戦場の戦乙女

天羽
天羽

第2章 蘇る闇

第11話 急襲

公開日時: 2021年7月27日(火) 00:01
文字数:3,246

「歩いて行くの? まだ撮影時間は大丈夫だけど、間に合うかなー」

「きっと大丈夫よ! どっちの方向に行くの?」


 琉衣は右側の大通りの先を指差した。

 美桜たちがいる久遠の事務所は、様々な業種の企業が立ち並ぶ町として有名な上榁町がある。久遠の事務所から見て左側に駅があり、右側には琉衣の撮影場所である上榁国立公園があると有名である。


 撮影をする上榁国立公園は国中に周知をされている国立公園であり、都心にありながらも癒しスポットとして人気が高い。

 また敷地内には草花溢れる伝統的な建築物が建設され、和の雰囲気が溢れる空間となっている。


「上榁国立公園に行きましょうか。名前くらいなら聞いたことがあるんじゃない?」


 国立公園の名前を聞いて聞いたことがあるわと声を上げる。

 いつかは行ってみたいと考えていた場所で、まさか琉衣と共にいけるとは思っていなかったので1人で行くよりも気持ちが高揚していた。


「じゃ、行きましょうか。美桜ちゃんは初めて行くから絶対良い場所だと思うわよ。私はたまに1人で行くから、もし上榁国立公園に行ったら探してみてね」

「うん! 絶対探す!」


 琉衣と楽しく話しながら大通りを歩いて行くと、目の前に上榁国立公園はこちらと書かれている看板を見つけた。

 上榁国立公園の入り口は丁寧に整えられた草花で溢れており、まさに癒しスポットであると一目で理解できる。また家族連れや小さな子供が楽しそうにしながら入る姿が見えるので、愛されている国立公園だとわかる。


「私も家族で来たかったなー。お父さんやお母さんと約束してたけど、叶わなかったし」

「来る約束をしてたの?」


 太陽に照らされている銀髪を優雅に揺らしながら聞いてくるが、どう返答をしようが悩んでいると素直に話そうと決めた。


「そうよ。両親がまだ生きていた時に上榁国立公園に行こうって話があったの。でも、その約束は果たされなかったけどね」

「それは悲しいわね……でも、今は一緒に私といるわ! 元気出して!」


 琉衣に背中を優しく叩かれながら元気を出してと言われた。

 ありがとうと琉衣の顔を見ながら返答をすると、2人で入り口から上榁国立公園に入っていくことになった。


 数歩進むとどこからか草花の甘い匂いが漂っていることに気が付き、上榁国立公園の中は世界が変わったかのように空気も何か違うと感じた。


「立ち止まってどうしたの? あ、空気が違うことに気が付いたのかな? ここに初めて入った人は似たような反応をするみたいだよ」

「そうなの!? 空気が凄い澄んでるし、甘い匂いもする! とても都心にある国立公園とは思えない!」


 周囲を見渡しながら空気が美味しいと言い続けていると、琉衣が撮影場所はまだ先だよと話しかけてくる。


「あ、わかったわ。すぐに行きましょう」


 先を歩く琉衣の隣に走って行くと、中心に湖と古風な小屋があるのよと教えてくれる。古風な小屋と聞いて少し気になりつつも、周囲の雰囲気を楽しみながら歩き続けた。


「あ、目の前に見える湖の側に撮影スタッフがいるわよ。行きましょう」

「待ってよ! 置いて行かないで!」


 急に小走りになった琉衣を慌てて追いかけると、目の前に撮影スタッフと思える男女混合の10名が湖の側に立っている姿が見えた。

 琉衣がスタッフに駆け寄ってお疲れ様ですと1人ずつに個別に挨拶をしている。


「お疲れ様です! 今日はよろしくお願いします!」

「おーお疲れ。時間ギリギリだったけど大丈夫だったかい?」

「すみません。車で来る予定だったんですけど見つからなくて、後ろにいる友達と一緒に来ました」


 琉衣は後ろにいる美桜を指差すとこっちに来てと手招きをする。


「い、今行く!」


 突然呼ばれたので焦りながら琉衣のもとに走ると、こちらが友達の黒羽美桜さんですと紹介をされた。


「あ、く、黒羽美桜です! よろしくお願いします!」


 美桜が一礼をした相手は、撮影スタッフのリーダーの若い男性であった。

 年は琉衣よりも上に見え、20代半ばに見える。その男性は美桜を見るといいかもしれないと突然言葉を発したので、美桜はどういう意味なのか理解が出来ていなかった。


「いいかもとは……?」


 突然の言葉を理解出来ずに聞き返すと、男性が琉衣ちゃんと一緒に撮影をしないかと提案をしてきた。


(一緒に撮影? それって琉衣ちゃんと一緒に撮影をするってことだよね? ちょ、ちょっと突然過ぎないかな!?)


