まだ、ドキドキしてる。
デゼル――
誰よりも綺麗で可愛くて、デゼルが初めて、鈴を振るような声で僕を呼んでくれた時には、僕、死んでしまったのかと思ったんだ。
だって、あんまり綺麗で、天使にしか見えなかったから。
ずっと、デゼルは他には見たこともないほど綺麗な子で、身なりもすごくよくて、すぐ傍にいるのに、すごく遠くに感じていたんだ。
なかよくなったのは、怪我をして、野原で薬草を摘んでいた時に、デゼルが闇魔法で癒してくれたのがきっかけだった。
その日に初めて、デゼルが闇巫女様だって知ったんだ。
母さんには、デゼル様と一緒になるなんてできないのよって言われたけど。
だけど――
伝えてみたかったんだ。
おとなになったら、お迎えに上がりたいって。
そうしたら、僕の気持ちは伝わらなかったけど、おとなになるまでなんて待てません、明日も明後日も迎えにきて下さいねって言ってもらえて、すごく、嬉しかった。
そんなデゼルから、この国が滅んでしまうって聞いた時には、すごく、驚いたけど。
デゼルが僕を真っ直ぐに見詰めて、彼女のやわらかな唇が、僕の唇に触れたのには、もっと、驚いた。
すごく優しい、触れるだけのキスだったけど――
手の平の上に、ふわっと闇の魔力が立ち昇る。
“ サイファ様、デゼルの闇主になって下さいませんか。みんなを守るなら、時間がないの ”
デゼルと一緒に、二人だけで逃げることはできないって、答えてしまったから。
守る力もないのに、みんなを見捨てては行けないって、答えてしまったから。
嫌われると思ったのに。
“ ありがとう、サイファ様 ”
嫌われるどころか、デゼルは嬉しそうに笑ってくれて。
なんでなのか、様がついた。
どちらかというと、僕がデゼル様って呼ばないといけないんじゃないかと前から思ってたのに、なんで逆なの。
“ これで少しだけ闇魔法が使えるようになったはずですから、一緒に練習しましょうね。サイファ様、デゼルを残して死なないで ”
そう言われたら、すごく、デゼルが愛しくなって――
つい、デゼルをぎゅっと抱き締めて、僕の方からも、キス、返してしまって。
よかったのかな。
僕には、まだ一度も、デゼルに言えてないことがあるのに。
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