~ギル王国・魔道機関~
「――で?結局決まらないまま着いちゃったけど。」
「さて。どうしたもんか。」
あれから何もいい案が出ず、三人はあれよあれよという間に魔道機関に着いてしまった。
すると創造神が何かを見つけた。
「…ほれ!あれを参考にしたらどうじゃ?」
そこには魔道機関に集まる様々なギルドの情報が映し出されていた―。
良いニュース、悪いニュース。全てが集まるこの場所。当然、ギルド名もあちこちに載っている。
「改めて見るといっぱいあるなぁ。」
「どんなのがあるのかしら…。え~と…強欲の竜(グリードドラゴン)、赤い影(レッドファントム)…。人魚の晩餐(マーメイドディナー)に八つ尾の狼(シュモネウルフ)…。詳しくない私でも知ってるのがあるわね。」
「ホッホッ。参考になりそうなのはあったかのぉ?」
「どれもいまいちだなぁ。俺のと大して変わらないぞ。」
「変わるわよ。一通り見たけどやっぱ、動物とか生き物の名前入れてるのが多いわね!」
「だったらウチは間違いなく“猫”だな(笑。」
ジークは笑いながら自虐を言う。
「ゔっ…確かに。猫ちゃん好きだからいいけど、アンタを見ると嫌になるわ。」
「他はどうだ?動物以外だと色とか数字とかか…。じゃあもう猫に関連するのにしようぜ。キリがない。」
「そうね…。ある程度絞っていかないと決まらないわ。」
「じゃったらもうさっき“皆で出した案”に猫を入れればええじゃろ。」
「さっき出したって…あのクソダサい中から⁉⁉」
「だからもうランダムじゃ!」
創造神は魔法で紙を出した。そこには,さっき出したネーミング案が全て記されている。
そしてその紙がビリビリと破かれていく。
――ビリッ…!ビリッ…!
空中で破かれた紙は「自由」「美人」「青春」…と、単語単語で分かれた紙が十数枚フワフワと浮いている。
「―まさかこれを適当に選んで決めるんじゃ…。」
ジークは恐る恐る聞く―。
「そうじゃ!こんなものはノリと勢いじゃ。」
「十代のギャルみたいな事言うな。」
「えーー!!大事なギルド名そんなので決めるの⁉絶対嫌よ!!」
「ちょっと面白そうだ。試しに一回どんな感じになるかやってみよう(笑。嫌だったらやめればいい。」
「それじゃ結局決まらないじゃない…。」
全て破った紙を裏返しにし、無造作に並べる。
ジークは腕を組みながら紙全てを見渡し、ランダムに二枚
「よし!コレとコレ!」
そこには「超」と「猫」と書かれていた。
「…スーパー…キャット…ダサッ。」
「この中からよく“猫”引き当てたわね。まぁダサすぎて却下だけどね(笑。」
「これ元々ダサいのしかないからどんな組み合わせでも終わってるな。」
「ほら!だから言ってるじゃない!最初から詰んでるのよこんなッ―『ピンポーン!登録完了イタシマシタ。』
「「――ん?」」
ジークとレベッカが話していると、突如無機質な機械音が響き、二人の思考を停止させた―。
「完了したって…俺達じゃないよな…?」
いまいち状況が掴めず、ジークは周りをキョロキョロする。
すると受付にいた女性が声を掛けてきた。
「――“ギルド名登録”でお待ちのレベッカ様!」
「―あ、はい!」
「レベッカ様。こちら“登録完了”の証明書になりますので、大切に保管下さい。これでギルドに必要な登録は全て終わりましたので、問題なくギルドでご依頼を受けて頂けます。お疲れ様でした。」
女性は一枚の紙をレベッカに渡し、その場を去って行った。
「登録完了って……。」
レベッカは貰った紙に視線を落とす―。
するとそこにははっきりと“登録完了のお知らせ”と“超猫”と記されていた。
何度読み返しても当然変わる事の無いその無機質な文字に、レベッカも次の言葉が出てこないー。
「・・・・・・・・・・・・え???」
「どうした?なになに……登録完了……超…猫……⁉―はっ⁉⁉」
二人はまだ状況が理解できない。
「―ちょっと!!どうなってんのこれッ⁉」
「おいおい。なんかの間違いだろ!まだ登録申請してないぞ!」
慌てふためくジークとレベッカ。それを見た創造神がいつになく冷静な態度で言い放った―。
「何をそんなに慌てておる?ちゃんと言ったぞぃ。ノリと勢いじゃって。」
「確かにそう言ったけど、まだ決定じゃないだろ⁉“試しに”一回めくっただけだぞ⁉」
「その一回で決定じゃよあれは。」
「―は⁉⁉」
創造神の言葉を理解できないジーク。
「あれはワシが神魔法で出した神の選択じゃからな。やり直し無しの一発勝負。そういう魔法じゃよ。物事が決まらない時に使う創造神達の中では常識な方法じゃぞ。」
当たり前の出来事かのように物言う創造神に、ジークが怒りながらツッコむ。
「知らねぇよ!!急に創造神の文化出すなよこんな時に!!」
「じゃあ何⁉これ本当に決まっちゃったって事⁉」
「そういう事。」
「終わった……。」
突如現れた絶望という名の落とし穴に落とされたジークとレベッカは、最早自力で上がろうとする気力も無かった。
「こんなギルド名…お姉さんが集まらねぇ…それどころか、世界中の笑い者だ……。」
「大丈夫じゃ。住めば都、名付けりゃ可愛い子供ってのぉ。」
「聞いたことないわよそんな言葉。終わった私のギルド…。よーいドンでコケたわ…。ねぇ…ちなみにギルド名って変更出来ないの?」
「無理だ。ギルド名は正当な理由が無い限り変更出来ない。」
「え~~!そんなぁ~……。」
ジークとレベッカはただただ項垂れる―。
「―さて!名前も無事決まった事じゃ。お祝いパーティしたいところじゃが、先に“行く”かのぉ。」
創造神は気に留めることなくまた気になることを言い出す。
「―?…行くってどこに?」
「一緒にデューエルで闘ってくれる“仲間”の所じゃ。」
「「――⁉⁉⁉」」
ジークとレベッカは驚き目を合わせた。
「いるのか⁉」
「ああ。何人か候補がな。まぁ受けてくれるかはどうかは話が別じゃわぃ。」
「ハァ~しょうがない…。もう名前は登録されちゃったから、切り替えるしかないわ。本命はデューエルだからね。忘れてたわ。」
「くっそ~…。絶対お姉さん集まらないよなぁ…これ。」
「魔導士たるもの大事なのは名前より実力じゃ!世界一のギルドがあんなリゾートホテルなら嫌でも集まるわぃ。」
「うん。そうね!実力でいきましょう実力で!」
「ろくに魔法使えない奴が何言ってんだよ…。」
そんな会話をしながら、三人は新たな仲間探しへと魔道機関を後にした―。
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