悪役令嬢と十三霊の神々

悲劇の悪役令嬢に転生してしまった少女はうっかり、町人Sに恋をした。
冴條れい
冴條れい

第18話 もう一人の悪役令嬢

公開日時: 2021年10月5日(火) 12:15
文字数:1,714

 ユリシーズ・カーペンターといえば、デゼルと双璧をなす悪役令嬢、もう一人のネプチューンの副官よ。

 『星空のロマンス』の最終決戦はユリシーズ、デゼル、ネプチューンの三連戦。

 はっきり言って、ユリシーズの方がデゼルより悲惨。攻略対象ですらない悪役令嬢で、最後には必ず、ヒロインに倒されるんだけど。


 もしかして、ジャイロってユリシーズのモブリーダー!?


 ユリシーズとの戦闘にはモブリーダーとザコモブの取り巻きがついてくるんだけど、もしも、お姉さん想いのジャイロがユリシーズのモブリーダーだったら残酷すぎる。

 ユリシーズは全体攻撃の魔封じと即死魔法を使ってくる強敵なの。

 ドラクエで言えばザラキ、メガテンでいえばマハムドオン、魔人アリスの「死んでくれる?」攻撃に匹敵する恐ろしい攻撃をしてくるのよ。

 だから、ユリシーズ戦では魔封じのスピードがすべて。

 魔封じを使えるキャラすべてをスピード重視の装備で固めて投入し、いきなり魔法を封じて、魔封じが解ける前に集中攻撃で倒すのが王道。

 だけどそれって、魔法を封じられて何もできないユリシーズを、よってたかってジャイロの目の前で惨殺したあげく、ジャイロにもすぐに後を追わせる展開ってことになるもの。

 そんなの残酷すぎるよ、神様にシナリオの改ざんを要求します。

 私自身のためにも、ユリシーズとジャイロのためにも、何としても、オプスキュリテ公国滅亡のシナリオは阻止しないと。


 ゲイル・カーペンターの方は闇の十二使徒の一人で、他国の人間なら、いくら殺しても英雄だと思ってる系の殺人鬼、見た目はキングコング。

 ゲイルはなんか、まぁ、闇の十二使徒との戦いのチュートリアルに出てくる感じのザコね。

 でも、モブにとっては恐るべき脅威だと思う。

 だって、専用のグラフィックと名前がある存在なのよ!


「……ジャイロ、何か事情があるなら、お姉さんを神殿で本格的にかくまってもいいよ。その代わり、ジャイロに頼みたいことが二つあるの」

「は?」

「ひとつは、スニールのこと。ジャイロとお姉さんの保護を引き受ける代わりに、スニールをこれまで通り、親分として保護してあげてくれないかしら。イジメみたいな下らない真似はやめて欲しいの」

「別にいーけど、デゼル、わかってんのか? スニールって、スニールを庇ってオレに盾突いたサイファを裏切ったやつだぞ?」

「わかってるから、お願いしてるのよ」


 ジャイロとサイファが顔を見合わせた。


「もう一つは、サイファにしか話してない、闇の神からのお告げで知ったことなんだけど……驚かないで聞いて、この国はあと三年で滅亡するの」


 ジャイロが軽く目を見張って、私とサイファを見比べる。

 驚いたというより、信じられないみたい。


「ユリシーズと私は敵国に連れ去られて酷い目に遭わされ、他のみんなは殺されてしまうの。私は当然、公国の滅亡を阻止したい」

「マジなら、そりゃそーだけど」

「私も、急に、ユリシーズの名前が出てきて驚いたの。ちょっと、考えがまとまらないから……また後日、公国の滅亡を阻止する計画にジャイロとユリシーズが協力してくれるかどうか、聞かせて欲しい。それまでに、私の話を信じるかどうか、考えておいて」

「お、おう……」


 キンコーン


 唐突に、システム音のようなものが鳴り響いたのはその時よ。

 聞き覚えのある、『星空のロマンス』のシステム音。

 すぐに、メッセージ画面が開いた。


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 闇巫女デゼルに慈愛と正義の女神ユースティティアからの祝福と承認が与えられました。

 女神の祝福により、すべてのステータスが一段階上昇し、カリスマ【Lv1】が付与されました。

 これ以降、承認を取り消されることがあれば、即時、ゲームオーバーとなります。

==============================


 え、知らない!

 何の話か、全然、わからない。

 こんなの、『星空のロマンス』にはなかったよ!


「デゼル、どうかした?」


 サイファとジャイロには見えても聞こえてもいないみたい。


「えっと、か、神様のお告げが……」


 よく、意味のわからないお告げを受けたからマリベル様に相談してくると二人に断って、私は急いで、神殿に戻ることにしたの。

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