そしてカークは言う。
「1つ聞く。お前ほどの男がなぜ〝あんな奴〟に加担している?」
あんな奴とはデルカッツの事だ。カルドは言う。
「これでも恩があったんだ」
「恩?」
「あぁ」
そして、カルドは過去を掘り起こしながら語る。
「あんた、噂流されて軍を辞めただろ?」
「あぁ、親友殺しの根も葉もないゴシップだ」
「同じだ」
「なに?」
「俺は〝捕虜殺し〟の濡れ衣を着せられた」
「捕虜――トルネデアス兵をか?」
「そうらしい。俺が管理を任されていた日に捕虜が不審死した。当然責任は俺のところに来る。管理不行き届きで処分されたが、風聞がいつのまにか俺が殺した話になっていた。あとは――」
「言わんとも判るよ」
そしてカークは推測する。
「そして行き場をなくしたお前を助けてくれたのがデルカッツってわけか」
「あぁ」
恩義に報いる本心を明かすカルドだったが、カークはすまなそうにある事実を語り始める。
「そのうわさ話を流した張本人の名前を知っているか?」
「知らん」
唐突な問いかけにカルドは戸惑っていた。カークは言う。
「仕掛け人の名はモルカッツと言う。正規軍中央本部の査察審議部に居座るクズ。気になるやつがいると濡れ衣や風聞で陥れて恩人のふりをして手助けする。そして自分の駒として飼いならすんだ。俺も仕掛けられた。軍を辞めざるを得なかったもう一つの理由は、そいつから完全に縁を切る必要があったからだ。ちなみに――、モルカッツはデルカッツの〝甥〟だ。やつならデルカッツの意のままに動くだろうぜ」
その驚きの事実に沈黙していたが、カルドは諦めたかのように天を仰いだ。
「やはり、そうだったか――」
「知っていたのか?」
「いや、真実は知らん。だが、うすうす感づいていた。できすぎた話だとな」
その言葉を残してカルドは自らの鎧の内側を探る。そして赤茶けた紙を取り出す。それをカークに差し出しながら告げる。
「持っていけ。デルカッツのやつとつながりのある人物リストだ。衛兵長として見聞きした物を記してある」
つまりはそれをつかってデルカッツたちを追い詰めろと言うのだ。それをしっかりと受け取りながらカークは言う。
「ありがたく頂戴する」
その言葉にカルドは笑みを浮かべた。
「頼んだぜ」
そして、カークが人物リストの紙を受け取るのを見届けるように、その手は地面へと落ちる。
「先に行ってる――」
そう言葉を残して眠るように息を引き取る。カークはその姿にもしかしたら自分もカルドと同じ立場に陥っていたかも知れないと思わずにはいられなかった。
そのカークにパックが問いかける。
「終わりましたか」
「あぁ、嫌な戦いだ」
「えぇ、後味が悪すぎます」
「だったら」
カークは戦棍を握り直した。
「しっかりけじめつけさせようぜ。この城の極悪領主によ」
「無論です」
そう語り合う二人の元へと、戦いを終えたドルスとバロンがやってくる。
4人合流すると隊長であるルストのもとへと向かったのである。
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