、子供が産まれたら、顔を見せに来て欲しいかな。でも、私ももうすぐ、おばあちゃんになるのねー」
「いや、お母さん? 何か色々と誤解してますよね!?」
お母さんの誤解を解いてもらおうと、エリーに目配せをすると、
「そうだよー。お母さんったらー。ハー君とエリーの子供なら、もう居るじゃない」
「あら……そういう事なのね。大変! じゃあ、色々と準備が必要ね。とりあえず、お父さんに連絡して帰って来てもらって……」
何故か悪い方向に加速されてしまった。
「エリー!? な、何を言っているんだ……って、あれか。エリーが言っているのはジェーンたちの事か」
「そうだよー。だって、ハー君とエリーの魔力を混ぜて産まれたんだもん。ハー君とエリーの二人の子供だよー」
「あ、ジェーンちゃんの事ね。じゃあ、未だエリーの中に子供が居る訳じゃないのね」
毎度の事ながら、物凄く誤解をまねくエリーの言い方なんだけど、そこから説明を繰り返し、何とか正確に伝わった……と思う。
それから了承を得たので、翌朝に学校へ行き、ポピー、ロレッタちゃん、エリーの三人と共に村へ行く事になったと学長に伝えた後、
「じゃあ、今から三人には俺が領主をしている村へ移動してもらう」
「あの、ヘンリー君。村へ移動してもうって言いながら、どうして魔法訓練室に来たの?」
「あー、ロレッタちゃんとポピーは、実際に体験した方が早いかな」
魔法訓練室でワープ・ドアの魔法を使おうとした所で、エリーが抱きついてきた。
これはテレポートを使えって事か?
「え!? エリーちゃん!? わ、私たちの前で、そんな事始めちゃうの!?」
「ん? よく分かんないけど、ロレッタちゃんも、ポピーちゃんも、ハー君に抱きついてー」
「い、いいの!? だって、ヘンリー君とエリーちゃんはそういう関係だけど……」
ほら、エリーがちゃんと説明しないから、ロレッタちゃんが変な勘違いをしているじゃないか。
「ロレッタちゃん。私たちは既にヘンリー様のものだから、遅いか早いかの違いだけ。ほら、私たちもエリーちゃんみたいに……ね」
「ポピーちゃん!? 順応が早過ぎませんかっ!?」
エリーの言葉でポピーが俺に抱きつき、仕方ないと言った様子でロレッタちゃんも抱きつこうとしている。
しかし、そもそもエリーの暴走って感じが否めないんだが、俺の右側からエリーが抱きつき、左側にポピーが。俺の背中にはユーリアが居るから、正面しか空いて居ない。
「お、遅いか、早いかの違い……そ、それで、これから何をするの!?」
ロレッタちゃんはエリーよりも小柄なので、俺の胸に顔を埋める形で抱きついている。
「いや、別に抱きつく必要は……いや、何でもない。……テレポート」
そのため、既に俺の屋敷に着き、エリーとポピーは離れているのだが、
「ヘンリー君? するなら早く……私の覚悟が揺らがないうちに、お願いします」
ぎゅっと俺に抱きつき、顔を埋めたままなのでロレッタちゃんだけ気付いていない。
「いや、もう終わったんだけど」
「え? でも、まだ抱き締められる事すら未だ……って、え!? ここは、どこなの!?」
「あー、ここが、俺の今の家なんだ。……ようこそ、マックート村へ」
「え? えぇ!? 一体何が起こったの!?」
「まぁ、そのうち説明するよ」
マックート村に、新たな住人が三人増える事となった。
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