~ジーク達のギルド~
完成から翌日。
ジーク達はせっかく立派なギルドを造ったので、自分達もここに住めばいいと思い住むことにした。
レベッカは生活の準備とお姉さん達への説得であれから一度帰宅し、創造神も自分の業務があるとまた帰って行ったが、自由なジークはそのままギルドで寝た。
―ズズズッ…。
朝から優雅にモーニングコーヒーを飲みながら、ジークはギルドの内装をじっくり眺めていたー。
「我ながら素晴らしい出来だなぁ。」
昨日の己の素晴らしい建設の余韻に、朝から浸っているようである。
今のジークには小鳥の囀りや風になびく木々の音も、まるで自然が奏でるオーケストラの様に感じた――。
だが、そんな空気に浸っているジークを一瞬で現実に引き戻すノイズが入った―。
「――おっはよ~ぉ!!」
―ビクンッ!!
突然のレベッカに驚くジーク。
「朝から大声出すなよ…。雰囲気が台無しだぜ。」
「…朝から自分に酔ってんのアンタ?引くわぁ~…。」
レベッカは何やら大量の荷物を持ってきていた。
「お前それ凄い荷物だな。そんなに何入ってんだよ。」
「レディは色々必要なのよ!ガサツな猫と一緒にしないでくれる?」
「俺は別にガサツじゃない。」
「あ~…それにしても疲れたぁ。」
レベッカは近くの椅子に腰かけた。
「―どうだったんだ?“一人暮らし”の許可はもらえたのか(笑?」
「それね…。昨日帰ったからとりあえず色々支度して、とりあえずエリザベス姉さんに話したんだけど。。」
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~昨夜・お城~
「――エリザベス姉さん!ちょっと話があるんだけど…。」
レベッカはエリザベスを呼び出した。
「あら。どうしたの?」
「実はね…。お父様とお母様がいなくなってバタバタしている時にアレなんだけど…。」
「なぁに?モジモジしちゃって。――まさか!彼氏でも出来たの⁉」
エリザベスは嬉しそうに勘違いをしている。
変な方向に話が逸れないように、レベッカが意を決して言ったー。
「あのね!エリザベス姉さん!彼氏じゃなくて…一人暮らしがしたいの!!」
「一人暮らし…?何急に?やっぱり男(笑?」
「違うってばっ!普通に一人暮らし!ここを出るの!」
レベッカの申し出に悩むエリザベス。
「ん~…。それはちょっと難しい相談ねレベッカ。」
「どうして⁉料理も出来るし、洗濯だって自分で出来る!部屋の片づけだってちゃんとやるわ!」
「そういう問題じゃ…。第一、どこに住む気なの?」
「それは大丈夫!王都の割と近くに更地があったでしょ?そこにもう建てたの!」
「建てたって…⁉いつの間にあなたそんな事を…。まぁ誰も使わないからいいけどね。」
「でしょ?だからそこに住みたいの!お願い!いいでしょ姉さん!」
「場所は近いけど…。大事な妹に何かあったら大変だわ。やっぱり許可出来ないわね。」
「え⁉なんで…⁉大丈夫だから!夜はなるべく出歩かないし、このお城にもちゃん顔出しに来るから!それでもダメ?」
「そうね~…。あ!じゃあ城の門番と使用人をあなたの家で一緒に住まわせるわ!それなら安心だもの!」
「ゲ…。(そうきたかぁ…)」
レベッカは何とか言い訳を考える―。
「―そ、それはそうなんだけど…。わ…私ね!自立したいの!今回みたいなことがあって、人生ってやっぱり何があるか分からないでしょ?」
「それはそうね…。」
「ね!だから今のうちから少しづつ出来る事を増やしていきたいなと思ったの!自分で出来て困る事なんてないでしょ?一人がいいのはその為!使用人さん達がいたら絶対甘えちゃう、自分に厳しくいきたいの!私が自立していく為の第一歩なのこれは!だからお願い姉さん!!一人暮らしさせて!!」
レベッカの必死の訴えに、エリザベスも根負けしたらしい―。
「ハァ~…。あなたがそこまで言い切るなら…いいわ!それも経験ね。一人暮らししてみなさい。」
「ホントに⁉⁉ありがとうエリザベス姉さん!!」
レベッカはエリザベスに抱きついた。
「――ただし!条件があります。」
「…え??」
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~再びジーク達のギルド~
「――じゃあとりあえず許可はもらえたのか。良かったな(笑。」
「ええ。まぁね…。」
レベッカはどこか納得いかない表情だ。
