おかあさん

舞台女優になりたかった　おかあさん

挿し絵画家になりたかった　おかあさん

ちょっとだけお嬢様だった　おかあさん

戦争で何もかも失った　おかあさん

今でも東京に憧れ続けている　おかあさん

おかあさん

初恋の人をずっと想い続けていた　おかあさん

父より愛した人だと

いつか語ってくれた　おかあさん

その人がくれたギターを

今でも捨てられずにいる　おかあさん

おかあさん

あなたの夢は　何ひとつ叶う事がなかったね

おかあさん

それでもあなたは　笑っているのね

背も手も　あなたよりとっくに大きくなったのに

どうしてわたしは　こんなにも小さいんだろう

ねぇ　おかあさん

わたしは知ってるの

あなたの心は今でも

王子様を待ち続けているお姫様のまんま

ねぇ　おかあさん

わたしは生きていて良かったって思えるの

ねぇ　おかあさん

誰もが生を受けた意味をいつか知るのね

いつもいつもいつも

わがままを聴いて下さい

いつもいつもいつまでも

わたしのおかあさんでいて下さい

今生でも来世でも

わたしのおかあさんでいて下さい

ね　おかあさん