――ゴオッ!――
カークの戦棍が勢いよく打ち出された。それも常軌を逸したような凄まじいい勢いで。
――ゴガアン!――
打ち込まれた戦棍の衝撃はもはや棒状武器のそれではない。大型戦鎚の強力な一撃に匹敵する。その衝撃にカルドは思わずよろめいた。
「おらあっ!!」
気合一閃、カークは握りを調節しながら戦棍の左の端をさらに打ち込んだ。なおも放たれたのは重い衝撃だった。
――ゴオオン!――
否、カークが自らの腕力で打ち込むと言うより、何かの力の後押しをうけて〝発射〟されていると言ったほうが良いだろう。
「くっ、くそっ!」
カルドが焦りを口にする。だがそれに同情している暇はない。
「おおおっ!」
腹の底からの気合一閃、そこからカークの猛攻が始まった。
戦棍の両端を生かしての3連撃、それによりカルドの猛攻は止まる。カークは左半身を前に戦棍を左手側を前にすると、槍の突きの要領で連突きを始める。
――ゴッ! ゴッ! ゴッ!――
それを刀身の横側を相手に見せる状態でカルドは大型牙剣で受け止めたが受け止めきれるものではなかった。それはまるで戦棍と言うよりも砲弾と言うべき代物、
「くっ!」
カルドが苦悶の声を上げる。そしてそれは彼の防御力限界を超えていた。
「おおっ?!」
カルドが驚きの声を上げると同時にカークは最大級の一撃を見舞った。
「精術駆動 磁雷砲!」
――バババッ! ブオンッ!――
両腕の雷神の聖拳から最大出力の電磁気を放射する。と、同時にカークが手にしていた鋼鉄の戦棍は砲弾のごとく撃ち出された。
――ズドオオオン!――
それはまさに『巨砲』で敵を撃つがごとく、カルドが手にしていた巨人の大型牙剣ごと弾き飛ばしてカルドの肉体を吹き飛ばした。そして、勝負は決まった。
地面の上に仰向けにカルドの体が横たわり、彼の両手から離れた大型牙剣は地面の上へと落ちていく。
――ガランッ――
重い音が響いて勝負の決着を知らせる。カークは敗北したカルドを眺めながら自らの戦棍を拾い上げた。
「勝負あったな」
戦棍を右手と右肩で担ぎながらカークはカルドに告げた。
「あぁ、そのようだ」
カークの戦棍で受けたダメージが相当に大きかったのだろう。口元から血がにじみ出ている。カークはと言う。
「立てるか?」
「勘弁してくれ」
「そうか」
だがカルドは問うてくる。
「聞かせろ。なぜ最期の技が俺に通った?」
当然の疑問だった。精術は尽く弾くはずなのだ。だがカークは言う。
「言ったろ? 知ってるって。精術殺しの武具のことは知ってる。だから対策を考えた。精術で攻撃するのではなく、別な武器を精術で後押しする――そう言う考えで自分の精術を工夫したんだ」
カークはなおも告げた。
「精術についていろんな人間に話を聞かせてもらって、その中で雷精について詳しい学者に教えてもらったんだ。雷撃と鋼鉄素材とを組み合わせることで〝磁力〟を生み出せる。その磁力を駆使することで鉄製武具の動きを加速させることができる――ってな。あとは実際に物になるまで試行錯誤と失敗の繰り返しだ」
「それがあの技か」
「あぁ、実戦で使うのは2度めだなな」
「見事だ」
カルドがカークへと返したのは賞賛の言葉だった。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!