~ギメル大陸・ギル王国王都~
「や~ん!可愛い~!!」
「私にも抱かせて~!」
「何これ!凄いもふもふ~♪気持ちいぃ!」
派手めなお姉さん達が何かを抱きながらキャピキャピ話している。
「早く触らせてよぉ♪」
「次は私の番よ!」
「ダメよ…。まだ全然満足出来ていないわぁ。気持ち~…ずっとこうしていたぁ~い♪」
(……俺もぉぉぉぉぉぉ~~~♪♪♪♪)
お姉さん達が抱いていたのは猫。
ただし、正体は転生に失敗した最強エロ魔導士ことジーク・ルアソール。二十一歳。
そんな事は知らないお姉さん達は普通のモフモフな猫だと思っている。
(やっべ~~…いきなり神展開♪なんだこの幸せは~~。もうこのまま一生猫でいいかも~~…ウへへっ……)
ジークは猫人生の絶頂にいた。
だが、それもすぐに終わる。
「…ねぇ。この猫何か顔がニヤけてない??」
「言われてみれば確かに。。」
「しかも凄い鼻の下伸びてない?猫なのに…。」
「うわっ。ホントだ。。何この猫。いやらしい。」
お姉さん達はジーク猫をポイしてそそくさと行ってしまった。
「おいおい!なんだよ急に!散々人のもふもふに顔うずめてたくせによぉ!猫を雑に扱うな!…まぁ俺もお姉さんの豊満な胸に顔うずめたからいっか♪猫の方が警戒心ゼロで近寄れまくるんじゃ…。へっへっへっ。案外猫も悪くねぇかもな。」
この直後ジークは自身の発言を後悔する事となるー。
「ねぇママー!あの猫立って歩いてるし喋ってるよ!」
近くにいた子供がジークを不思議そうに見つめ、手をつないでいるお母さんに言った。
(…やべッ!……創造神のジイさんに言われてたことすっかり忘れてた!)
遡る事少し前ーー。
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~ギル王国へ続く道~
「…もう見えてきたのぉ。」
「あれがギル王国の王都か~。でけ~な~。」
山道を進んでいたジーク。山頂付近に辿り着き、下を見渡せば壮大な広さと街並み、多くの人々が目に映り込んだー。
「うっはー!!王都初めて来たー!!綺麗なお姉さんいっぱいいそー!!」
「お前さんみたいな女好きが何故あんな辺鄙な所に住んでおったんじゃ?王都の方が色々便利じゃろ?」
「勿論そんな事は分かってるさ。だが俺は、ある時気付いてしまったんだ…。自分がメチャクチャ強い事に!魔導士界隈じゃそこそこ有名だったからな。それだけでも少しはモテてはいたけど、まだまだ力が有り余っていたから挑戦してやろうと思ったんだ!マスタークエストにな!目の前のお姉ちゃんも大事だけど俺はもっと多くのお姉ちゃん達と幸せな人生を歩もうと思ったんだ!!だから誘惑の多い王都は選ばず人っ子一人いないあの場所で、俺はギルドポイントを稼ぎまくった。夢を叶える為にな!」
「聞いたワシがバカじゃった…。それよりもジークよ。この一週間でだいぶ猫が馴染んでいるのはいい事じゃが…猫が二足歩行で歩いて言葉も喋ったら完全にモンスター扱いで王都がパニックになるぞぃ。最近は珍しい“レアモンスター”を狙ったチンピラ魔導士達の悪さがワシの耳によく入ってくる。普通の猫らしくしておくんじゃぞ。」
「いくら猫でもそんな奴らに捕まんねぇよ。ハンデにもならん。まぁ他の人達が騒ぐのは面倒だからな…王都では“普通の猫モード”で歩くよ(笑。」
「とにかくまずは王女達に会って、デューエルの事を話さなければのぉ。」
「話した所で絶対信じないぞそんなの。」
「まぁ一先ずこの先はお前さんに任せるとするかのぉ。」
創造神はフワフワと空へ上がり、どこかへ行こうとしている。
「は?どこ行く気だよ?」
「ワシは神だからのぉ。他にもやる事が山盛りあるんじゃ!悪いが後は宜しく頼むぞぃ!」
「なんて勝手な。。」
「ワシも誓約書やデューエルの事をもう一度調べる!四姉妹のうち“誰か一人”でもいいから説得するんじゃ!」
「俺が美女四人まとめてジイさんの前に連れてってやるよ!」
「くれぐれも余計なトラブル起こすんじゃないぞぃ!」
「はいはい分かったよー。」
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(…早くも騒ぎなんか起きたらあのジイさんに何言われるか分かったもんじゃねぇ…。)
ジークはすぐさま普通の猫モード(猫のマネするだけ)になって子供を誤魔化したー。
「ニャ~ォ。」
「何言ってるの…。普通の猫じゃない。」
「違うもん!さっき歩いて独り言言ってたよ!」
「はいはい。それより早く歩いてね。帰るの遅くなっちゃうわよ。」
「え~!だって本当に歩いてたよあの猫!」
そんな会話をしながら親子はスタスタと行ってしまった。
(危ねぇ~…。綺麗なお姉さんに浮かれて危うく騒ぎになりそうだった…。)
一安心したジークは普通の猫のように歩きながら。四姉妹のいる城へと向かっていく。
(猫の姿なら楽に城内まで入れそうだな。噂の美人姉妹。早く拝みたいなぁ…)
ーーガサガサガサッ!!
「……ん⁉なんだ⁉⁉⁉」
歩いていたジークの視界が突如真っ暗になり、“何か”に持たれているー。
「…やった!兄貴!捕まえやしたぁ!!」
「よし!そのまま絶対逃がすな!」
「はい!!」
二人組の男。男の片方が布袋でジークを捕まえると、そのまま袋の口をグルグルに縛り外へ出られないようにした。
捕まえられたジーク。
「くっそ…!なんだいきなり!…おい!出しやがれ!」
男達は人気のない方へ向かって走っているー。
「兄貴!この猫本当に喋ってますぜ!」
「だから言ったろ!コイツが喋ってるとこをたまたま見たからな(笑!へへ!喋る猫なんてきっと“激レアモンスター”だぜ!コイツ売った金でパァーとやるか!!」
二人の会話を聞いたジークは「…あ。」と再び創造神の言葉を思い出した。
(コイツら…ジイさんが話してたチンピラ魔導士だな…!しかも売るって、モンスターの売買までやってんのかよ。どうしようもねぇ連中だなぁ。)
「さすが兄貴!こりゃ高値で売れそうですね!」
「ヒャーヒャッヒャッ!早く闇ショップで売りさばいて高価な酒でも呑みてぇな♪どんな値がつくか楽しみだ!」
男達は大笑いしながら話している。
(なんて次元の低い奴らだ…。すぐ倒してもいいんだけどなぁ。こういうのは“頭”の奴を潰さないと永遠に湧いて出るからな。コイツらが行くその闇ショップとやらもついでに閉店させるか。動物もモンスターも大事にしろや全く。。)
そんなこんなで闇ショップと呼ばれる場所にジーク達は着いたー。
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