私、ルストが、西方辺境から出立し、ブレンデッドの街へと戻るための7日間の行程のさなか、中央首都オルレアではある大規模会議が開かれようとしていた。
大規模会議の開催主は、上級候族の中でも最上級格の十三家のうちの一つ。序列2位の【モーデンハイム家】
そしてその会議の発起人は、モーデンハイム家前当主〝ユーダイム・フォン・モーデンハイム〟その人だった。
すなわち、私・ルストの祖父だった人物である。
彼はある人物を糾弾するためにこの会議を、大規模親族会議を開いたのだ。
今こそ公正なる裁きが下されようとしていた。
† † †
中央首都オルレア、フェンデリオルと言う国の中枢部がある大都市。
その南方地区はその国の上流階級が邸宅を連ねている区画だ。
そして、その中の一角には国を代表する上流階級である『十三上級候族』が覇を競っている。
上級候族の中でも特に家格の高い十三家があり、その国の重職はほぼこれらの家系により締められていると言って過言ではない。
そして、十三上級候族の中でも序列2位に位置するのが、有数の軍閥候族として知られる『モーデンハイム家』だった。
250年前の独立戦争当時から最前線にて武功を積み重ね、軍内部の重職にその家系の人間を多数輩出していた。当然ながらその発言力は絶大であり、彼らの言葉一つで下級候族当主の首が飛ぶとも言われている。
中央首都オルレアの南部地区の有数の一等地に、彼らの本邸宅はあった。
あまりに巨大な敷地、その入口から最も奥のところに一つの神殿がある。フェンデリオル民族の信仰の要である四大精霊信仰を支える礼拝神殿だ。
表向きは。
だが、実際にはその内部は一種の会議場として作られていた。
通常の礼拝席がならぶ広間の奥に祭壇がある。その配置は一般的なものだ。だが、ある案件のときにはその内部はガラリと様相を変える。
中央広間からは礼拝席は撤去され、その広間を左右から囲むように雛壇席が設けられる。普段は変哲のない壁として偽装されているが、その内部に階段状の3段の座席が収納されており、素早く展開できるようになっている。
邸宅の使用人たちの手により、またたく間にその礼拝堂は会議場へと姿を変えた。
そして、その礼拝神殿を警護するのは有数の職業傭兵たちだ。
5つあるとされる職業傭兵の階級、その中でも準1級以上の優秀な者たちだけが100名ほど集められた。その彼らの厳重な警護のもとに、早朝から会議場へと参加者が集まってくる。
モーデンハイム家一族の、分家当主ならびに家督継承予定者たちだ。
一族の中でも最も重要な出来事についての採決を議論する際に、現当主単独、または前当主単独、あるいは会議参加資格を持つ分家当主ならびに家督継承予定者たち5名以上の連名による招集要求により、参加資格者たちは集められる。
その会議の名は――
【モーデンハイム家大規模親族会議】
それは国政にすら影響を与えるきわめて重要な討論の場だったのである。
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