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西方平原入り口付近となる平地。
そこに私達は布陣していた。前方にトルネデアスからの侵略軍、後方にワルアイユ領の信託統治委任強制執行部隊、その2者により挟撃されるはずだったのだが――
「ご覧ください、指揮官殿」
私の傍らで声をかけてきたのはゴアズさんだ。
「正規軍人と職業傭兵の部隊がこちらへとやってきますよ」
そう語ればドルスさんが――
「どう見ても強制執行の突撃ってわけじゃねえな」
そのボヤキにカークさんが――
「あぁ、アレはどう見てもこっちに参集しようとしてるぜ」
その時、通信師のラメノさんが言う。
「ルスト指揮官! 正規軍人から入感です!」
「話しなさい」
「はい、『我ら、西方司令部所属正規軍人部隊140名、職業傭兵340名、西方国境防衛線に参集し合流する』――とのよし」
「了解! 歓迎すると伝えてください」
「分かりました。打伝します!」
ラメノさんが、私にそう返答した後に、早速に返信を打伝する。
通信用の精術道具により念話の思念を増幅・信号化し、それぞれの通信精術道具に割り振られた個別番号をキーにして送信する。すると相手は通信精術道具からのシグナルをうけて念話の思念を受信すると言う仕組みだ。
ちなみに通信師の念話通信には、番号指定による双方向と、番号無指定の一方向、さらには通信師でない不特定多数を含めて念話を送り出す無差別放送の3つがある。当然、状況に応じて使い分ける。
「通信完了しました」
「ご苦労さまです、指示あるまで待機してください」
「了解です」
通信のやり取りを終えた頃には、ワルアイユの市民義勇兵のみんなにも、正規軍人と職業傭兵たちの参集合流の話は広がっていた。一気に戦力が増えるのみならず、この戦いが正当なるものであると承認されたと言う事実は皆の士気をもり立ててくれていた。
メルゼム村長が言う。
「やりましたね」
アルセラが言う。
「これで安心して戦えます!」
私はそれへと答えた。
「えぇ、やっとこれで〝始められる〟わ」
自分の胸の中に猛る気持ちが湧いてくるのがわかる。どうしようもない位に奮い立ってくる。背後の憂いは解消された。そうまさに――
「決戦の刻ですな」
――パックさんの声が響く。
誰ともなくその言葉に皆が頷いていたのだ。
まずは、前方の侵略者たちの方だ。
通信師の少女が告げる。
「指揮官!」
「話しなさい」
「はい! 物見台より打伝――トルネデアス侵略軍、陣容再編成開始、進軍再開の準備に入ったそうです」
「了解。監視を継続するように伝えてください」
「了解、打伝します」
再度、物見台へと返信させる。
「やっぱりね。諦めていないわ」
私がそう漏らせばダルムさんが言う。
「だろうな。こんなに美味しい状況ですごすご下がる道理はねえからな」
私は答える。
「排除しない限りこの戦いは終結しません。まずは参集してくれる人々を交えて全軍の再編成です」
その言葉と同時に振り返れば、そこには凄まじい勢いで駆けてくる正規軍人と職業傭兵との集団の姿があった。彼らはトルネデアスの侵略軍が迫るよりも遥かに早く私たちのところへと駆けつけてきた。
私たちはそれを頼もしげに待ちわびていたのだ。
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