そして、皆が待っている場へと戻ると状況を話し合う。私は私見を述べた。
「おそらく強行調査部隊でしょう。大規模軍勢を送るための進軍ルートを策定するためと思われます」
巨漢のカークさんが言う。
「侵略前の地ならしってところか」
さらにダルムさんが顎を手でなでながら言う。
「おそらくこの1部隊ってこたぁねえだろな。最低でも10部隊以上はいろいろな地点に放っているはずだ」
そこにバンダナが目立つプロアさんが問うた。
「じゃぁ、アイツらを制圧しても無駄足か?」
彼の発言の意図がすぐに分かった。彼は対案としての参考意見を述べたのだ。思ったよりも視野の広い人物のようだ。
私はそれに対する答えを出した。
「いいえ、無駄ではありません」
私にはある思いがあった。たとえ敵の偵察部隊だったとしても、行軍ルートの先行調査部隊だったとしても、見過ごせない理由があるのだ。
「彼らが調査結果を持ち帰れば、次の大規模軍事行動において重要な後押しになります。そうなれば、たとえ些細な違いだったとしても、それだけ戦争に巻き込まれ苦しむフェンデリオル市民が増えることになります」
私は言う。力を込めて。
「たとえ、小さな成果でも、一滴のしずくに等しくても、私たちの国を守るためには全力を尽くすべきです」
そして私は結論を下した。
「彼らの調査結果持ち帰りを阻止します。そして、今後のトルネデアス軍事行動の拡大を抑止しします」
つまりは〝殲滅〟だ。
「了解」
「了解しました」
「了解です」
「心得ました」
それぞれに声が返ってくる。同意しない者はいなかった。
「状況として敵はまだこちらに気付いていません。しかし接近しての制圧の前に、遠距離攻撃を主体として討ち取りましょう」
私の発した作戦方針を皆が聞き入ってくれている。私は皆に命じた。
「隊長として指示します。ダルカーク2級とガルゴアズ2級を主体に三手に分かれて挟撃します。それぞれ所持する精術武具で敵を足止め、もしくは数を減らしてください」
精術武具――私達フェンデリオルにのみ存在する独自の精霊科学武器だ。風火水地の4精霊を軸として様々な武具に特殊効果を発揮できるように仕組んである。基本原理は数百年前に生まれ、普及したのは250年前のことだ。
今の部隊では、私が知る限りではカークさんとゴアズさん、そして私自身が所有している。
「ここから見て、右手側にガルゴアズ2級とギダルム準1級、左手側にダルカーク2級とランパック3級を配置します。さらにバルバロン2級は敵の隊長格を狙撃してください。ルプロア3級はバロンさんと私の間の伝令をお願いします。そののちに全員で一気に畳み掛けて掃討します」
そこにプロアが問いかけてくる。
「攻撃タイミングはどうする?」
二手以上に分かれるのなら攻撃の同調を図るのは基本中の基本だ。だが策はある。私は右腰に下げていたステッキハンマー状の武器の戦杖を見せて言った。
「私の所持武器は地精系の精術武具です。これで〝地響き〟を軽く鳴らします。それを合図にしてください」
皆が無言でうなずく。作戦は決まった。あとは行動あるのみだ。私の凛とした声が響いた。
「行動開始」
そして足音を潜めたまま皆が散っていった。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!