「…で?条件って?」
ジークの問いに、レベッカは溜め息交じりに答えた―。
「…一つ目。一日一回は城に顔を出す事。姉さん達の誰かに会うか、最低でも門番か使用人に生存確認してもらう。」
「なんだそれ(笑。」
「笑わないで!…二つ目!三日に一回は城で寝泊まりする事。以上!」
「ギャハハハッ!!ほぼ家帰ってんじゃん!ウケる~。何その無駄な往復!一人暮らししない方がいいだろそれ!」
ジークはツボに入ったのか、腹を抱えてゲラゲラ笑っていた―。
「しょうがないでしょ!それじゃないとダメって言うんだから!自由に生きてるアンタには分からないわよ!…私はこれでも今までより全然自由に外に出れる時間が増えたから嬉しいの!!悪かったわね!お城でぬくぬく育った箱入り娘の王女様で!!」
怒涛の勢いに圧倒されるジーク。
「…そんなマジになるなよ。悪かった…言い過ぎた。」
真剣なレベッカの表情に、バツが悪くなったジークが謝った。
「いいわ別に!アンタに謝られても調子狂うし、久々にストレス発散になったわ!そんな事よりギルドを楽しまなくっちゃ!」
溜め込んでいたものを全て出し切ったのか、とても清々しい顔をしている。
「おぅ…そうか…。なら何か良かったよ…。うん。そうだな…。ギルドを楽しもう!」
えいえいオーの掛け声で二人は拳を突き出した―。
「―あ!そうだ!」
「どうした?」
「“コレ”届いてるんだった。」
そう言うと、レベッカは徐にカバンから紙を出してジークに渡したー。
「なんだ?」
紙には“ギルド名申請”と書かれていた。
「ギルド設立の手続きの欄にギルド名の項目があって、その時はまだ決まってなかったから後にしたの。」
「あ~そういう事か。そういえば大事なギルド名決めてなかったな。」
「そう!私達の大事なギルドの名前よ!子供に名前を付けるぐらい大事だわ!」
「忘れてたけどな。」
「その紙が昨日お城に届いていたから私徹夜で考えてきたの!じゃ~ん♪」
レベッカは「どうだ!」と言わんばかりに、自信満々な顔でギルド名の候補を書いた紙をジークの前に出した。
「へぇ~どれどれ…。」
紙にはこう書かれている
――――――――――――――――――――――――――――――――
・虹の夢(レインボードリーム)
・自由の翼(ウイングフリーダム)
・希望の空(スカイホープ)
・乙女の心(ガラスハート)
・平和の像(ピースエレファント)
・兎の耳(ラビットイヤー)
・鳩の羽(ピジョンフェザー)
――――――――――――――――――――――――――――――――
一通り目を通したジークの感想は…
「無理。却下。」
この一言でであった―。
「なんでよ!」
「相当イタいなこれ。どんだけ夢見てるんだよ…ださ。」
「ダサくないわよ!カッコいいじゃない響きとか!」
「とにかく却下。こんな名前にしたら“笑い者”として有名なギルドになっちまう。」
「そこまで言わなくてもいいでしょ!だったらアンタ出してみなさいよ!」
「俺?ん~そうだなぁ…。俺だったら―。
・美人な女(ビューティフルウーマン)
・綺麗なお姉さん(プリティーレディ)
・誘惑の女性(セクシーガール)
…とまぁ、ざっとこんな感じかな。」
「キモっ。どこまで変態なのこの猫。」
「お前のよりマシだ。」
「―――どっちもどっちじゃ。」
「―⁉…出たよまた急に。」
ジークの言葉通り創造神が何時ものごとく現れた。
「こんな名前じゃ依頼もこないのぉ(笑。」
「創造神様まで馬鹿にしてぇ!じゃー創造神も出してくれます?」
「お?名前か?そうじゃのぉ…やっぱりギルドには思いを込めんとのぉ…お前さん達から“連想”出来るとしたらこんな感じかのぉ…。
・ノラ猫と王女(キャットプリンセス)
・青春の二十一(アオハルトゥエンティワン)
・超欲望(スーパーディザイア)
・猫女戦線(キャットガールバトルフロント)
―――どうじゃ?カッコいいじゃろ!」
「「あり得ない!!」」
絶望的なネーミングセンスの無さに三人は絶望した―。
「どうすんのよ…。これ今日までに魔道機関に出しに行かないといけないのよ。」
「じゃあとりあえず散歩がてら魔道機関向かおうぜ。行きながら決めよう。」
こうしてジーク達はギルドを出て、王都にある魔道機関へと向かった―。
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