空から落ちてきたのは、ロイドンの手下が乗っていたトラックだった。
新手の襲撃かと一瞬思ったジーク達だったが、予想外のトラック落下に理解に苦しんだ。
「……このトラックってコイツ等のだよな?」
紅正が倒れているロイドンを指差しながら、ジークとシドに確認した。
「理由は知らないけど、とりあえずあっちも片付いたって事だろ。」
「こんなガサツなやり方はあの男しかいないだろう。」
「――だぁ~れがガサツなやり方だって?あ?」
シドの言葉に上空からグリムがツッコんだ。
「おー。無事済んだみたいだな!」
ジーク達が上を見上げると、グリムの風に乗ったレベッカ達と動物達の姿が。
「ただいま!ペルの友達も他の子達も皆無事だったわ!」
「それなら良かった!こっちも片付いたし、一件落着だな。」
グリムが「あ。」と、シドの魔法で出されている黒い大きな手を見て言った。
「シド!ソイツ拘束するんだろ?これもついで。」
そう言うと、風に運ばれたロイドンの手下二人も現れた。
「分かった。」
シドは黒い大きな手でロイドンと手下二人を拘束し、影の中へと引き込んだ。
「これでクエストも無事解決ね。」
「初クエストがまさかこんな事になるなんて…。どっと疲れちゃった~。」
「拘束したコイツ等は魔道機関に引き渡そう。」
「そうだな。」
想定外ではあったが、無事初クエストを済ませたジーク達。
拘束したロイドン達と、保護した動物達も一応無事を確認してもらうべく魔道機関へ連れて行く事にした。
「―ジーク…皆、ありがとうニャ。本当に助かったニャ!」
ペルがみんなにお礼を言った。
「改まって礼なんかいいんだよ!片付いて良かったなペル。これでお前達もまたのんびりと暮らせるだろ!」
「ああ。きっとそうなるニャ。」
「…よし。それじゃあ帰ろうぜ。」
先程までの出来事が嘘だったかのように、皆は和やかなムードでその場を後にしようとした―。
……静かに帰りたかったジーク達の前にお決まりの人が現れた。
「おっす!何だか大変な事になってしまったのぉ!」
突如現れるその老人の名は…
「―創造神!」
そう。今回も事が終わった絶妙のタイミングで現れた。
「ご苦労じゃったのぉ皆!まさかレベルEのクエストがこんな結末を迎えるとは…。まぁでも流石Sランク魔導士!見事解決したわぃ。ホッホッホッホッ。」
呑気に話す創造神をジークは完全無視していた。
「創造神も知らなかったのか?」
紅正は、このクエストは創造神が裏で何か働かせた作戦だと勘ぐっていたようだ。
「なんじゃ?ワシが仕組んだと思っておったのか?ワシも知らなかったぞぃ。こんな展開になるとはのぉ。」
「な~んだ。じゃあ本当に偶然だったのか。」
「どっちでもいいじゃない。動物達も助けられたし、変な奴も倒せたんだから。」
「そうだな。仕組んでなかったなら、尚更あんな物騒な事見つけられて良かった!思い出すだけで不愉快だ。」
「なんでこんな奴とばっかり出会うんだろう私…。」
「そーいう運命の元生まれたんだよ。」
嘆くレベッカにジークが諭すように言った。
何はともあれ、無事クエストを済ませたジーク達はとりあえずギルドへ帰ろうと、ペルとここで別れる。
「じゃあなペル!もう無茶するなよ!」
「ありがとう皆!今度は“元の姿”でまた会おうニャ!」
「―!!…アイツやっぱ俺達が人間だって気付いてたか。」
本物の猫の野生の勘というか鼻が利くというのか…。ペルはジーク達が元は人間だという事を悟っていたようだ。
「またな~!」と手を振りながらジーク達はペルと別れた―。
ジーク達がクエストをしている最中、創造神は忙しい業務をしながらジーク達の様子を時折水晶で見ていたと言う。
レベッカが依頼主のゴードンと会話をしている所から、少し目を離した隙に、いつの間にかロイドンと戦っていたと。
「――お前それほぼ見てねーじゃねぇか!」
「何を言うか!ワシだって忙しいんじゃ色々。ずっとなんか見ておれんわぃ!」
いつものジークと創造神のやり取りが始まったが、直ぐにレベッカが割って入った。
「もう…。そんなのいいから早く魔道機関にソイツ等渡してゆっくり休もうよ。」
「そうね。一仕事終えたしお酒でも飲みたいわ♪」
「悪くないな。」
「俺は何か食い物がいいぜ。腹減った。」
「付き合いますキャンディス姉さん!!」
この和気あいあいとした空気を絶望に変えたのは創造神であった―。
「そうじゃな!今日は記念すべき初クエスト達成パーティじゃ!ワシが食べ物でもお酒でも好きな物を用意しよう!」
「「「「「「おおーー!!」」」」」」
創造神の計らいに一層盛り上がるジーク達。
次の言葉を聞くまでは……
「では帰るぞぃ!我らがギルド、“超 猫”へ!!!」
「「おおーー!!」」
「「「「・・・・・・・。」」」」
この時意見は二対四でしっかり割れた―。
「……ん?」
「我らがギルド?」
「スーパーキャット……。」
「…スーパーキャットが…ギルド…。」
紅正、キャンディス、グリム、シドの四人は一瞬思考回路が停止した。
ブツブツと、各々今の会話を口に出したり頭の中で数十回繰り返したのち、驚愕の事態を理解するのだった―。
「「「「―⁉⁉⁉⁉」」」」
四人がその恐ろしい事態に気が付いた顔を見て、ジークとレベッカも「ヤバい…。」と目を合わせたが時すでに遅し―。
創造神だけが未だ気付かず―!
「―おい!まさかそれ名前じゃないだろうな!」
「え?なんて言った?スーパーキャット…?ありえない…。」
「何かの冗談だよな。」
「これが事実ならとんでもねぇ嫌がらせだぜ!嘘だと言えよお前等!」
四人はジークとレベッカもの方を見る。
創造神の顔はまたもや青ざめていた。
「……しょ、しょうがねぇだろッ!!こっちだって被害者だっつうの!誰が好き好んでこんな名前にするんだよ!!」
「そうよそうよ!!不可抗力だわ!私だってまだ納得出来てないんだから!」
切羽詰まったジークとレベッカもとりあえず逆ギレ。
その後、散々言い合った一同は疲れ果てスーパーキャットへと帰って行った―。
四人が絶望を背負ったまま帰路についたのは言うまでもない。
「「「「…………はぁ~……。」」」」
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