 突然のことで頭の整理が追い付かずに混乱していた。

 そのことを察したのか、琉衣が普通にいつも通りにしていれば大丈夫だよと背中を擦りながら教えてくれるようだ。


「そ、そうかな? 私で大丈夫かな?」

「大丈夫! 身長もあるし、スタイルも良いから絶対に絵になる! 美桜ちゃんなら大丈夫だよ!」

「そうかな? ありがとう!」


 ありがとうと言うと、男性がスタッフに撮影準備をしようと声をかけ始めていた。

 横にいる琉衣は女性スタッフに呼ばれてスタッフたちのもとに駆けて行くと、化粧を始めますと話しかけられているようだ。


「やっぱり芸能人なんだなぁ……琉衣ちゃんって凄いなぁ……凄い輝いている気がする」


 堂々としながら化粧をしてもらいつつ、撮影内容を聞いている琉衣。

 美桜は英雄活動もしながら、モデルとしても活躍をしているのは凄いと感じていた。


「私は英雄の仕事で活躍をして平和のために活躍しなきゃ」


 琉衣の姿を見てもっと活躍しようと考えていると、女性スタッフの悲鳴が突然聞こえてきた。


「な、なにあれ!? 変な人が突然空から降ってきたわ!」


 湖の側で設営をしていた女性スタッフが悲鳴を上げた声を聞き、美桜は振り向く。

 女性スタッフの視線の先を見ると、そこには顔の左側に黒い鱗のような物体が付いて全身から黒いオーラを放っている男性がいた。


「あの人って……窃盗でついさっき久遠さんが戦ってくれた人!? この短時間で何があったの!?」


 先ほどとは雰囲気が違う男性を見て身構えると、琉衣に撮影スタッフの避難をしてと叫ぶ。


「琉衣さんはすぐにスタッフの避難をしてください! 私はあの男性と戦います!」

「1人じゃダメだよ! すぐに私も参加するから、無理をしないで!」

「ありがとうございます!」


 剣を出現させながら琉衣に感謝の言葉を言う。

 今回は鞘付きではなく剣のみ出現させて戦うことにした。鞘から抜く手間すらも惜しいためである。


 剣を構えると、自身を無表情で見つめてくる男性が不思議だと感じていた。

 なぜこの短時間であのような姿になってしまったのか不思議であったが、フードを被った女性と思われる人が言っていた光や兆しという言葉に関係があるのではないかと考えてしまう。


「今はあの人の対処をしないと! 葵さんに連絡をしたいけど、した瞬間に殺されるかもしれないわ……」


 静かに自身のもとに歩いて来る男性は、右手に黒い剣を出現させると段々と小走りに変わっていた。そして、高く飛び上がると左手から小さな黒い球体を美桜に向けて放ってくる。


「来た! やっぱり私が標的なのね! どうしてそこまで私に固執するの!」


 剣で小さな黒い球体を弾き、そのまま斬りかかる。

 地面に降りた男性は殺すと威圧感のある声で言葉を発すると、美桜の剣を躱して右足で腹部にカウンターで蹴りを入れてきた。腹部に勢いが乗っている重い蹴りを受けて何度か咳をしてしまった美桜は苦しいながらも再度剣に力を入れて構えると、態勢を整えて男性を見据える。。


「げほげほ……重い蹴りね……オーラまで放って一体あなたに何があったのよ」


 どう戦えばいいのか思いつかず、迫って来る男性に正面から立ち向かうしか選択肢がなかった。斬りかかって隙を見つけて攻撃をするため、男性に攻撃を仕掛けていく。


「光弾!」


 美桜は左手に光を集めて光の小さな球体を男性に向けて放つが、光弾は黒い剣に簡単に弾かれてしまい即座に距離を詰めらてしまう。


「ぐぅ! 前よりも強い! どうしてこんな短時間で!」

「知りたいか?」


 低い声色で知りたいかと聞いてくるがどう答えれば正解なのかわからない。

 しかし情報を聞き出すいいチャンスだと思い、知りたいわと返答をすることにした。

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