~XXX三六九年・とある場所~
―――――シュンッ…!!
「着いたぞぃ。」
「ここが…。」
「すっごーーい!!なにこれ!飛んでる⁉」
ジーク達は創造神の神魔法“時旅行”でXXX三六九年に着いた。
「恐らくこの辺にいるはずじゃ。」
「この時代の創造神達が…?」
「そうじゃ。」
「なんでなんで⁉私空に浮いてるじゃない♪」
「うるせぇな。」
外の世界を全く知らないレベッカはとても好奇心が旺盛だ。
ジーク達は今、過去へとタイムスリップしている。肉体ではなく魂のみがこの時代に飛んでいるー。
姿形は普段通りだが、魂だけの為他の人達からは見えも触れもしない。いる事さえ分からない。
幽霊みたいな状態である。レベッカが“浮いてる”と言ったのはこの事。
ジーク達は幽体離脱に近い形で空に浮きながら下を見ていたー。
すると、何やら少し離れた所から大きな話し声が聞こえてきた。
「――ガーハッハッハッ!!」
「昼間から飲む酒は格別だなぁ!」
声のする方へジーク達が飛んでいくと、そこでは三人の男達が話していた。
「―あれは!創造神様ではないか。」
創造神が創造神を見つけた。
分かりやすく言うと、現代のジーク達の創造神(ジイさん)が先祖のXXX三六九年の創造神様を見つけたのだ。
「何?って事は一緒にいるあの二人が“闘神エンコ”と“竜王倶利伽羅”か?」
「ああ。恐らくそうじゃろう。“凄まじい魔力”じゃ。」
「へぇ~。あれがデューエルとやらを決めた人達なんだ。」
ジーク達は会話の続きを聞いたー。
「…それにしても暇だなぁ!エンコよ!」
「ああ。全くだ!だがこの平和な世のおかげでこうして昼間から酒が飲める。」
―ゴクッ…ゴクッ…ゴクッ。
「だからと言って飲み過ぎじゃエンコ!クリカラもな!」
この時代の創造神がエンコとクリカラを軽く注意する。
(やっぱり…アイツが“闘神エンコ”。あの飲んだくれが本当に俺の先祖なのかよ…)
エンコとクリカラと名前を呼ばれて確信したジーク達。
見つけたと思うと同時にジークは一人複雑な心境だった。
「そう言う創造神よ!お前も飲んでいるではないか!神が昼間から酒飲んでていいのか(笑!」
「これだけ“平和な世”じゃ。何も起きんわぃ。」
エンコ達は誰が見ても一目瞭然なほど酔っ払い笑っていた。
「数年前からは考えられん世界になったなぁ!」
「全くじゃ!あの“戦乱の世”をお前さん達二人が変えたんじゃ。良くやったのぉ!」
「ガーハッハッ!我ら龍族にかかれば向かうとこ敵なしよ!!」
「なぁ~に言ってんだクリカラ!俺ら人間の方が強かっただろ!なにせ魔力が高いからなこっちは!」
「ぬかせ!我ら竜族はその分肉体が武器よ!人間のひ弱な体じゃ物足りんわ!」
「いやいや!勿論肉体も大事だが魔導士たるもの魔力を洗練させなきゃな!お前らもそれが出来りゃもっと強くなるのによ!」
「人間ごときが生意気な(笑!竜族の魔導士は肉体が一番の武器よ!お前らもその魔力に肉体が仕上がればもっと強くなれるわ!」
「まぁ勝負したら勝つのは俺ら人間だな!」
「何を言うか!我ら竜族に決まっておるわ!」
「いーや!俺ら人間だね。」
「ガハハ!竜族よ!」
「どっちでもええじゃろそんな事。争いが終わったのに何故また争うんじゃ。」
陽気な酒の場の張り合いが徐々にエスカレートしていくー。
「良くねぇな!勝負したら勝つのは俺らだ!」
「いつまでふざけた事を!絶対に我らだ!」
「張り合ってくんじゃねぇよ!!」
「それはお前だろうが!!」
「これこれ…!」
創造神が止めに入る。
「本当にお前ら竜族はプライドばっか高ぇなぁ!」
「お前ら人間より強いから当たり前だろう!」
「デタラメ言ってんじゃねぇ!いつ俺らより強いって決まったんよ!」
「そんなのやらずとも決まっておるわ!」
「なんだとぉ……。よし!!それならこの際ハッキリさせようじゃねぇか!」
「おいおい!何を言うか!」
止めに入った創造神をそっちのけで話を進めるエンコとクリカラ。
「のった!その話受けてやるわ!!」
「当り前だろ!“人間vs竜族”のガチンコ勝負だ!!」
「面白い!我ら竜族の力とくと見せてやろう!!」
「なんじゃこのバカな展開は……。」
創造神は頭を抱えている。
しかし、頭を抱えているのはまだ他にもいた。
「おいおい…まさかこんなアホな成り行きでデューエルまでいかないよな?」
「くだらな過ぎてワシも言葉に困るわぃ…。」
上から見ているジーク達だ。
「決まりだな!古からの決闘戦“デューエル”で決着つけようじゃねぇか!」
「望むところよ!!」
「二言はないな?おい!…創造神!お前がこのデューエルの立会人だ!」
「誰がやるかそんなもの!」
「人間たちにホラ吹かれてもこまるわ!正式な立会人がいないと成り立たんだろ創造神よ!」
「成り立たせなくていいわぃこんなもの!いいから普通に飲んだくれてるんじゃ!」
「いいや!そうはいかねぇ!」
エンコ、クリカラ、創造神のどうでもいい議論は半日続き、見ていたジーク達も途中からウトウトと寝てしまった。
そして――。
遂にこの口論に終止符が打たれた―。
「――よし!これで決まりだ!全員“誓約書にサイン”しろ!」
「ガハハ!楽しみだな“千年後”が!」
「まぁ先の事はその時代の創造神に任せりゃええわぃ。」
創造神が神魔法で誓約書を生成するー。
辺りが神々しい光に照らされた。
……パチッ…。
「――ん?……あ⁉⁉…おい!二人とも起きろ!!」
その光に目を覚ましたジーク。
慌てて創造神とレベッカを起こしたが既に誓約書にサインをしているところであったー。
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【条約と制約】
千年後、人間vs竜族によるデューエルを開戦する。
条約一条:人間、竜族それぞれ代表メンバー六名を選び一対一の決闘を行う。
条約二条:メンバーの一人は双方の世界の王または王妃を選出。ならび各チームのリーダーとする。
条約三条:残りのメンバーで全五仕合。先に三勝したチームの勝ちとする。
条約四条:勝者チームにはどんな願いも一つだけ叶える権利を与える。敗者チームは代表としてリーダーの消滅、及び勝者チームの言いなりとなる。
条約五条:このデューエルの責任者、審判は創造神とし、公平なジャッジを行う事。最終的な取り決めは全て創造神が決める事。
制約:もしデュエールを開戦しない場合、双方消滅となる。
上記の条約を破った場合、破った者の世界を消滅させる。
以上、条約と制約の元に千年後、異世界デューエルを開戦する事とする。
XXX三六九年 「三七零(370)代創造神」「闘神エンコ」「竜王倶利伽羅」
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こうして、現在のジーク達に渡る誓約書がここに爆誕した――。
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