私はユリア。
トランスサタニアン帝国の第二皇子ネプチューン様の侍女で、奇跡の両想い、幸せの絶頂だったところよ。
そんなある夜、夢を見て、すべてを思い出したの。
ここは夢にまでみた『星空のロマンス』の世界!
私は、本当にヒロインとして転生したのね。
あの方は、本物の神様だったんだわ。神様ありがとう。
雪乃はどうしたかしら。
現世で、急にいなくなった私を心配して探してくれてるのかな。
ごめんね、雪乃。
でも私、もう、元の世界には戻りたくない。
この世界で愛しのネプチューン様と幸せになりたいのよ。
ああ、だけど!
まさか、ユリアに転生するなんて!
ユリアは聖女でも何でもない、ただの女の子よ。
ゲームをしていた時には、ウラノスも酷いけど、どうして、ネプチューン様と駆け落ちしなかったの、ユリアの馬鹿って思っていたのよ。
だけど、だけど!
いざ、ユリアになってみたら、シナリオの通りにしないのは怖いわ。
シナリオの通りにすれば、ユリアの死後、ネプチューン様は憎きウラノスを倒して皇帝になり、私は聖女として転生して、必ず、ネプチューン様ともう一度巡り会えるの。
だけど、駆け落ちしたらどうなるの?
最悪、ウラノスの私兵に追われてネプチューン様が殺されてしまったりしたら……!?
ユリアが死んでしまったら、ネプチューン様がどんなに苦しまれるか知っているけど、それでも、生きて欲しいのよ。
ゲームのユリアもそうだったのね。
ネプチューン様に助けを求めたら、ネプチューン様がウラノスに殺されるかもしれないと思ったのね。
ああ、馬鹿だと決めつけて悪かったわ。
どうしよう。
ゲームをクリアするのは、なしよ。
ネプチューン・エンドでは、ネプチューン様は重ねた罪を悔いて死んでしまうんだもの。
納得行かないわ。
ネプチューン様は悪くないわよ。
でも、大丈夫。
私が『聖女の杖』を手に入れなければゲームは進まない。
あの杖がないとネプチューン様はユリアを復活させられないから、いっそ、杖がなくなってしまえばいいのよ。
そうよ、やっぱり、シナリオの通りにしよう。
私たち、幸せになれるわ。
ネプチューン様は悪くない、ネプチューン様に償うべき罪なんてない。
みんな、ウラノスが悪いのよ!
ユリアのままじゃ、ネプチューン様を守ってあげられないもの。
聖女になって、何があっても、私がネプチューン様を守るわ。
雪乃、どうか、私のことは忘れてしまって。
あなただけは、私にも優しかった。
だけど、私は元の世界には戻りたくないのよ――
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