私の一つの願い。
それはいつかこの空を飛びたい。
だからアレス、私の事、忘れないでね?
「ティリア!」
ティリアはもういない。夢にうなされるなんて。
起きた場所は自部屋だ。アレスはベッドの上で仰向けにいた。
掛け布団は見事にしわを寄せあい下に追いやられていた。
「ティリア」
自然と零れる涙。ティリアの夢を見る度に悲しくなる。
だけどもう朝だ。起きないといけなかった。
アレスは渋々な態度で起きる事にした。
起き上がる以上に重たい気持ちに終止符を打つ。
ティリアの夢を見る度に本当に悲しさが倍増してくる。
ティリアは帝都に引っ越す際の道中で魔物に襲われた。
死体すらもなく。既に魔物に連れ去られた後だった。
だけどアレスはそれを頑なに信じようとはしなかった。
なぜなら抵抗したような痕跡がなく血の位置も不自然だった。
まるでだれかが助けに入り逆に魔物を返り討ちにした説も出るくらいに。
だからアレスは信じなかったし一刻も早く旅に出たかった。
真相を追う為に剣術を習い旅路に必要な道具などは揃え終わっていた。
後はアレスの母親を説得し許可を得るだけだった。
旅に出ると言ったらアレスの母親はどう思うだろうか。
でもそんな事を考えてもアレスの心はもう既に決めていた。
仮に許可が下りなくてもアレスは無断で旅に出るつもりだった。
「母さん。ごめん」
もう既に決めつけているようだった。
村の外は危険で魔物の巣窟だ。
命がいくらあっても足りないがアレスはそれ以上にティリアに逢いたかった。
床に足裏を付けアレスは立ち上がった。
全てはここから始まる。
アレスの壮絶な旅も行方不明なティリアの真実も。
ここから始まるは懸命に生き続けようとする少年少女の物語である。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!