そして――
「来たぜ」
落ち着いた声でそう問いかけてくるのは象の反対側で佇んでいたダルムさんだ。
「えぇ、ここからも見えます」
私がそう返答すれば励ますような声が帰ってきた。
「心配すんな。最高の仲間が揃ってるんだからよ」
「えぇ、分かっています」
「そうか――、なら大丈夫だな」
そう答えながら彼は地面に向けて逆さに立てていた戦鎚を持ち上げ肩にかけた。
「中央の重装傭兵は俺が統率する。采配、よろしく頼むぞ」
そういい残しながら彼もまた持ち場へと歩いて行く。残るは最終確認――
「指揮官より各部隊へ打伝、最終確認報告」
「了解――指揮所より各部隊へ、最終確認報告願います」
通信師の彼女がそう発令すれば、即座に返ってくる。
「左翼前衛、了解!」
左翼前衛はカークさんが率いている。人の五体に例えるなら左腕だ。彼なら疾風迅雷の働きを期待できるだろう。
「右翼前衛、確認了解しました」
右翼前衛はゴアズさん、彼の攻撃は射程も範囲も広い。それを前提とした運用が可能だろう。
「左翼後衛、報告了解です」
左翼後衛はバロンさんが統率する弓兵部隊だ。重要な場の切り札となる。
「右翼後衛、報告了解しました」
そして、右翼後衛はドルスさんがまとめる高機動部隊だ。その遊撃性が戦況での意外な一撃となるはずだ。
「中央右陣左陣、報告確認――指揮官、全部隊準備完了です」
「ご苦労、無差別発信念話で待機」
「了解です」
さぁ、いよいよだ。
否応なしの段階に来たのだ。昂ぶる気持ちを抑えながら私は全軍へと告げた。
「フェンデリオル国境防衛部隊、全軍伝達『状況開始』!!」
「全軍伝達『状況開始』!」
私に続けて通信師の彼女が告げる。
その言葉をきっかけにして自軍の全てが、装備を手に動き出した。
牙剣を、弓を――私達の民族の誇りとともに皆が手に取り構え臨戦態勢を取る。
さぁ、行こう。戦いの場へ!
私は高らかに叫んだ。
「クヴァーロ アゥレオーレ!」
その声に全ての人々が続いた。
「クヴァーロ アゥレオーレ!」
最終決戦がついに始まった――
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