私はオプスキュリテ公国の姫巫女、デゼル・リュヌ・オプスキュリテ。
今をときめく七歳の美少女よ。
今日、聖女の力を目覚めさせる洗礼を受けた時に、前世の記憶が戻ったの。
違う、前世なんてものじゃない。
だって私、死んでない。
それに、ここ、乙女ゲームの世界だもの!
ああ、どんどん思い出した。
これはいわゆる巻き込まれ異世界トリップ、京奈がヒロインとして転生しているはず。
それにしても、破滅エンドを宿命づけられた闇巫女デゼルに巻き込まれで転生するとかヘヴィね。
前世(まだ死んでない)を思い出すよ……。
そう、私は前世でも、
好きな時間に起きて、
好きなことをして遊んで、
好きなだけ惰眠をむさぼる、
無敵のひきこもりだったのよ。
あんまり、闇巫女としての暮らしぶりと変わらない。
この世界はもう滅ぶのねという予感さえも。
こう考えてみると、私って、闇巫女にぴったりだったのね。
悪役令嬢に転生(だから死んでないってば)してしまったのも仕方ない気がしてきた。
私は前世(だから死んでないって、ああもう、どうでもよくなってきた)の世界で、ひきこもりであることを悲観してはいなかった。
その意味では、かなり、珍種のひきこもりだったと思う。
そう――
もしかしたら、京奈を巻き込んだのは私の方なのかもしれない。
私、この世界にトリップする時、神様と約束をしたの。
私に神様を楽しませることができたなら、三つの願いを叶えて欲しいと。
私の願いは途方もないもの、神様の力をもってしても、叶えることはできないかもしれない。
私の強い想念が神様の興味を引いてしまって、異世界トリップを夢見ていた京奈の方が、神様に会ってみたかった私に巻き込まれたのかもしれない。
いいでしょう。
駄目で元々、当たって砕けろ、人事を尽くして天命を待てがデゼル様の座右の銘よ。
神風特攻隊として、神様の挑戦、受けて立ちましょう!
“ すべての人の心から、邪悪なる想念が拭い去られ、二度とは誰も、それに蝕まれることがありませんように ”
大切な願いよ。
この願いが叶わなければ、世界はきっと滅亡する。
富と権力の亡者たちが引き起こす地球温暖化、天災の激甚化と頻発、とてつもないペースで滅ぼされる多くの生物種――
神様に祈る他に、どうやって止められるというの?
この世界で私が取る行動を、神様は楽しんで下さるかしら。
神様には、私の願いを叶える力があるかしら。
さぁ、不思議遊戯の始まりよ。
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